小説

□平和な恋
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ケモノキングダム ライオン×オオワシ





『アッパーヤードは俺の国だ!!』

 しきりにそう言う彼の事を、俺は嫌いにはなれなかった。
最初はそれこそただのバカな猫としか思っていなかったが、彼の国への想いや優しさを知り、見方が変わった。
彼はただ、己を認めて欲しかっただけだ。
生まれはここアッパーヤードだが、親の腹の中にいる時に外から来たというだけで疎外されるという皆の偏見を変えたかった。
それが、従わせるという彼らしい強引な方法だったのだろう。

 俺は幼い頃翼に怪我をしたせいでもう二度と空へ舞う事は出来ない。
東にもそれが原因で追い出されてしまった。
辛い過去だがこれも事実。
だが今では西に来て良かったと思ってる。
思ってるが…。


『居場所がないなら作ってやる。来い』


 強引だな、と思ったが力強いその言葉に一瞬思考が止まった。
その場にはコンドルがいて、運よくあのタイミングでリハーサルをしてくれたから良かったものの、もし……もしあの時あの場にいたのが二人だけだったとしたら。
俺は、彼について行っていたかもしれない。
今だから分かる。
俺はあの時、彼に落ちたのだろうと。





「…何、ぼーっとしてんだよ」
「……あ…」

 ハッと我に返ると目の前にはライオンの怪訝な顔。
どうやら思ったより長い間、記憶の旅へと出ていたようだ。

「いや、何でもない…悪かった」
「まぁ、別にいいけどよ。何考えてたんだ?もしかして俺の事か?」

 俯いて謝れば、彼は冗談半分に笑いながら俺の背中の翼を撫でる。
まさか、本当にライオンの事を考えていたなんて言えるわけもなく。
ましてや嘘がつける性格でもなく。
俺は無言で彼の胸元に顔をうずめた。
すると彼はピタリと翼を撫でる手を止めて、しっかりと俺を抱き締めた。

「え…マジで? うわ…ちょ、可愛いな、おい!」

 顔を上げてみれば、彼は少し頬を染めて笑っていた。
俺もつられて笑い、そっと腕を背に回した。




ずっと望んでいた平和は

東と西に関係なく
ここにあるのだと気付いた



end.

ケモノキングダムよりライオン×オオワシでした。CP表記がわからなくて取りあえずライワシにしておきます。
途中ギャグ入れようと思いましたが雰囲気に圧されて断念…。この二人はシリアスより甘口がいいです。ほら、頑張ったよ私(笑) もっと供給者増えないかなぁ…。

[20120118]
追記[20120207]


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