ロマンチカ
□短編・拍手文
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『相川さんは見た。』
その日、相川は原稿の進行具合をチェックするべく宇佐見のマンションへと訪れた。
豪華なエントランスを抜け、最上階までエレベーターで乗り付ければ、後はいつもどおり勝手知ったる我が家の如く、挨拶も無しに足を踏み入れた。
『・・・ダメ・・・ウサギさん、これ以上は・・・ぁ・・・っ』
リビングへと繋がる扉を隔てた向こうから、艶かしい美咲の声が聞こえてきて、相川は思わず廊下で立ち止まる。
そして、『これは、もしや!?』と察知した相川は、息を潜めて聞き耳を立てるのだった。
『かまわないよ・・・美咲、もっと奥まで・・・入れて』
『でも、もう、すごく奥まで入ってる感じがする・・・あ、狭い・・・大丈夫なの?ウサギさん・・・』
会話だけを聞きながら、二人は今まさに『にゃんにゃん』の最中だと思われたが、状況が違う事に相川は驚愕する。
―――これって、美咲クンが『攻め』で、宇佐見先生が『受け』!?
宇佐見と美咲がイチャついてる濡れ場など見慣れている相川だが、受け・攻めの逆転には驚きと興奮を隠せない。
―――やだ。これって、宇佐見先生のバックバージン喪失?そんでもって美咲クンがついに『筆下ろし』の瞬間ってこと?そうよね?そうなのね!!
鼻息も荒く、扉にかじりついてリビングの様子を窺がえば、『ウサギさん・・・痛いなら・・・言って・・俺、やめるから』『平気だ、美咲・・・動かせ・・・いい、から』という二人の声が聞こえて来る。
そんな会話を盗み聞きしていた相川だが、ついに聞くだけでは我慢できず、その目で禁断の交わりを見ようと扉を開けた。
そこには、宇佐見を抱く美咲の姿が――
――美咲に抱かれる宇佐見の姿が!!
「なんだ、相川、来てたのか?」
「あ、ウサギさんっ!動いちゃダメだよ!『耳掻き』まだ途中なんだから!」
―――そこには、ソファーの上で美咲に『耳掻き』をしてもらっている宇佐見の姿があった。
【おしまい】