テニスの王子様
□第四話
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「ユミ様。」
「真田か。私の塔にいるなんて珍しいな。何か用事か?」
普段ならサエカの青蛇塔にいるはずの真田弦一郎。
かつて京都と呼ばれた人間の都の山に住んでいた鬼の長『酒呑童子』である。
「最近城内が物騒です。」
「・・・と言うと?」
真剣な面持ちで話す真田に、只事ではないことを察す。
「ヴァンパイアが侵入しているようです。それも毎晩のように。」
「ヴァンパイア・・・?」
「今のところ、確認できているのはい一体ですが・・・。」
「そうか。目的はわかっているのか?」
「ハッキリとはまだ・・・しかし血を求めていることは予想できます。わざわざ城に侵入するということは・・・」
「狙いは、王や私たち王女の血・・・か。」
表情を変えずに結論を述べるユミ。
「いくらヴァンパイアと言えど、怪物の血を貪るのはもう限界、ということか。私も一応妖怪ではあるが。」
「ここしばらくは魔女の血を吸って生きていると聞きましたが。」
「飽きたのだろう。人間に近い形をしていても彼女たちも妖怪だ。」
考えをめぐらすのは柳や観月、ナツコにも引けをとらないユミ。
次々と現実味のある憶測を立てていく。
「しかし今やヴァンパイアは滅びる寸前です。人間がいませんから。飽きたなどと言っている場合では・・・」
「それで私たちに人間を垣間見たのだろう。他の姫たちには?」
「まだです。しかし、柳やジャッカルには伝えておきました。」
「いい判断だ。リリやサエカは騒ぎそうだからな。その情報は家来で留めておけ。」
「仰せのままに。赤也にはどうされるおつもりで?」
「知らせるな。」
「なっっ!!?」
現在赤也は執務室に籠って観月の指導の下、仕事をこなしている。
真田が見た限りでは、今日一日で終わらせる数ではなく、三日はかかりそうな量だった。
つまり、家臣を一人しかつけていないユミは今夜、一人で黒蝶塔にいることになるのだ。
「ご自分に危機が迫っているとわかっているのですか!!?」
「わかっている。私を考えなしのサエカと一緒にするな。」
「ですが・・・!!」