切原×桜乃 長編
□「漸進」
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「竜崎さん・・越前君に近付くのやめてくれない?」
桜乃は“また来た。”そう思った。いわれのない因縁をつけられ、追いつめられるのもシバシバ・・。桜乃はこのころから高校は他校を受験しようと考えていた。
「わたし、近づいていません」
「うそつき」
桜乃の発言にリーダー格の女生徒が桜乃の頬をはり倒した。
でも、桜乃は泣かなかった。
むしろ、それにより吹っ切れた。
いわゆる、切れたのだ
「いい加減にしてください!!私、リョーマ君に近付いてもいなければ、迫ってもいません。勘違いしないでください。
私は!!!!!!!!!!!!
他に、好きな人がいます、私が好きな人はリョ・・・・・・・・・越前君じゃありません。
私だって、苦しめられてるんです。テニスを見るふりして馬鹿にされて・・・
越前君だって私のことなんてなんとも思ってません!!
だから、もう、こんなことやめてください!!!!!!!!!!」
桜乃の啖呵はそこにいた女生徒のすべてを飲み込んだ。あの、教室の隅でおどおどしていたおとなしい子が声を荒げて叫び、こちらを睨んできたのだ。
しかも、切原直伝の凄みを利かせて。
“いいか、桜乃、相手に舐められな。でももし舐められてるなら好都合。利用しちまえ。おまえは弱いと思われてる。なら、少し強気になれば、押せる。”
切原からのその言葉が桜乃を動かした。
「え・・・と・・・やだ。うちらの勘違い?」
「そうです!!」
「ならいいの。わるかったわね」
ごめんなさいの一つも言えない女生徒は小走りに去って行った。
一人、校舎裏に残された桜乃は、その場にぺたりと座りこんで、縮こまった。
「えへ、すごいことしちゃった。」
桜乃はポロポロと涙を流して、今の感情を流そうとした。
「切原さん。私、やれたよ。」
このころから、桜乃が変わったと周囲が言うようになっていた。
髪型も確かにおさげ多いが、前以上にアレンジをしてくるようになった。
桜乃は自分に自信がつき始めていた。
傲慢になるような自信ではなく、一歩前に進める自信。
その内面の変化がさらに桜乃を美しい女性へと近づけていった。