オリジナル小説
□消された記憶(続)
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『それ…本当ですよね…?嘘は、ありませんか?』
私が疑いの言葉をかけると、希世子さんはパイプ椅子から立ち上がった。
『ママに偽りなんかないわ、絶対よ!こんな本、見覚え全くないもの…!あなたのことをこんなにも愛しているのに本の私物くらい間違えたりしないわ!』
よく、言いますよ?はじめのあなたの本よ!発言は、いずこへ?
…なんて言いません。
『そう、なら良かったわ!これで安心して千鶴として生きられるわ!やっと、疑いもなくなったわ…!…お母さん、まだ思い出せないけど、いつか必ず思い出して…お母さんと呼びます!!』
こんな好感度の高い発言をいたしました!
これには、希世子さんも驚き喜んで、私に本とレシートを返すと、であわてて仲沢さんを呼びに言った。
二人は、記憶と向き合う力が大事などと、私にさんざん語ってきた。
もっとも、希世子さんは私が前向き発言をすれば何でもアリのように感じられた。
『すみません…。ちょっと疲れて眠いので寝てもいいですか?』
こう、言って二人を追い出した。
二人が出て行くのを確認した後に、私は緊張の呪縛からとかれた!
正直疲れた…。特にレシートを渡すときなど。
多分、私のかばんの中
身を抜いたのは、希世子さんに間違いない。
つぐみの証拠になるものを。
しかし…。『鶴の羽ばたき』をスクール入れたかどうかまでは分からなかった。
だから、鎌を掛けてやった。
あの様子からすれば、『鶴の羽ばたき』を入れたのは希世子さんじゃない。
つまり…。あの、バス停でぶつかってきた女の子こそ、『樫村 千鶴』なのだ。
あの子が落とした本を藤森君が拾い私に渡してスクールバックに混入したのだ。