切原×桜乃 長編

□「祝い」
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そして、数か月の月日が流れ、切原は高校一年生となった。

テニス部に入部すれば、三年前と同じ光景に、懐かしさと鉄拳制裁といういやな思い出がデジャブした。



「高校入学おめでとうございます。赤也さん」

“おう”と答える切原

久しぶりに、桜乃と会う切原は高校生となり、中学三年の桜乃から見るととても大人になってしまったように感じた。

「お前も来年はうちの制服着るんだろ?」

からかうように切原は桜乃の頭をなでまわした。

「そうなれればいいんですが・・・。」

桜乃の表情が重いものになる。

「両親にもまだ、話してませんし、今度の全国模試次第ですね。小学校から、私立に行かせてもらってますから・・。高校は違うとこがいいなんて我儘ですよね。

だから、特待が受かるくらいの成績がほしいですけど・・・。」

“ひゃーーーーー”切原はまさか桜乃がそこまで考えているとは知らず普通に入学してくるとばかり思っていた分ショックは大きい。

思えば青学も私立だ、入学金、学費など考えれば公立に比ではない。それを知らない年ではない桜乃。

「両親を説得する決定的なものがほしいんです。」

自分自身のためにも、“いじめられたから、あの学校はいや”なんて、ことは言いたくないのだ。

それは立海に行ったからと言っていじめにあわない保証なんてどこにもない。

だったら、身内のいる青学方がと両親は思うだろう。それすらも超える動機が必要なのだ。

「でも・・・。」

「?」

「自分で理解したり、調べたりするのは苦ではないのですが、どうしても学んでいるところといないところがあったり、理解できないとこが多くて、調べることにほとんど費やしてしまって・・・。」

「それって、順調じゃないってこと?」

「勉強において、調べることは有意義なのですが・・」

「・・・」

「だめですね。どうも最近、焦ってしまって・・・。」

“愚痴を言ってしまってすみません”桜乃は困ったように笑ったが、いつものように明るい表情になるとと、右腕を曲げて力こぶを作るような動作をする。

「でも、大丈夫です。私、今、がんばれますから!!」

桜乃はいつも一人でがんばる。切原は桜乃が頑張っていないことなどないように思えた。なら、その頑張りを支えてあげられるのも気がついたものの特権ではないか。

「桜乃!」

「はい?」

がしっと桜乃の両肩を掴んで切原は言い切った。

「最高の家庭教師用意してやるから、大丈夫だ。」

「ええええええええええええええええ」

あまりの、切原の提案に、桜乃は天変地異の前触れかと思うほどの衝撃を受けた。“そんな、わるいです。”と慌てふためき、止めるよう切原に懇願するが、いつもなら折れてくれる切原が頑に突っぱねた。

「だめだ。また、そういってお前は無理する。それでこの間、体調崩したばかりだろ。

試験当日、高熱で受ける気か?」

「でも・・」

「別に、金のかかる問題じゃない。」

「でも。」

「でもじゃない、たまには甘えろよ。」

“甘え”という言葉に、何故か桜乃は顔を赤くして俯いてしまった。

切原も不思議には思ったが、桜乃が“はい”というまで、“頼れ”とか“俺が教えられればいいけど無理だから”とかさんざん説得され最後に

「一緒の学校に通いたいじゃん」

といわれ、それが、決定打となり桜乃は

「では、お願いします。」

とようやく頷いた

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