小説

□いつも通り
1ページ/1ページ

銀魂 土方×銀時





『すまん!! 急に攘夷残党が動き始めたから、今日は無理になった』
「……あぁ、分かった…」
『また埋め合わせするからな!』
「はいはい、っと…」

 銀時は受話器を置くと、テレビの電源をつけて、ソファーに寝転んだ。
ここまでの動作を、これまで何回しただろうか…。

 仕方ないとは分かっている。
土方の仕事柄、非番の日は不定期。
銀時とは違い、忙しい毎日を送っているのだから…。

 2人でいられる時間など、めったにない。
だから、土方が非番のはずであった今日を、柄にもなく銀時は心待ちにしていた。

 開いたままのジャンプを顔に乗せ、頭の後ろに腕を回していた銀時だが……ふと、何か思い付いたのか、ガバッと起き上がった。

「そうか…来れないなら、行けばいいんだ…」

 静かにそう呟くと、厚着をしてマフラー片手に万事屋を後にした。


 つけっぱなしのテレビでは、結野アナが

『今日の天気は、雪でーす! 皆さん、外出する場合は傘を用意しましょう!』

と、いつもの明るい声で放送していた。





「…さみぃー………」

 銀時は首に巻いたマフラーを口元まで上げると、腕を組んで少し前屈みに立っていた。

 彼が来た場所、それは土方が勤務している真選組の屯所の前だった。
屯所の中を覗いてみるも、人の姿が見えない。
どうやら、殆どの隊士達が出張ってるらしい。

(…ジミー君や総一郎君でもいたら、中に入れてもらうんだけどなァ)

 そうは思うも、2人とも真選組の中ではそこそこの位だ。
ここにいる方がおかしい。
ハァ…と大きくため息を付き上を向くと、何やら白いものが降ってきている。

「うわ、雪かよ……そりゃ寒いわけだわ」

 銀時はここぞとばかりに嫌な顔で、空を見上げた。





 屯所の前に来てから数時間が経ち、だんだんと立っているのがダルくなった銀時は、ゆっくりと座り込んだ。
手足はかじかみ、感覚がなくなっている。

 いつまで待っても帰って来ない土方が、銀時は不安でしょうがなかった。

「…………土方ァ…」

 体を丸め、意識が朦朧とするなか呟くと、

「……銀、時…?」

 と、聞き覚えのある声が頭上から聞こえた。
上を向くと、黒い隊服に身を包んだ、土方の姿があった。

「おま、何でこ……」
「おかえり」

 土方の言葉を遮り、銀時は笑った。
鼻と頬を赤くし、頭や肩に雪を積もらせている銀時の姿を見ると、彼がどれだけ長い間ここにいたのか一目瞭然だった。


「馬鹿か、お前は!! 今日は仕事だっつったろ! こんな中、何時間も外にいて……風邪でもひいたらどうすんだ!!!」

 強く言い放った後、土方は銀時を力一杯抱き締めた。

「土方……く、苦しい…」
「うるせぇ!! ったく…こんなに冷たくなりやがって……我慢し過ぎなんだよ」

 叱られているけれど、自分は土方に、こんなに愛されているんだ、そう考えると、銀時の顔に自然と笑みが浮かぶ。

「……ハハッ」
「…なんだよ」

 答える代わりに、土方を力一杯抱き締め返した。
そのまま、銀時は土方の腕の中で眠りに落ちた。





 ほんの少しの勇気と、行動力があれば、いつも通りの結果とは別の結末が待っている。

 それがいい方に転ぶかどうかは、本人次第――…。



End.

積極的な受けも可愛いな、なんてww

追記[20120207]


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ