黒子のバスケ
□合宿に行こう!
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『合宿に行こう!』
ウインターカップを目標に掲げて、誠凛バスケ部は夏の強化合宿へとやって来た。
部の予算にも限りがある事から、高校生である彼らには、当然と言えば当然な格安宿での宿泊。
しかし、バスケさえ出来ればいいのだから、この際屋根があって雨露がしのげれば何も問題無かった。
しかも、宿の目の前は海。
海水浴客で賑わっていた昼間も、夜ともなれば静けさを取り戻し、波の音が心地よく響く。
そんな夜の海の波打ち際を、火神は一人で物思いにふけつつランニングをしていた。
―――はずだった。
「少し、早いです。火神くん。」
「どわっ!?黒子!何時の間に並走してやがった!?」
相変わらずの影の薄さで火神に近づき、気にも留めてもらえないまま火神と走っていた黒子だったが、火神のハイペースに根を上げてしまいペースダウンを訴えた。
「夜中に子供がひとりでふらふら出歩くんじゃねぇよ。」
「・・・同じ歳なんですが?」
「見た目のことを言ってんだよっ!お前みたいなひょろっこい童顔のヤツが夜の海に居たら色々危ねーんだ。」
「心配し過ぎですよ、火神くん。まぁ、そう思うならペースダウンを・・・ボク、もう足がもつれて・・・」
走りながらの会話も、体力の無い黒子にとっては苦しく、早くも息が上がり足元も覚束ない。
それでなくても日中も厳しいトレーニングをこなしているので尚更だ。
「ったく、疲れてんなら宿で大人しく寝てりゃいいものを・・・」
並んでいたはずの黒子がどんどん後方に下がっていくことに溜息を漏らし、火神は仕方なく足を止め後ろを振り返る。
火神が待っていてくれている姿を見て安心したのか、黒子はニコッと笑うと足早に距離を詰めようとした。
その瞬間。
「わっ!!ぶはっ!」
「うわ!黒子、大丈夫か!?」
気が緩んで、足がもつれたのか、黒子は砂浜に向かって顔面から思いっきり転んでしまう。
あまりに見事なこけっぷりで、助け起こそうとする火神も笑いを堪えるのに必死だった。
「あー、あー、汗かいてるから砂がべったり張り付いてるぜ。」
「うえっ、口の中までジャリジャリしてます・・・ぅぅっ」
Tシャツに短パンという肌の露出が多かったせいで、黒子は全身砂まみれとなってしまった。
フルフルと犬のように身体を震わせている黒子の髪を撫ですかしながら、火神は苦笑する。
「そんな砂まみれで宿に帰れねぇな・・・仕方が無いから海に浸かって砂を洗い流して来い。」
「一人で夜の海に入るのはちょっと・・・」
海で砂を落として来いという火神の言葉を不服とした黒子は、『じゃ、火神くんもいっしょに』と言って急に抱きついてきた。
「うわわっ!よせ、止めろ!黒子っ、砂が付いて気持ち悪いっ!」
「火神くんも道連れです。お互い汗かいてましたから砂がよく付きますね。」
逃げようとする火神の上に、おんぶでもしてもらうみたいに抱きついては自分に付いている砂を火神になすりつけ無邪気に笑う黒子。
普段は無表情でクールな黒子も合宿という状況に年相応の子供らしく浮き足立っているのかも知れない。
一方、火神の方は黒子くらいなら簡単に払いのけられるのに、抱きついてこられた事に動揺して力が出ないでいる。
それどころか、黒子の重みに耐え切れず膝を付いて倒れこんでしまった。
「火神くんも砂まみれですね。じゃ、一緒に海へ入りましょう。」
「黒子、テメー・・・」
波打ち際を走りぬけ、海の中へと入っていく黒子を憎らしげに見送る火神。
だが、その顔は赤面している。
今が夜でよかったと感謝しながら、火神は黒子を追いかけ自分も海の中へ。
月明かりだけでも充分に視界が効く夜の海は神秘的だった。
細波の音にまぎれて黒子の立てる水音が聞こえてくる。
「火神くん、こっちこっち!遅いですよ!」
「くそ・・・波が押し寄せてきて・・・動きにくいっ」
押し寄せてくる波に身体を押され、足は砂に取られてしまい思うように前へ進めない。
それなのに、前を行く黒子は水の抵抗など一切無いかのようにスイスイと海の中を進んでいく。
まるで波が黒子を避けているみたいに、黒子は海の中を自由自在に動き回るのだ。
陸上じゃいつもみんなより遅れてすぐに倒れ込むような軟弱な黒子なのに、海の中ではそれこそ水を得た魚だ。
自分も見たことが無い黒子は、月明かりに照らされ幻想的に浮かび上がり、その儚さが火神を不安にさせる。
―――どこにも、行くなよ、黒子。
「え?なに?火神・・・・」
一瞬、火神が何かを言いかけて、それを聞き逃した黒子が振り返った。
「捕まえたっ!!このヤロー!」
「わわわっ!!火神くん、海の中で抱きつかないで下さいっ!」
油断した黒子を捕まえるのは容易かった。
火神は海の中を泳ぎまわる黒子を後ろから羽交い絞めにしたことで、やっと自分の手中に収めてハアハアと息を切らせる。
意外だったのは、黒子が思いのほか泳ぎが得意だったという事と、夜の海にいる黒子があまりにも綺麗だったという事。
・・・それと、背後から抱きしめた黒子の背中は見た目どおりに小さかったという事。
「火神くん、もう砂も落ちましたし・・・離してください。」
「やだね。」
「だって、もう宿に戻らないと・・・」
「やだ。」
聞き分けの無い子供みたいに駄々をこねる火神に、黒子はどうしたものかと思案する。
しかし、自分の腰辺りに触れる火神の股間を感じたとき、一気に思考回路はショートした。
「かっ、火神く・・・なんで、ソコ、勃たせて・・・??」
「ああ、ワリー・・・勃っちまった。」
服の上からでも分かる股間の膨らみが、黒子の腰に触れ、その熱の熱さを伝えてくる。
「あ、当たって、いるのですが・・・」
「当ててんだよ。」
背中を抱かれたまま、逃げ出せない黒子が心の中悲鳴であげる。
こんな海の中で同性相手に興奮するなんて変だ。
確かに自分達は恋愛関係そっちのけで毎日バスケばかりしているので溜まる物も色々あるだろう。
でも、そこは未成年だし、多感な高校生なんだから、一人でどうにかするしかない。
それなのに、コレは反則だろうと黒子は思った。
「黒子・・・『抜き合いっこ』しようか?」
「ぬぬ・・抜き?」
「ああ、お互いのを握り合って扱くんだよ。お前だっていつもひとりでシテんだろ?それと同じ要領でオレのを、さ・・・」
「ボク、ボクは・・・そんなのっ」
言い訳なんて許さないと言わんばかりに、火神の行動は早かった。
海の中で黒子の身体を抱いて浮かせると、くるんっと半回転させ自分と向き合う体制にしてしまう。
そして互いの身体を密着させると、戸惑う黒子の短パンに手を潜り込ませ、下着の中で息づく小さな熱根を探り当ててしまった。
「なんだ、もう勃起してんじゃん。いつから?」
「し、知らない・・・やめ、火神くん・・・離しっ」
逃げる事に長けていた黒子も、捕まえてしまえば無力なものだ。
その上、快楽の中心を握りこまれていては逃げるに逃げられない。
「ほら、黒子、お前もオレのを触れよ。」
「や、やだ・・・っひっ!?」
ぴたりと密着した身体で、今度は互いの性器が重なる。
裏筋に感じる火神の逸物を感じて、黒子の身体が大きく跳ねて、それにあわせて海面もパシャンッと波打つ。
大きな火神の掌に握られ、合わさった二つの熱根は、海の中にあっても熱く滾っていた。
「やん・・・ん・・・火神くんっ、そんなふうに動かしちゃ・・・ひっ、やぁっ」
「ああ、海の中なのにぬるぬるしてんのが分かるぜ・・・なぁ、これってお前の?」
「しらなっ・・・ひっ」
自分と火神の性器を握らされた手は離れないように上から火神の手が覆い被さっている。
黒子は残るもう片方の手で火神の肩を押して身体を引き離そうとするが、火神の巨体はびくともしない。
焦る黒子は、自分の掌から伝わってくる二人の熱にただただ狼狽するだけ。
なんて、熱くて、大きいんだろう・・・
パニックを起こしている状態でありながら、握らされた火神の逸物の感触だけはやけに鮮明に感じられた。
体格差もあるのだから性器の大きさだって当然違いがあるのは分かる。
けれど、それにしたって、コレは・・・
「火神くん、ずるい・・・です」
「は?ぁ・・・あぁ。そればっかりはどうしようもねぇな。」
男の象徴の大きさの違いに腹を立てた黒子が上目使いに火神を睨むが、火神には可愛いと思われてしまうだけで逆効果だ。
「ほら、怒ってないで気持ちよくなろうぜ?」
「あっ!うそっ・・・そこは・・・」
腰まで海に浸かっているのに、海水の冷たさなど微塵にも感じられず、互いの熱の熱さだけがリアルに伝わってくる。
両腕ごとひとまとめにして拘束している手で黒子を抱き寄せ、額にキスをひとつ落とすと、火神は自分と黒子を同時に果てさせるため手の動きを早めた。
ちゃぷんっ、ちゃぷんっ、と水面が音を立てて揺れる。
鼓動も呼吸も波の音に掻き消されて、海に溶けてしまいそうな錯覚を起こす。
夜の海。
星の煌き。
月の明かり。
ふたりだけの秘密が、今、そっと弾けて――――
―――何かが始まった。
*****
おわり。
2013/5/8
*合宿中に恋が芽生えるというのもいいかなぁ・・・なんて思いました。