小説

□必然的運命
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テイルズオブジアビス ジェイド→ルーク 西洋パロディ





 西洋軍事都市――キムラスカ。
その数ある公爵家の内でも名門と謂われるファブレ公爵家。
そこには年頃の娘が一人いるという。

 先まで手入れの行き届いた朱い髪は腰まで垂らされ、少々つり気味の目は翡翠の宝石のようだと。

 しかし彼女は屋敷へ軟禁されている。

 おまけに、とある事件により幼き頃の記憶が抜けている。
そう、まさにすっぽりと。

 軟禁されているのはその事件が関係しているらしいのだが…それは取りあえず置いておくとしよう。


 ここまでが、私――ジェイド・カーティスが収集した情報の大部分だ。
そしてこれから向かうのが、そのファブレ邸。
何でも、娘の婿を探しているのだとか。
それまでも多くの貴族が縁談を持ち出したのだが、どれも持ち出した側が やっぱりこの話は無かったことで、と断っていくらしい。

 私も侯爵家ということでそれなりの地位はあるが、この歳でもまだ独り身な私を心配してか、両親により半ば強制で様々な縁談を持ち掛けられた。
まぁ、どれも実を結ぶ事無く今に至るわけだが。

 因みに冷戦状態だったマルクトとキムラスカは、事実上友好を結んだため国境越えての様々な規制は無くなった。





 馬車に乗り、目的のファブレ邸へ向かう。
街並みが徐々に華やかになり、他とは比べ物にならない程立派な屋敷(と言うより城に近い)の門前で馬車は止まった。

 馬車から降りると、使用人らしき青年が近付いてくる。

「ジェイド・カーティス侯爵で御座いますね」
「えぇ」

 すると青年は、落ち着いた様子で頭を下げた。

「私はファブレ公爵家の使用人兼ルーク様の教育係をさせていただいております、ガイ・セシルと申します。御挨拶が遅れてしまいました事、深くお詫び申し上げます」


 さすが、使用人まできっちりと躾が行き届いているらしい。
…まぁ、彼は教育係らしいので当たり前なのかもしれないが。

「…では、屋敷へ案内致します」

 下げていた頭を上げニコリと笑うと、私を屋敷へと促した。

 私の隣へ来ると、さり気なく私の鞄を手に取り、お持ちしますねと言うなり少し前を歩く。

 しかし、案内するとは言っても門から屋敷の扉までは一本道。
何処かを曲がるなどの必要は無いため、自然と沈黙となる。

 …が、それを破ったのは目の前の彼で。

「カーティス侯爵はマルクトの方ですよね? 貴方様程の地位とその御顔があれば、縁遠くはないでしょうに…何故わざわざこの様な敵国であった此処へ?」

 此方を振り向くと歩きながら私に問う。

「…確かに縁談なら数多く受けてきました。何処かの令嬢だけでなく、名も知らぬ一般の娘まで。しかし、どなたも同じなんです」
「同じ?」

 ふぅ、と一息つき眼鏡のブリッジを押し上げる。

「我が家の権力、領地、財産、その他諸々…。目の前にある用意された利益だけを獲ようと私を見る。残念ながら魅力的だと思える方は一人もいませんでしたよ。しかし…縁談を断り続けているうちに気付けば私もいい歳に…心配した両親が私に無断で用意したのが、この縁談です。」
「そうだったんですか…。まぁ人の内側にある貪欲さは凄まじいですからね」

 そう言い、彼は苦笑する。

「ところで…失礼ながら、侯爵の御年齢は…?」
「35…ですが?」
「……えっ?! 35!!? 嘘……詐欺だ…」

 あからさまに驚く彼に、今度は此方が苦笑する番だ。

 この質問も、そして答えた後のこの反応も、もう幾度となく体験してきた。
流石に“詐欺”と言われたことは無かったが。

 よく言われる事だが、自分の顔は年相応ではないらしい。
確かに、鏡越しで見る自分の顔は、一定の年齢から余り変化をしてないような気もする。
それに気付いたのも、他から頻繁に言われてからだが。

 ガイ、といったか…目の前の彼は素顔に戻ると私の顔をジ−ッと見て、

「……アンタは今までの奴らとは何か違うな」

 小さな声で何か呟くと、何も無かったかのよう此方に笑いかけ再び前を向いた。

 そうこうしていると、目の前には立派な扉が待ち構えていた。
使用人の彼は、取っ手に手を掛け奥に押す。
扉は開かれ、中へ通される。
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