羽鳥×千秋

□トリチアな小話集
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羽鳥の誘いで気分転換に家を出て、散歩に出掛けた千秋。

その千秋がジュースを買うと言い出して自動販売機に向った事から事件は起こった。



「トリ!!この自動販売機、信じられねぇーっ!!」

キャンキャンと吠える小型犬のような鳴き声で、かなりご立腹な千秋が自動販売機に文句をつけている。

「・・・ったく、どうしたんだ?吉野?お前は自動販売機でジュースのひとつも満足に買えないのか?」

「違うっ!!ジュースくらい俺にだって買えるわ!でも、お金入れたのにジュースが出てこないんだ!」

羽鳥に馬鹿にされ、クワッと牙でも剥くように楯突いてくる千秋を『はいはい、どいて』と簡単にあしらい、羽鳥が問題の自動販売機の前に立つ。

「お前、おつりの返却口にお金入れたんだろ?」

「違う!ちゃんと料金のところに入れた!」

「じゃ、一度お金を返却させてみるか」

料金を入れてジュースが出てこないなら返却レバーを押してお金を出そうとした羽鳥だが、お金が返却される事は無かった。


「お前・・・本当に・・・」「お金なら本当に入れたって言ってんだろうがっ!!じゃ、もう一度お金入れるから良く見とけ!」

鼻息も荒く、自分にかけられた容疑を晴らす為に千秋は再び小銭を自動販売機に投入する。

そして、千秋が先ほどした一連の作業を羽鳥の前でやって見せた。

「ほら見てみろっ!お金入れてもジュース出ないだろ!?」

ドヤ顔でジュースのボタンを押す千秋。


「吉野・・・・お前、なんでわざわざジュースも出ない、お金も帰って来ないって分かってる自動販売機にお金入れるんだよ・・・・」

千秋の行動に呆れた羽鳥はガックリと肩を落として落胆の溜息を付いている。

その姿と助言を得て、千秋は初めて自分の愚かな行為に後悔した。


「うがーっ!!俺の馬鹿!何してんだよ!?どうしよう、トリ・・・お金帰って来ないしジュースも出ないよ!管理会社に電話する!?誰か来てくれるかな!?」

「知るか。締め切りが迫ってるんだ。さっさと帰るぞ」

涙目で訴える千秋を無視して、羽鳥は切り取った手帳に『故障中』とだけ書いて自動販売機に挟むと、千秋の首根っこを引いてその場を立ち去る。


「うええんっ!俺の240円があぁ・・・」

「うるさい。一千万部作家がみみっちい事でわめくんじゃない!」

ズルズルと引きずられていく千秋に、『飲むプリン』なんて訳の分からないジュースを買おうとするからだ、と羽鳥は言い聞かせた。







******
おしまい

・・・実は、実話だったりする。

『飲むプリン』も実在します。

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