切原×桜乃 長編
□恐れ
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桜乃は越前リョーマが苦手だった。
「膝曲げすぎ、力入れすぎ、髪長すぎ、それに運動音痴。」
その言葉の後にははぁっというため息。
“そんなこといいに、わざわざ来たの?”
おとなしい桜乃にだって、怒りという感情は存在する。
しかし元来小心者で控えめの彼女はこの感情を自分の中にしまいこんでいた。
だから気がつかない
彼女がこの台詞をうけとったらどう思うかなんて、他国で過ごしてきたこの男にはわかりもしない。
分かろうともしない。
その差が。
越前の敗因を生んだ。
「へぇ、壁打ちで練習してるんだ」
“来た”桜乃はそう心で叫んでびくついた。せめて心で大声を出せれば多少の動揺は出ないと思ったから。しかし、恐ろしいということでは変わりはしない。
「見てあげようか。」
「?」
同じ疑問符でも投げかけた本人と相手は違う思考をする
“また、からかいにきてる。やだな”
“何?否定のふりして期待してんの?”
桜乃はうつむいて背を向け、何かに耐える。
しかし、そんな桜乃の態度を見て越前は内心ほくそ笑む。
“何あれ、声かけただけでびくついて顔真っ赤にして視線外して・・。ばればれなんだよね。”
越前は、自分が現れれば驚いたようになり、シドロモドロになったりする、桜乃を見て、最初はからかえば面白いとおもっていた悪がき程度の思考だったが、それが桜乃を好意的にみるようになってからは、彼女とかかわりをもつためにからかいに来ていた。
桜乃にとってはそれが苦痛であるということは考えもしないで、自分の思いを一方的にぶつけていたのだ。
部活の先輩にも桜乃についていろいろとちゃちゃをいれられる。
“桜乃ちゃんはかわいいね。越前みて真っ赤になっちゃって。”
当然でしょ
“いつも、桜乃ちゃんは越前を見てるね。焼けるよ”
当たり前じゃん。
そのからかいが、越前は心地いということもあった。
まるで、まわりが桜乃は自分のものと立証してくれているようで安心もできたのだ。
そして、自分の中で確定する。
「竜崎桜乃は越前リョーマが好き」
という仮説を肯定した。