その他CP

□手探りのKISS
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仕事、仕事、仕事・・・の毎日では、たとえ一つ屋根の下で一緒に暮らしていてもすれ違う事は多々あった。

それは内向的な性格のヒロさんと生活する上では非情に困る事態でもある。

『逢えなくても大丈夫っ』とか、『今度の休みには二人で過ごそうねっ』とか、そんな約束やわがままを押し付けてくれたなら少しは安心も出来るが、ヒロさんにはそれがまったく無い。

なので、久し振りにゆっくりとふたりで過ごせる夜は、大切に大切にしたいと心の底から思える・・・・。





「・・・・お帰りっ。ヒロさん。」
「ひゃあああぁっ!?」
待ちきれなくて玄関で弘樹を待ち構え、ドアを開けた途端に熱い抱擁で抱きしめ出迎える。

当然、そんな事をされた弘樹の方は驚いて心臓がバクバク音を鳴らす。

「ん〜、久し振りのヒロさんの匂いだぁ・・・」
心肺停止の危機が危ぶまれる人を無視して野分はくんかくんかっと鼻先を弘樹の髪に埋めて匂いを嗅いでいる。

人命の危機的状況を理解出来ずに医師なんて目指して大丈夫なのか!?と弘樹は匂いを嗅がれながら野分の将来を心配した。

「おい・・・・野分・・・」
「ん〜…良いにほい・・」
くんか、くんかの野分。

「野分・・・てめ・・・・」
「もうちょっと・・・ヒロさんの匂い全部、俺の肺に詰め込むまで待って下さい。」
んごーっ、と肺一杯に弘樹の香りを周りの空気ごと吸い込もうとした。

「気持ち悪いんじゃっ!!」
「おごっ!?」

ピョンッ、と床を蹴って弘樹の身体が跳ね上がり、そのまま野分の顎に頭突きを喰らわす。
この場合、弘樹の脳天も痛いが野分の顎も痛い。
いわゆる痛み分けとなるが、精神的に大ダメージを受けるのは野分の方なので軍配は弘樹に上がる。


しかし、そんな過度の愛情表現にもすっかり慣れっこの野分はすぐに復活してしまうし、転んでもタダでは起きない。
むしろ、このまま弘樹と共に寝転ぶ気が満々だ。

「じゃあ、俺の肺がヒロさんの匂いで一杯になったお返しに、今度はヒロさんの身体のナカを俺で一杯にしてあげます。」

「〜〜〜〜〜〜!!!!」

囁かれる言葉の内容の卑猥さにさすがの弘樹も言い返せない。
固まる弘樹の身体を意図も容易く押し倒し、野分は二コリと優しげに微笑む。

「ちょちょちょっ・・・ちょっと待てぃっ!!野分っ、此処、どこだと思って・・・」
「はい?玄関ですね。」
「分かってんなら退けっ!玄関先で発情すんじゃねぇ!」
「やだなぁ、ヒロさん・・・俺は玄関と言わず、ヒロさんが居る場所なら何処でだって発情しますよ?」
「何の自慢だっ!?」
ぎゃあぎゃあと戯れるようなじゃれあいの中、大柄な野分に圧し掛かられて、小柄な弘樹は瞬く間に組み敷かれてしまう。

こうなれば、罵声が嬌声に変わるのは時間の問題。


形だけの抵抗をする弘樹の両手を片手だけで一つにまとめて頭上に拘束し、もう片手でシャツの裾をたくし上げる。

「・・・ぁ・・・ん・・っ」
忍ばせた野分の手が、弘樹の胸の尖りに達した事を弘樹の甘い声が知らしめた。
無機質で冷たい玄関の壁に弘樹の儚い声はやけに大きく響いて・・・

「背中・・・痛くなるから四つん這いになりましょか?」
「ふっ・・・・は・・ぁ・・・でも・・膝・・」
床の上で行為に及んでは背中が痛いだろうと野分が気遣って弘樹を四つん這いにさせるが、それではそれで今度は膝が痛くなりそうだ。

「大丈夫ですよ。ズボンも途中までしか脱がせませんし、俺が腰をしっかり掴んで支えてますから・・・ヒロさんは余計な力を抜いてれば何処にも負担がかかりません。」
「や・・こんな、トコで・・・こんな・・・カッコ・・・ん、んぁ・・・」
「それも心配しないで・・・ここには誰も居ません」
やんわりと弘樹をたしなめ、野分はズボンを脱がしにかかる。
弘樹の膝を痛めないように、ズボンは膝の所までしか脱がさなかった。
尻だけを剥かれて、突き出す格好に弘樹は耐え切れず抗うが、ズボンが足にまとわりついて思うように動けなかった。

膝を痛めないようにとか言ってるが、もしかして、これも計算の内か?と弘樹は疑う。

「くすっ、どうしました?何かお困りですか?ヒロさん・・・注射を嫌がる子供みたいにジタバタしてますよ。」
「おっ、お困りって・・・この・・・ぬけぬけとぉ・・・あっあ・・・そこっ、まだ・・だめ・・・っ」
四つん這いに這わされた背中の上に野分の含み笑いと熱い体温を感じて戸惑う弘樹の股間に伸びてくるのは大きな大きな野分の掌。

「ココを勃たせて、先っぽからヌルヌルの液を出してるイケナイ子には先生のお注射を打ってあげましょうね?」
「ひゃあぁっやめいぃぃ・・・野分が言うとリアル過ぎるっっ!!」
なまじ医者の卵の野分だからお医者さんごっこも、ごっこではなくなってしまう。

すっかり勃起して先走りを垂らす性器を背後からクチクチと弄られて、弘樹は観念したように上半身を床に伏せてしまった。

尻だけを高く上げる姿に弘樹は羞恥心で一杯だったが、ここまで煽られて快楽の虜にさせられると、もう自分ではどうしようもない。

此処が玄関先であろうとも。
尻だけをひん剥かれた情けない格好でも。
どうぞ。と言わんばかりにアヌスを晒していようとも。

そのすべてが野分の望んでいる事なら・・・


「・・・ぁ・・のわ・・き・・・はやく・・・俺の・・・いっぱいに、して・・・お前で・・・はあぁ・・・っ」

疼く体は、逢えなかった時間を示している。
逢えなくて、逢いたくて。
それが長ければ長いほど、心にぽっかり穴が開いていく。

こんな空虚な寂しい空間を埋めてくれるのは、やっと逢えたっていう確かな感覚だけ。

心の隙間を、同じ切ない思いで満たして。
身体の空洞を、熱い楔で埋めて。

それだけで辛かった事はみんな忘れて幸せになれるから・・・・

それは、とても簡単な魔法。


「ずっと、ヒロさんの事ばかり考えてました・・・逢いたかったです・・・」

-----そんな言葉だけで心が満たされる。

 偽りの無い、言葉だから。

後孔の入り口に宛がわれる亀頭の先端を感じて、弘樹の蕾が従順に綻び野分自身を迎え入れる。

「野分・・野・・・わき・・・俺も・・お・・れ・・ぁあ・・」
紡ぐ筈の言葉は意味の無いすすり泣きに代わってしまう。


「ヒロさん・・・大好きですよ。だから・・・ひとつになりましょう・・・」

------離れているのが不思議なくらい、二人はひとつになれる。

 お互いが同じ想いで出来ているから。

「やああぁっ・・・のわ・・・きぃっ・・・ふか・・あああぁっ」
伝えたい想いは、言葉にならず甘い喘ぎ声になるけれど、きっと、野分には伝わっている。

だって、こんなにも、熱いから。
ぬくもりも・・・想いも・・・・


ドアからの隙間風が吹き抜けて、熱くなり過ぎた二人の身体の熱を心地よく攫っていった。





*****
つづく。


→続くんだな、これが。

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