その他CP

□手探りのKISSA
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ヒロさんを一言で説明するならさしずめ『天邪鬼』だろうか?

勿論、ヒロさんをたった一言で表現なんて出来ない。

ヒロさんはつかみ所がなくて、不器用で、意地っ張りで・・・
それでいて、寂しがりやで、人一倍傷つきやすい繊細な人。

そんなヒロさんは『自由と孤独』を身を持って知っているから、傷つけたくないって・・・
守ってあげたいっていつも思うけど・・・

本当なら、つかず離れずの距離を保ちながらそっと側で見守ってあげているような関係が理想的なんだろうけど、それをさせてくれないのは『自分がヒロさんを愛しすぎているせい』と『ヒロさんが無意識に甘えてくるから』だ。


こんなふうに。

愛し合って疲れた身体を投げ出して、ふたり倒れ込むようにベットに潜り込んだ時なんかは特にヒロさんは甘えてくれる。



「ほら・・ヒロさん、腕を離して下さい・・」
ベットに身を沈めながらもヒロさんは俺の首に巻きつけた両腕を離そうとしない。
本人は疲れから完全に眠っているというのに、夢うつつ状態で俺にしがみ付いているのだ。
素面だったらまず有り得ない行動も今だけは現実に起きていて、俺はずっとこのままでもいいな・・・と、思う。

しかし、抱きつかれたままで一夜を過ごすにはちょっと辛いので、ヒロさんの両手をやんわりと解いてシーツの上に沈める。

「や・・・・ぁ・・・」
「はいはい。ごめんなさい。ヒロさん。」
抱きつくものを無くしたヒロさんから抗議の声が上がるのもお見通しだ。

だから俺も間髪入れずにベットに横になってヒロさんに添え寝して腕を差し出す。

「・・・ん、ぅんっ・・・」
腕の感触をいち早く発見したヒロさんはもぞもぞと動かして俺の腕に頭を乗せてくる。
俗に言う『腕枕』なのだが、これがヒロさん自ら寄ってきて安心したように俺の腕の上で眠るのだから嬉しくてしょうがない。

男にしては細すぎる肢体を全てオレに預けて、まるで巣穴で眠る子リスみたいに身を丸めているヒロさんを見ていると、一人にしてごめんね、と何度も心の中で謝ってしまう。

寂しかった?

なんて、聞いても答えてはくれないだろうけど・・・

「お疲れ様、ヒロさん。ちょっと無理させたかな?」
「・・・ん・・・」
仕事から帰るや否や玄関で愛を営んでしまい、ヒロさんには少し負担をかけたかも知れない。

深い睡眠を貪るヒロさんのくうくうと言う寝息と、汗ばんで張り付いた前髪が疲労を訴えている。
ヒロさんの前髪を手で何度も梳きながら、自分にも激しい睡魔が襲ってくるけど眠るのが勿体無い。

このまま眠らずにヒロさんをいつまでも感じていたくて、鉛のように重い目蓋と戦っていた時だった。


「のわ・・・んっ、のど・・かわいた・・」
「え!?あ、ああ・・・喉ですか?」
額を俺の腕に押し付けて駄々を捏ねる子供みたいにヒロさんは喉の渇きを訴え始めた。

腕枕は外さないっ!くらいの勢いでヒロさんが寝ているので俺は仕方なく手の届く範囲にあったはずの鞄を探した。

手を伸ばせば幸いにもベット脇のサイドテーブルに鞄があったので、俺はそこから飲みかけだったお茶のペットボトルを発見する。

「みず・・・ぅ・・・の・・わきぃ・・」
「はい。ヒロさん。お茶をあげますから口を開いてて下さいね。」
腕枕の手はそのままに、残る片手でヒロさんの頬を突付いて口を開けさせると、俺はペットボトルのお茶を口に含んだ。

この場合、口移しで飲ませるのは当然。

ヒロさんだって、口移しで飲まされるのを分かっているらしく上手に流れ込んでくるお茶を嚥下してくれた。


「美味しかったですか?ヒロさん・・」
「んっ、おい・・・し・・・」
濡れた唇を指の腹で拭ってやるとヒロさんが僅かに微笑んでくれた。

「さぁ・・・もう少し眠りましょうか?」
「・・・・ぅん・・・・」
素直に返事を返してからヒロさんは再び俺の腕枕でまどろんでいく。

「おやすみ。」
「・・・・すぅ・・すぅ…・・・」

返って来ない返事の代わりに穏やかなヒロさんの寝息。
それは、何も言わなくても言葉より雄弁に『幸せなんだよ。』って伝えてくれる。

 ふたりなら。
 ふたりだから。

ちゃんと見つけられる『愛してる』の想い。

だから、言葉なんていらない・・・




暗闇の中、手探りで・・・

眠る貴方にKISSをしよう。








ひとまず終了。
この話を持ち越したまま新たな話に突入します。
勿論、裏です。(キリッ!
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ヒロさんを甘やかす野分って素敵だと思いますっ!
この調子でどんどん行ってみよーっ!

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