小話
□真田×桜乃
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「はぁ?見合い?」
急に祖父の部屋に呼び出され、何の話かと思えば、中学生の真田に見合いの話という突拍子のないものだった。
「そうじゃ。」
厳格という字が生きているようなそんな祖父の断言の一言が飛ぶ。
「お祖父さん・・俺の年齢を分かって言ってますか?」
尊敬する祖父とはいえさすがにあきれる真田。
「15歳」
まったくもって、まともな答えで返す真田祖父。
「記憶力も落ちていないようで安心いたしました」
真田は心の底からほっとしたようにいった。
「弦一郎なにか?わしがよもやボケたとでも・・。」
沈黙が流れる真田祖父の部屋。
「今のお話の中ではそう疑われてもおかしくないのでは?」
その言葉に、立ちあがる真田祖父。
「弦一郎。」
「なんでしょうか?」
「表に出ろ・・・。」
その後、祖父にギッタギタにされて、這いつくばっていたところへ、見合いの話を無理やり承諾させられた、真田弦一郎・・15歳の秋だった・・・。
「おおおおお・・・・・・・・・・・・見合い!!」
桜乃は取りあず渾身の力を出して叫んだ。
「声がおおきよ。」
その話を持ってきた祖母・スミレは何とも落ち着いたものだった。
「まぁ、桜乃ちゃんにお見合いだなんてvお母さん、早めにお祖母ちゃんになっちゃうわ〜」
それに輪をかけて落ち着いていたのは桜乃の母だった。
「私は曾お婆さんだね〜。」
スミレの中ではひ孫を見ることができるという思いからか、上機嫌で嫁に続く。
「母さん、桜乃はまだ、中学生だ!見合いなんて早い!!断ってください。」
娘をまだ嫁になんて出すもんかと言い張る父。
桜乃は唯一自分と同じ意見の父を見て、“お父さん頑張って”と応援した。
「ほう、お前は、警視庁の剣道指南役を務める男に挑めるというのかい?」
それを否定したのがスミレだった、
スミレの中では桜乃に着せていく着物を選ぶことでもう、頭がいっぱいなのだろう。
「剣道・・・指南・・どこぞの達人ですか!!というかそれを笠に来て脅して、孫同志の見合いをさせようなどという家系は信用なりません!」
達人級の経歴きいて、尻込みする父であったが、それでも“桜乃はやらん”と息を荒くする。
「まぁ、そう熱くなりなさんな。たまたまだよ。桜乃ちゃんだっていやだったら、断っていいよ。社会経験だと思って。
近年まれに見るこんなに奥手な大和撫子はきっと必要になるだろうからね。」
ぐりぐりと桜乃の頭をなでるスミレ。
「おいしいご飯を食べに行くと思えばいいさ。」
当の本人の桜乃の言葉は「お見合い」という言葉を叫んだだけで、他は何のかんのとあの祖母のペースに巻き込まれ結局、見合いをするという流れに持っていかれてしまった。
「お父さん、しっかりしてよおぉぉ。」
桜乃、13歳秋の夜の雄叫びだった。