切原×桜乃 長編

□「漸進」
1ページ/1ページ

「竜崎さん・・越前君に近付くのやめてくれない?」

桜乃は“また来た。”そう思った。いわれのない因縁をつけられ、追いつめられるのもシバシバ・・。桜乃はこのころから高校は他校を受験しようと考えていた。

「わたし、近づいていません」

「うそつき」

桜乃の発言にリーダー格の女生徒が桜乃の頬をはり倒した。

でも、桜乃は泣かなかった。

むしろ、それにより吹っ切れた。

いわゆる、切れたのだ

「いい加減にしてください!!私、リョーマ君に近付いてもいなければ、迫ってもいません。勘違いしないでください。

私は!!!!!!!!!!!!

他に、好きな人がいます、私が好きな人はリョ・・・・・・・・・越前君じゃありません。

私だって、苦しめられてるんです。テニスを見るふりして馬鹿にされて・・・

越前君だって私のことなんてなんとも思ってません!!

だから、もう、こんなことやめてください!!!!!!!!!!」

桜乃の啖呵はそこにいた女生徒のすべてを飲み込んだ。あの、教室の隅でおどおどしていたおとなしい子が声を荒げて叫び、こちらを睨んできたのだ。

しかも、切原直伝の凄みを利かせて。

“いいか、桜乃、相手に舐められな。でももし舐められてるなら好都合。利用しちまえ。おまえは弱いと思われてる。なら、少し強気になれば、押せる。”

切原からのその言葉が桜乃を動かした。

「え・・・と・・・やだ。うちらの勘違い?」

「そうです!!」

「ならいいの。わるかったわね」

ごめんなさいの一つも言えない女生徒は小走りに去って行った。

一人、校舎裏に残された桜乃は、その場にぺたりと座りこんで、縮こまった。

「えへ、すごいことしちゃった。」

桜乃はポロポロと涙を流して、今の感情を流そうとした。

「切原さん。私、やれたよ。」



このころから、桜乃が変わったと周囲が言うようになっていた。

髪型も確かにおさげ多いが、前以上にアレンジをしてくるようになった。

桜乃は自分に自信がつき始めていた。

傲慢になるような自信ではなく、一歩前に進める自信。

その内面の変化がさらに桜乃を美しい女性へと近づけていった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ