*世界一初恋*

□玄関あけたら2分でH。
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「またコンビニ弁当かよ、おまえ。」

これでもかという信じられない量の仕事を片付け、ゾンビの如く足を引き摺り帰宅する途中。

いつものコンビニ前で高野さんに声をかけられた。

さっきまで同じ部署で顔をつき合わし、自分以上に仕事をこなしていた高野さんは確かに腐り始めてデロ〜ッとしていたのに、今ははつらつとしている。

もしかして俺を構っていじめる事でストレス発散してるんじゃないかと疑ってかかるが、ここで口論する元気はもう無い。

「コンビニ弁当もおいしいですよ?俺のオススメ教えましょうか?」

厭味のひとつでも言いたいが、疲れきってる状態では無難な話を返すだけでも精一杯で、俺は成り行きで高野さんとコンビニの自動ドアをくぐった。





「で、どれがお前のオススメな訳?」

「えっと、このスタミナ野菜たっぷり弁当・・・あ、ふたつあるから高野さんも買います?」

「ああ、カゴに入れろ。」

お目当ての弁当を律は高野が持つカゴに放り込む。

ひとつのカゴに重なる二つの弁当に律は『ん?』と違和感を覚えながらも高野に急かされ飲み物も選ばされる。

「何飲む?」

「ご飯にはお茶でしょ?ちょっと、高野さん!ご飯なのにコーヒーなんて買わないで下さいって」

お茶とコーヒーをカゴに入れる高野を窘めるが、『小野寺のお茶を半分貰うからいいだろ?』と言われて渋々納得した。

(・・・まぁ、容量の多い1リットルボトルのお茶だから分けてもいいけどさ。)

高野の持つカゴがお茶の重みでズシリと垂れるのを横目で見つつ、律は妥協する。

その時も『あれ?お茶分けるの?』と不思議な感覚に囚われたが、次々にビールを購入している高野を止めるのに躍起になりそれもすぐに忘れた。

「高野さん、飲み過ぎです。」

「食後のデザートだ。」

「じゃ、デザートなら俺、プリン食べたい。」

「どのプリンだよ?種類多いぞ。」

最近のブームでコンビニにはデザートが充実している。

律は高野と肩を並べて『これは生クリーム入りで美味しいし、こっちはフルーツが乗ってて好きだし・・・あ、でもスプーンで食べるロールケーキっていうのも捨てがたいなぁ』と商品棚の前で悩んでいると、結局それも高野さんが全部カゴに入れてしまった。

「そんなに一杯食べられませんよ?」

「誰がお前一人に全部食わすって言ったよ?全種類俺にも半分味見させろ。」

「あ、それいいですね!沢山のデザートを食べたくっても一人じゃ食べ切れなくて断念してたんです。ふたりだったらいろんな味が楽しめますねっ」

あれもこれもと食べたくなる種類豊富なデザートを前にして、いつも一人だからと諦めていたが、二人でなら分け合って沢山食べれるとあり、律は高野が支払いをしている間、上機嫌でドアの前で待っていた。

「荷物、持ちますよ?」

「これくらい重くもなんともないからいいよ。」

ドアをくぐりながらそんな会話をして、高野と律はマンションへと続く道を並んで歩く。

街灯の灯りを背に受けて、二つ並んだ影が歩道に伸びる。

何だかこそばゆいような嬉しさに、律は肩をすくめた。

「何?寒いの?」

「まさか。まだ夏の熱帯夜ですよ?」

ブルッと身を震わせたのを高野は寒いからと誤解したようだったが、律の方は『寒いって言えば高野さんはどうしただろう・・・』と考えていた。

寒いって言ったらやっぱり『この熱い夏に何言ってるんだ?』ってからかわれるだろうか?

それとも、秋の気配が近づく夏の終わりの冷えた空気から自分を守るように、肩を抱いてくれただろうか?

そんな取りとめもない事を考えてぼんやり歩く律は、知らず知らずのうちに体を高野に寄り添わせていた。

頭上から高野が『くすっ』と小さく笑う声が聞こえてきて、『思い出し笑いする人ってスケベらしいですよ?』と、やっと厭味らしい厭味を言えた律だった。





「じゃあ、荷物持ってもらってすみませんでした。」

隣同士に並んだ自宅の前で、律はコンビニの購入品を受け取ろうとしたが・・・


「お前の荷物、俺のと一緒になってるんだけど?」

「アッ!?本当だ。店で分けてもらえば良かったですね・・・仕方ないからここで分けましょう。」

うっかりしてたな、と反省していると高野は更にたたみ掛けてきた。

「・・・お茶。半分貰う約束してんだけど?」

「ああっ!?そうでしたね・・・じゃ、じゃあ、俺、家から水筒持って来ますんでっ」

・・そういえばそんな約束したっけ。

「デザート、どうすんの?結構な量あるけど?」

「そっ・・・それも家からお皿持ってきますんで、ここで分け合って・・・」

我ながら面倒臭い事を並べ立ててるなぁ・・と思いつつ、友好的な解決策を分かってても口に出せない。

「そんなまどろっこしい事しなくても、お前が俺の家に来てメシ食えばいいんだろうが!?」

「わあああっ!!それはそうですけどっ!!わっ、わわ・・・高野さん、引っ張んないで・・・」

高野さんの部屋に入るのは色々と不味い事態に陥ってしまうのを律は過去の経験から学習している。

これまでというもの、何度玄関に引っ張りこまれ、ドアが閉まるや否やそのドアに背中を押し付けられ唇を奪われて来た事やら・・・

唇だけならまだいい。

勢い余って押し倒され、あんな事やこんな事をされ、この玄関で射精させられた経験は数知れず・・・・

今や玄関を見るだけで股間が疼くと言っても過言ではないくらい、パブロフの犬のように反応してしまうのだ。

なまじ同じマンションで玄関も同じ作りだから、律は高野の家の玄関に限らず自分の家の玄関ですらも欲情するという・・・・

『なんて若いんだ?自分?』と毎日自分に突っ込みを入れてるのは誰にも言えない秘密。


「・・・何?もしかして・・・やらしいコト、考えてる?」

「ばっ!?んなワケないでしょうが!そもそもやらしいコトって何ですか!?」

慌てて反論するが、図星の指摘に声が裏返り良からぬ妄想に耽っていたのを暴露してるも同然だった。

「ん?やらしいコトってこーゆーコトじゃん。しらばっくれるなよ。」

「ぎゃああっ!高野さんっ!!?駄目だって!また押し倒すんですかぁ〜〜〜!!」

『ご期待にお応えしただけ。』と耳元で囁く高野の声を聞きながら、律は玄関の上がり段に押し倒される。


「・・・ずっと我慢してたからもう限界。ここで一発抜いてから一緒にご飯食べような?」

「ううっ、ここで犯るんならご飯の前にお風呂!」

「へいへい。かしこまりました。」

高野さんの思い通りばかりにはさせてやるもんかと言った律の主張は、奇しくも『玄関でのエッチに同意』の言葉なのだと気づきもしないで。

触れては離れる優しい口付けを受けながら服を肌蹴させられるままに律は玄関の床に背中を預ける。

冷たいフローリングと温かい高野の舌ざわりに翻弄しつつ、ふと見上げる視線の先にはコンビニ袋から転がったデザートのプリン。

(・・・・冷蔵庫に入れて冷やさなきゃな・・・プリン・・)

そうは思っても、今更この行為を止める術などなくて、律は溜息を吐息に変えて高野から受ける愛撫に集中する。


いつか、習慣にもなりそうなこの行為を止めなければいけないな・・・と思い律は目蓋を閉じた。



・・・・『玄関あけたら2分でエッチ。』

なんて、誰にも言えないじゃん・・・









*****

〜お終い〜

知らないうちに高野に甘えてる律っちゃんと、分からせないように律っちゃんを甘やかす高野っち。

アンケートにあった『日常』『幸せ』『甘い』『両思い』『ラブラブ』を詰め込みました。

ちなみにタイトルはCMにある『玄関あけたらサト○のご飯♪』から思いつきました。

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