小説

□確認
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戦国BASARA 佐助×幸村 幸村微ヤンデレ





 信玄の命により、越後の上杉の所まで使いに行った佐助が戻って来たのは、出発してから2日後の昼過ぎだった。

 報告をするため、信玄のいる部屋へ向かっていると、後ろから勢い良く誰かに羽交い締めされた。
首に捲かれた腕の先を見ると、護身用の小刀が握られており、喉元すぐで止められていた。

「…一体、何の真似?



――――旦那」

 刃物を突きつけられているにもかかわらず、別段驚く事もなく、ゆっくりと後ろを振り向いた。そこには、佐助の主である真田幸村がいた。

 幸村は小刀を突きつけたまま、佐助の首筋に顔を埋めた。

「…お前は優秀な忍だ。 それこそ、俺では使いこなせぬ程にな。 だが、幾ら優れているお前でも、忍であるが故にいつ、誰にその命を奪われるかなど分かるまい」

 そこまで言い、一息つく。

「俺にはお前が必要だが、それ以上に愛しい…。 誰かも知れぬ輩にお前の命が奪われるくらいなら、いっそ俺の手で――」
「ハァ…」

 幸村の言葉を遮るように、佐助は短くため息をつく。

「いつから俺様の主はそんなに歪んじゃったのかなぁ…」
「佐助…」

 苦しそうに名を口にする幸村。
佐助のいない間に考えて考え抜いた、幸村なりの結論なのだと、佐助は気付いていた。
多少、歪んだ結論だったとしても、自分の事を考えていたこと、忍である自分をここまで大切に思ってくれていることを嬉しく思う。

 だが。

「…確かに、俺様は忍だ。 旦那を守ることが仕事だけど、何処で命が尽きるかなんて分からない。 だけど…旦那がさ、今俺様を殺したとして、旦那はそれを後悔しない?」
「……………」

 幸村は言葉に詰まる。
その様子を見て佐助は微笑む。

「旦那には、後悔しない生き方をしてもらいたいね。 それに、俺様がここで死んじゃったら、旦那が作る“平和な世”が見られないじゃん!」
「…しかし、戦のない日々など…来るのだろうか」
「何、らしくない事言ってんの! お館様と一緒に、日ノ本を戦のない平和な国にするんでしょ!?」
「そう…であったな」

 佐助の肩に幸村は顔を押し付ける。
少しばかり、鼻を啜る音も聞こえる。

「それに、俺様がこの世を去るには、まだ未練があるから」
「……?」
「さっきも言ったように、旦那の治める“平和な世”ってのを見てみたいのと…旦那の笑顔を見続けたいってね。」

 そう言い、小刀を持っているほうの幸村の手を握ると

「心配しなくても、俺様はまだ死なないし、殺されないから!」

 だから安心してよね、旦那。

 それを聞いた幸村は、静かにゆっくりと佐助の首から腕を放し、小刀も懐にしまった。

 佐助が幸村の方へ体を向けると、彼は濡れた目元を見られないよう、袖口でごしごしと擦っていた。
そんな主の姿を、愛らしく、愛しく思う自分は、従者としてあってはならないのかもしれない。

 しかし。


「だーんな!」
「ん?なっ!!」

 名前を呼ばれ、顔を上げる幸村を、佐助は優しく抱きしめた。
耳元に顔を近付け、

「俺はさ、この命…あんたに捧げる覚悟だし、そのためなら全く惜しくない。 けど…出来るならこれからもずっと、旦那の傍にいたい」
「さ、佐助っ…!!」

 力を緩め顔を覗くと、幸村の顔は林檎の様に耳まで真っ赤に染まっていた。

 佐助は、幸村の頬を両手で包み笑っていると、ハッと何かを思い出したように、目を見開いた。

「……どうしたのだ、佐助?」

 すると佐助は青ざめた顔で、

「…大将にまだ報告行ってないや…」

 と、小さな声で言った。

「なんと!!」
「旦那も一緒に来てくれる?」
「勿論だ!」

 佐助の頼みに笑顔で了承する幸村。
いつも通りに戻ったのに安心し、彼の手を握ると

「じゃ、さっさと行きますか」
「あぁ!」

 2人で信玄のいる部屋へと向かった。





 擦れ違ったっていい。

 間違えたなら、また2人で確認しあえばいいのだから…。



End.

ちょっとした幸村の独占欲…ということで(笑

追記[20120207]


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