切原×桜乃 長編

□「依頼」
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そして、その、約束を実行するため、切原は立海高等部テニス部にいる。

いつもなら、難なく入っていく、この扉が“今日はいやに重いぜ”などとおもってみたりもした。

「チーーース」

いつもどおり入っていく。

出来れば、柳と柳生だけであってほしかったが今日に限って全員集合。

クラス違うのになんだこいつら・・

切原の正直な感想である。

「相変わらず元気だね、赤也は」

「本当に、これが、去年の立海中等部テニス部優勝の立役者とは思えんぜよ。」

ケタケタとからかわれるがいつものこと。

しかし、今日はテニス以外の目的があってきたのだ。こんなことで挫けるわけにはいかない!ちょうど、用のある人物は二人ともいる。

“あとから、何聞かれようともここは、腹をくくるしかない!!逝け(GO)、俺!!”

切原は武士の決意を決めて、柳と柳生の前に立った。

「柳先輩、柳生先輩。勉強教えてもらえないっすか?」



“がた!!”



切原の発言の後、部内はその音とおもに、多方面でいろいろなことが起こっていた。

ジャッカルはロッカーに頭をぶつけ、丸井はガムを飲み込んでしまい、真田は硬直して動かない、幸村は何かを感じたのか空を眺め、仁王は口をパクパクとし何かとまどっている、柳生は本を落とし、柳は鉛筆を落としたことにも気が付いていない。

“なんっすか?俺が勉強って発したら、なんでこうなるんっすか?”

どこか、やりきれない、切原

「赤也、熱でもあるんじゃないか?」

「そうだい。無理すんな、赤也」

「赤也が勉強なんて・・・ふふ、何か降臨するかもね・・・・」

“何が〜”とは恐ろしくて聞けないメンバー。

しかし、切原もいい加減、この対応に腹が立ってきた。

「なんっすか。先輩たちのその態度はぁぁぁ!!!」

「いや、お前が勉強なんて言うかついのう・・・赤点王・赤也」

「う・・最近は減ったすよ。」

「で、どうして、そんなことを言う。赤也」

柳が冷静さを取り戻しなんとか、質問する。

「勉強を教えてほしいのは俺じゃないっすよ。立海に入学しようとしてる子です。」

「立海に?」

「でも、違う学校だから、先生たちにも聞きづらくて、うまくいかないっていってたんで、柳先輩たちなら、教えてやれるかもと思ったんっすけど・・。」

「何故お前がやらない」

「俺ができると思うんすか、真田副部長。」

「無理だな。そう思うなら、ちゃんと学んどけ!!」

副部長のありがたい、一括が入ったところで、柳生から当然の質問が入る。

「で、それは誰なんですか?」

“あ〜と”少し、何故か照れ気味の後輩を気味悪がる丸井。

「たぶん、先輩たちも知ってると思うっすけど・・・」

「誰だろう?」

幸村筆頭に、皆が考え込む。

“しまった、余計いずらくなっちまった。”

回答が出ないのか幸村が答えをせかす。

「で?誰?」

汗だくで動揺している赤也に、幸村がとどめをさす

「早く言え。」



「青学の、竜崎桜乃です」



「はぁ?」

予想外の名前に妙な声を上げる丸井とジャッカル。

「なんで、彼女が立海受けるんだい?」

「青学には彼女の祖母、竜崎スミレがいるぞ」

柳のデーターにはそれがしっかりと入っていた。

「ならば、他校を受験する必要などないのでは?」

柳生のもっともらしい回答に頷く。



「理由は、いま柳先輩がいったすよ。」



赤也の真剣な目が先輩陣をつらぬいた。

「いじめか・・・」

仁王は、ずばっといった。

「教諭が身内にいるというのは、よくも悪くもあるからのう。あのおとなしそうなお譲ちゃんじゃ、かっこうの餌食じゃろうて。」

赤也は頷いて続けた。

「成績良ければ、ばぁちゃんがいるから、男子テニス部が声かければ、ばぁちゃんがいるからそんなことばっかりだったみたいっすよ」

あまりに理不尽なそれに、皆、眼を丸くする。

「それ、本人から聞いたの?」

幸村の問いに首を振る赤也。

「いえ、親友っていう、小坂田ってやつです。この間の大会会場で、桜乃のこと聞いたらはなしてくれました。青学ではかなりひどい目にあってて、テストもわざと間違えてるって、自分じゃもう助けられないって、そいつも、悩んでたっす。」

聞けば聞くほど腹立たしい内容に、真田は今にも怒鳴りそうだった。

「しかし、陰湿な、青学の教師は何もせんのか」

幸村が軽く手をあげて真田を静止した。

「だめだよ、弦一郎、こういう時に教師が出てきては逆効果だ。被害を増大させる。大きな学校という施設の中、教師に隠れてできることはいくらでもあるよ。」

「しかし、それでなぜ志望校が立海なのでしょう。」

「それは、両親を説得させるためってのもあるっていったっす。」

「なるほど、わざわざ、青学より低いレベルの学校には行かせはしないからな。」

ある程度納得の行ったところと、可愛い後輩の頼みに先輩は動いた。

「そういうことなら、協力しよう。」

「知ってしまった以上、見過ごすこともできませんね。」

柳が次の指示を伝える。

「赤也、近いうちにでも、彼女の今までの解いた問題集とその回答を書いたノートを持ってくるように伝えろ、そこから俺と柳生で改善点をだそう。」

「わっかりました!」

切原はよかったと本心から思い“よっしゃ!”と喜んだ。

「でも、なんで、赤也は竜崎さんと知り合いなの?」

当然の幸村からの突っ込みに皆の眼が集中する。

「一年前のどっかの、大会会場で越前リョーマにいじめられてるところを助けたからっすよ。」



「越前がいじめ?」

「いじめっつーより、からかって面白がってる感じでしたね。桜乃自体、からかわれて嫌だっていったすから。」

「それは、ただのスキンシップではないのか?」

「でも、桜乃泣きそうだったんすよ。」

切原は絶対違うとと否定する。

「あいつ、めっちゃくちゃひどいこと言うんっすよ。運動向いてないから髪切れとか、テニス下手なんだから、辞めればとか、関係ないじゃないっすか、テニスをする上でそんなこと。だから、腹が立って・・。」

切原は今までのことを話していて途中で口が止まってしまった。

あまりの、先輩陣の恐ろしさにである。

“怒ってる、めっちゃ怒ってる。”

切原の熱弁に驚くものがあったが、同じテニスプレーヤーとして、その悪行は許せんと、一致団結する先輩陣

「卑劣な」

「許せんぜよ」

「男の風上におけねーな」

「今度の試合は二度と起き上がれなくしてあげなくちゃね。」



「赤也!!」



「はい!!」



「しばらくすると、全国模試だな、この模試までには竜崎のレベルを、立海に入れるまで引き上げるぞ!すぐに、彼女に連絡を取れ。そしてノートの回収だ!!」

「はい。」

赤也は自分以上に燃えている先輩たちに若干引いていたが、それでも桜乃を応援してくれているのは嬉しかった。

テンションが上がった切原に幸村が最後の疑問をぶつける。

「赤也は竜崎さんのこと名前で呼ぶんだ」

「え?本人がそう呼んでくれっていったんで。」
正直に答える赤也に幸村はかわいいなとおもいつつも黒い笑顔で答えた

「へぇ?そう・・・。」

“なんなんすかぁぁぁ”と叫ぶ赤也。

まだ、これが恋ということに気が付いてない少年は、無駄に障害(後に桜乃の兄貴達)を増やしつつあるのであった。

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