『奥の細道』

□奥の細道J
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夕方になっても日中の日光によって熱せられた路面の照り返しに、忍は自分の体力が奪われていくのを感じていた。

気を抜けば手にしたボストンバックを落としそうなので、忍はバックを抱きかかえるようにして胸に抱き、まだ遠い家路を目指した。





『足がもつれてフラフラじゃないか。そんなので一人で帰れるのか?車で家まで送ってやるぞ?』

角の家を出る忍に、角はいかにも体が辛い事を知っているのだと言わんばかりの含み笑いで自分を見送っていた・・・

体が辛いといえば辛い。
でも、それ以上に精神的に打ちのめされた忍は、嫌でも角の笑顔と共に先程までの行為も思い出した。



藤岡が運転する車で温泉地から角の家まで帰って来た忍は、そこで藤岡達と別れ、角の所有する一軒家に連れて行かれた。

本当ならすぐにでも自宅に帰りたかった忍だが、『体の最終チェックをしてやるよ』という角の命令に従い衣服を脱いだ。

体に痕がついていないかどうか見てやるなんてのは口実で、角はまた暫らく犯せないであろう忍の体をまさぐりたいだけなのだ。

『角さん・・・も・・見ないで、下さい・・』
いやらしい手つきで忍の素肌に掌を這わせ、舐め回すように体を見られる事に耐え切れなくなった忍は身をくねらせて角から逃げようとした。

『じゃ、最後に一番大事な所を見てあげるから足を開いて・・・恥ずかしがらなくていいよ、これはただの確認だから・・』

『ん・・・・でも、顔・・・近すぎですっ、そんなにジッと見なくても・・』

自ら開いた忍の足に角が手をかけ更に大きく開かせると、股間に息がかかるくらい近くにまで顔を寄せて忍の秘部をいつまでも覗き込んでいた。

『綺麗だな・・・忍の後孔・・あれだけ男を咥えてしゃぶりついてたのにさぁ・・・襞のシワなんて限界まで引きつって伸び切ってたんだぜ?それなのに裂けもしてないし腫れも治まって窄んでる・・・何にも知らない処女の孔だな、これは・・・』

『ああ・・・触らないでっ・・見るだけって・・・見るだけって言ったのに・・・ひゃあぁんっ!』

うっとりと呟いた角が指の腹で忍の襞を一枚一枚捲るように弄るので、不覚にも忍はそれだけで勝手にペニスを勃起させてしまい、結局そのまま角に手淫で射精させられた。





-----早く帰りたい。

ただそれだけを切に願い忍は重い足を引き摺るようにして前へと進む。

------宮城に逢いたい。

宮城に嘘をついている自分に宮城に逢う資格なんてないかも知れなくても、今は無性に宮城の顔をが見たかった。


『今から帰る』というメールを送信していたせいか、いつもは用心でちゃんと閉めている玄関の扉が開いていて、忍は自分の部屋には帰らないで宮城の部屋に足を踏み入れた。

「・・・宮城?」
リビングに入ると宮城の姿が無く、再度名前を呼ぶとキッチンから宮城が顔を出した。

「おお、お帰り。案外早かったな、今お茶入れてやるから座ってろ。」
ぶっきらぼうだけど宮城はいつも自分に何かと世話を焼いてくれる。

子供扱いされてるといえばそれまでだけど、疲れきった今の忍にとって宮城の甲斐甲斐しさは嬉しかった。


「外は暑かっただろ?・・って、あれ?お前・・顔がやけに赤いな。熱でもあるのか?」
両手に持ったグラスをローテーブルに置いた宮城は、ソファーに深く座り込む忍の顔が上気して赤い事に懸念する。

「あ、熱なんかじゃない・・山登りしたから日に焼けたんだ・・腕もほら、赤いだろ?」
自分の額に触れて来ようとする宮城の手から、不自然に思われないよう忍は日焼けした腕を突き出して逃げた。

正直、体はだるいし寒気もする。
宮城の言う通り自分には熱があるのだと自覚していたが宮城には悟られたくない。

自分の体調の悪さを誤魔化そうと忍はお茶を啜った。

「聞かなかったけど、お前って何のサークル入ってるんだ?」

「・・・・山登り同好会・・・」

宮城に尋ねられて適当な名前を返す。

「山登りって・・・インドア派のお前がよくそんな同好会に入ったな。何人くらいで活動してるんだ?」
勉強の事ならよく尋ねられるが、宮城は普段からプライベートな事は質問しない。

その宮城がソファーから身を乗り出すようにして忍と向き合い、『何処に行った?』『男ばかりなのか?』『危険な事とかしてないだろうな?』などと人が変わったように問い詰めてきた。

忍はその一つ一つに嘘を付きながら聞かれた事には全て答えた。



「宮城、あのさ・・・荷物置きに帰りたい。」
あまりの質問攻めに忍はいい加減うんざりして部屋に帰ると言って話を中断し、席を立った。

「そうだな、一度帰ってからまたこっちに来るか?」
いつもなら暗黙の了解で好きにさせてくれるのに、今日に限って宮城は忍が此処に帰ってくるか否かを確認する。

「・・・・分かんない。」
宮城の予想は『来てやるに決まってんだろ!?』と目を吊り上げて悪態をつく忍だった。

だが、予想を裏切り、忍は宮城に背を向けたまま曖昧な答えを返した。


「忍、お前なんか変だぞ?」
忍を追いかけ玄関まで来た宮城は思わず忍の手首を掴み、強引に自分の方を向かせる。


掴んだ忍の手首は折れそうなほど細く感じられ、宮城はその儚さに狼狽して思わず手を離してしまった。


 「宮城。」

慌てる宮城に対して、振り返った忍は落ち着いていて静かに宮城の名を呟いた。

「あ、何だ?忍?」

焦りの色を隠せない宮城に忍が微笑んでみせた。

羽のような、ふわりとした笑顔で・・・


 「宮城、好きになってごめん。」


真綿に包まれたような言葉が宮城の耳に届く。

「え!?何言って・・・おい!?忍!!」
忍の言葉が聞こえなかった訳じゃなく、言葉の意味が理解出来なくて、宮城は忍を引きとめようとしたが忍は躊躇いもせずドアを開けて出て行ってしまった。
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