テロリスト
□文化祭に連れてって!
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兎にも角にも、忍をこの室内から一刻も早く出さなければ・・・
ついには床に膝を付いて崩れ落ちてしまった忍の小脇に手を差し込み、お化け屋敷から出ようとした時だった。
「うおおおおお〜おおぉ〜」
「ぐおお・・・ぐおおおお」
「なっ!、何だ!?」
地の底から湧き上がるような呻き声を轟かせ、ゾンビの集団が襲い掛かって来た。
どうやらこれが、このお化け屋敷のクライマックスであり、最後にして最大の見せ場だったらしい。
ゾンビに扮した学生達は、忍が恐怖で腰が抜けて座り込んでいるのだと思い込み、意気揚々と忍を脅かしにかかってくる。
「こらっ、止めろ!こいつは気分が悪いんだ・・・そこを退けっ、出口を開けろ!」
気分の悪さからガタガタと震える忍を庇い、宮城は襲い掛かってくるゾンビを必死で払いのける。
しかし、ゾンビからしてみれば宮城達をカップルだと思い込み、サービスだと言わんばかりに忍を襲う。
「くっそーっ!!てめぇら!!いい加減にしろよ!!」
ついに堪忍袋の緒が切れた宮城は、乱暴な口調でゾンビ達を一喝した。
その宮城の声はお化け屋敷中はもちろんの事、外にまで響く怒声だった。
「俺の忍に手を出すんじゃねぇっ!!そこを退きやがれ!!」
―――俺の忍?
―――今・・・俺の、忍って言った?
宮城の言い放った台詞が、やけにそこだけ大きく響く。
ビックリしている忍は、そのままゾンビを蹴散らす宮城に抱き上げられて、外に出る事が出来た。
その一連の様子は、ゾンビの集団から救い出されたお姫様と、助け出した王子様のようで・・・
お化け屋敷を後にして走り去る二人を、多くの学生が呆然と見送っていた。
「よっ、と・・・大丈夫か?忍?何か飲み物を持ってきてやるから、ここに寝転んでいろ。」
「・・・ん・・・ふぅっ」
横抱きにしていた体制のまま、宮城は忍を文学室にあるソファーに横たえさせた。
お化け屋敷から抜け出たおかげで塗料の匂いから解放され、幾分か顔色が良くなった忍だが、まだ気分が優れず体も脱力してぐったりしている。
言葉も無く目線だけで宮城を追って来る忍をソファーに寝かせ、宮城は文学室の窓を開けて新鮮な空気を取り込むと、お茶を片手に戻って来た。
「・・・・忍?」
せめてお茶でも飲めば回復するかと思い、宮城は忍に向かいお茶を差し出そうとしたが、ソファーに寝そべる忍を見て、一瞬動きが止まる。
気分を悪くして弱った肢体を投げ出している忍の姿は無防備で、思いの他宮城の嗜虐心を煽り立てるものだったのだ。
―――今なら簡単に目の前のしなやかな身体を貪る事が出来る。
―――元より『ソレ』はお前のモノだ。
存分にむしゃぶりついて思うままに喘がせ、ひれ伏すまで啼かせればいい・・・
誰かが、宮城にそう囁く―――
そして、導かれるまま、宮城の腕は忍に向かい伸びていく。
「んっ・・・みや・・・ぁ、」
いきなりの抱擁に驚いたのは忍だけじゃない。
本能の赴くまま忍を欲してしまう自分に宮城自身も驚いている。
手にしていたお茶を床に放り出し、宮城は介抱を必要としている体に負担を強いる行為を迫り始めた。
「・・・お前が欲しい・・・忍。」
「あ、えと・・・宮城、でもっ」
宮城に欲しいと望まれるなら、いつだって喜んで体を差し出せる。
でも、それは時と場合によるもので・・・
しかし抵抗しようにも、すでに忍は深くソファーに背中を押し付けられて、上着を捲り上げられ、止めようの無い宮城の愛撫を胸に受けている。
さわさわと胸元をくすぐる宮城の前髪に肩をすくめながら、忍はそろりと天井を仰ぎ見た。
開け放った窓からは学生達で賑わう声が高々に響いて、今、ここは大学内であり、多くの人でごった返す文化祭の真っ最中なのだと思い知らされる。
こんなに薄いドア一枚の隔たりだけで、自分達は淫らな行為に耽っているのだ。
神聖なる勉学の場所で、イケナイ行為を自分にするのは、教育者でもある宮城・・・・。
「あ、あのさ、宮城・・・ちょっと、」
「なんだ?気分が悪くてセックスは無理そうか?」
セックスだなんて直接的な言葉で煽られると、羞恥心で忍の顔は真っ赤になる。
「ううん、そうじゃなくて・・・気分なら、もう、平気なんだけど・・・ぁ、んっ」
戸惑いながらも宮城の大きな掌で胸や脇腹を撫でられ、忍はその心地良さに鼻にかかった声を漏らしてしまう。
「それだけ真っ赤な顔で血行も良いみたいだし、気分が悪くないならこのまま続けるぞ、ほら、脚を開け・・・・」
「つ、続けるって・・・ほんとに!?」
言葉と共に、動き回っていた宮城の指先が下肢に降りて、忍の下着の潜り込み熱の中心に絡まれば、もう何も考えられなくなった。
「ああんっ・・やだ、みやぎっ」
たゆたうような感覚が、宮城の手でハッキリと輪郭を持った快感に変わって性に未熟な忍を翻弄し、無意識に腰を浮き上がらせてしまう。
「・・・挿れるのはまだ怖いか?」
唾液をまぶした指で、忍にアナルセックスする為の準備をしている宮城が気遣うように尋ねてきた。
「は・・ふ・・・っ、へい、き・・・怖くない・・・」
クチュクチュと出し入れされる指の動きに合わせ呼吸を繰り返す忍は、なんとか少しでも楽に宮城を受け入れようと体を緩めているのが分かる。
未発達な体で大人の男を迎えるには相当な苦痛と恐怖が付きまとっているだろうに、忍は健気にも抵抗ひとつせず、むしろ自ら望んで性行為を求めている仕草をした。
そんな純真で素直な忍を利用する自分は、ずる賢い大人だと思う。
それを十分に分かっていながら、この幼くて可愛い恋人を前にすれば抑えがきかなくなるのだ・・・
「優しく抱いてやる・・・・お前を壊したりはしない・・・」
―――お前は俺のモノだから。
忍が泣き出す手前まで宮城はソコを解し、ゆっくりと体を繋いでいった。
揺さぶられ、自分からも応える様に腰を揺らめかせる忍が必死になって両手を伸ばし、しがみ付いてくる。
「気持ちいいか?忍?」
問われる甘い囁きに、忍の身体の芯がまた疼き、宮城の肉棒を蠢く肉の筒で締め付けた。
「・・・うん。」
消え入りそうな小さな声で返事を返し、忍は両腕で宮城にぎゅっと抱きつく。
中身も、外も、大好きな宮城を包み込んであげたくて。
―――時を同じくして。
メイン・ステージがある校庭の一角には、先程投票を終えて発表に至った、とある企画がでかでかとパネルに張り出されていた。
それは毎年結構な人気を博しているもので、注目度も高い。
その名も『ベスト・カップル選手権』だ。
文化祭に訪れた恋人達が、備え付けられた応募箱に自分達の写真を投函して、その写真を元にどのカップルがお似合いかをみんなが投票して優勝を決めるという至ってシンプルな企画。
そして、その栄えある今年の優勝者が・・・
『宮城教授と謎の美少女』
・・・だったりする。
『お化け屋敷で動けなくなった恋人を救い出した教授は王子様のように勇ましく、抱えあげられている謎の少女も可憐でお姫様のような容姿であった』
大きく引き伸ばされて貼られた写真と一緒に、優勝者への記事が載せられている。
恐らく誰かが忍を抱えてお化け屋敷から出てくる宮城ををカメラに収め、面白半分で勝手に『ベスト・カップル選手権』にエントリーしたのだろう。
その写真に写る男らしい宮城と、華奢な体つきと俯いていたせいで女と間違えられた忍は『謎の少女』として多くの人の票を獲得したのだった。
お堅い教授の意外な一面に、学生達は陽気にはやし立てているが、その輪から遠巻きに見つめる一人の人物がいた。
その人物はパネルに向うと、さらに詳しく書かれている記事を読み上げワナワナと肩を震わせる。
そこには・・・
『なお、教授はお化け屋敷にて、襲ってくるゾンビに向かい「俺の忍に手を出すんじゃない」と言っていましたので、我々実行委員会では近日中にインタビューを遂行し、「忍」さんの正体を明らかにしたいと思います。』
読み終えた人物が並々ならぬ怒りを孕んでいる事に脅えて、周囲の者は思わず後ずさる。
それも、その筈。
『鬼の上條』が怒りを露にしているのだから、学生達は一目散にその場を逃げ出さずにはいられなかった。
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お終い。
最近、忍ちんに対する妄想が半端なくすごいです。やばいです。危険です。
今なら文庫本一冊くらいテロ話書けそうです。