Yuki short

□*sakura*
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〜*sakura*〜


Yuki&…



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はじめて出会ったのは、満開の桜の下だった。

キョロキョロと周りを見渡すその姿がいやに印象的で覚えている。

いつもはやり過ごすのに、なんでだろう?

惹かれるように俺は気がついたら声をかけていた…



「…何やってんだ?」




少しびっくりした顔をして見つめてくるそいつ。

大きい目がすごい印象的だった。




「この辺りが初めてで、道がわからなくて…」




握り締めている地図を見ながら、俺にそう言ってきた。




「どこ行きたいんだ?」


「…えっと…あの…この学校なんですけど……」


「……え?」




その時、急に風が通り抜けて…

満開だった桜の花びらが俺たちの間を舞った。




「……きれー…」



舞い散る花びらを見つめてる彼女の方が綺麗だと思ったなんて…


その顔が忘れられないなんて……



今のこいつに言ったらびっくりするんだろうな…













あの桜の出会いから、早1年。




準備室の窓から見える桜は、今年もあの時と同じように咲いていた。




「先生、何見てるの?」




あのときの舞い散る花びらを見ていた笑顔で、俺の方を見つめる彼女。


……そう。


あの時の学校は俺が勤めてる学校。


彼女は俺の生徒で、俺はその担任。





そして…今は…




「…ん?あぁ、桜見てたらな、色々と…な」





出会った時のことを思い出した…と言おうとして見つめ返すと、そっと俺の白衣の袖を掴んでくる。


見つめるしかなかった出会ったばかりの頃と違い、この1年で少しずつ距離が近づき……









男しかいないこの学校でそいつは健気に一人頑張っている。



男の中にそいつが一人ってなると…

いろんなことがあるわけで…


それをいろいろと助けているうちに……





…その…まぁ……なんだ………





ヒナが初めて出会ったものを親と見るように、初めて道を聞いた俺が彼女には親のように思うらしく…


何かあればこの部屋に居座りついていた。


はじめこそ邪険に扱っていたが……





どんだけ邪険に扱っても、喰らいついてくるその根性に気がついたら……






しゃあねぇな…


…リスクぐれぇ覚悟してやるよ……






そんなやり取りをしたホワイトデー…







徐々に近づく距離。




袖を掴んでる手を取り、身体をそのまま俺の胸へと押し当てる。



袖にあった指は背中へと回されて……








「桜、きれーだぞ。見ないのか?」



「……うん。先生見てる方が幸せだもん…」




そう言って、俺の胸から上目遣いに見つめてくる顔は、あのときの顔。






その顔を見るたびに思い出す…

あのときから目が離せなかったんだろうなという俺の想い…





「……あと…やっぱり一緒に花見したくても……まだできないし…」




その言葉にふと呟いていた言葉を思い出す。





『憧れはね…手を繋いで一緒に桜の花道を歩きたいんだけど……』







まだ言わないけれど…


次の桜が咲く頃、


その頃には、きっと2人で花見ができるから。


その頃には、手を繋いで一緒に歩いてみるか?





きっとそういうと、こいつはまたあの笑顔で笑うんだろう。




…あと1年。




こいつのこの調子じゃ…きっと……近いうちにもっと触れることになっちまうだろーけど…







リスク覚悟で手出したんだ。


泣かせねーようにずっと守ってやるよ……



と思いを胸に、胸にいる彼女をきつく抱きしめた……













end


2013.4.4






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