雪名×木佐
□three love storyU
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取り留めの無い恋の話は尽きる事がなくて、それでなくても今まで誰にも言えなかった秘密の想いを誰かと語り合えるのが嬉しくて、美咲と忍はいつまでも木佐を離さずにいた。
それを見かねた雪名が助け舟を出す。
コンビニで買ってきた下着と雪名のシャツを渡し、二人にシャワーを浴びるように勧めると、二人は遠慮しながらも雪名の好意に甘えた。
そろそろ深夜にもなろうかという時間に『帰れ』と言うのは、この二人の容姿と浮世離れした性格からして危険極まりない。
かと言って帰さずに泊まれとも誘ってやれない。
詳しくは聞かないが、美咲も忍も本当は帰りたがっているくせに、そのきっかけが掴めないまま思い悩んでいるのだ。
そんな二人の心情を理解しているからこそ、雪名はあえて『帰れ』とも『帰らなくてもいい』とも言わないし、木佐も二人の相談にはきちんと答え続けていた。
それを知ってか知らずか、二人を取り巻く会話はますますきわどいものとなり・・・
「木佐さんって、エッチの時の体位は何が好きですか?」
「・・・ぶっ!!」
敷き詰めた布団の上で雑魚寝をしていれば、ごそごそとにじり寄って来た美咲が木佐にそんな事を尋ねた。
「あー、そういう美咲はどんな体位が好きなんだよ?」
同じように近寄って来た忍が胸に枕を抱え込み、興味津々で聞き返す。
布団の上で寝そべりながら木佐を挟んで美咲と忍が並ぶと、女の子のパジャマパーティーのようだ。
「ん〜・・・そうだなぁ・・背面座位ってヤツかな・・・ワンワンスタイルで一発抜いてから繋がったまま上半身を起されて膝の上に座らされるのが好き。射精しちゃってビクビクしてる後ろからうなじ舐められたりするとゾクゾクして気持ちいいんだよね。」
「ああ、分かる・・・それ!体位が変わる時って突き刺さってるペニスの角度も変わるから『うひゃっ!』ってなるよなー」
「ははっ、忍もそうなるんだ?しかもお尻の中に精液入ったまんまだから『グチャッ』とか鳴っちゃって、すげー卑猥なんだよ!」
赤裸々なセックス事情を恥ずかしげも無く口に出来るのは、若気の至りなのかと呆れつつ木佐は真っ赤な顔して聞いている。
「でもさぁ、あの騎乗位ってヤツは辛いんだよなぁ・・・宮城がその体位が好きでよく『忍、乗れ』とか言って俺を上に乗せたがるんだけど、俺としては上になったから自分のペースで動かしたいのに宮城はすぐに下から俺を突き上げて来るんだよ・・・・俺、体重が軽いからそんな事されるとロデオ・マシーンに乗ってるみたいに揺さぶられて大変・・・」
「そうそう、俺だって騎乗位するとそんな感じだよ。なんか、遊ばれてるっていうか、体が小さいのを馬鹿にされてるっていう気がするよなっ!そりゃ突き上げてる方は楽しいかもしんないけど、嵌められてる俺達からすれば奥まで突かれてヒイヒイ言わされるんだから!」
受け入れる方の苦痛を熱く語り合ってから、美咲と忍は雪名を睨んだ。
「・・・・なんで怒りの矛先が俺になるのかな?」
「だって雪名は『突く方』だろ?この部屋では雪名だけが攻め込む人だから代表で恨まれてて。」
とんだとばっちりを受けて雪名が困っている姿を見て、木佐は腹を抱えて笑った。
「ひどいなぁ、木佐さんまで笑うなんて・・・じゃあ、次は木佐さんの好きな体位を教えて下さいよ。」
「ヘ!?俺も!?」
クスクスと笑う木佐の頭を撫で回して、雪名が話を降ってくる。
優しげな瞳に見つめられて、どうしても言わなきゃいけない雰囲気になり、木佐がゴニョゴニョと口ごもりつつ・・『正常位』、と答えた。
「おーっ、さすが師匠は王道の『正常位』が好みなんですね!」
「俺もその体位好き。あんまり奥まで挿らないから負担も少ないし、相手の顔が見れるからいいよな。」
木佐の一言に同意する二人がキャッキャッ言いながらその辺の事情を惚気合う。
「ふ〜ん、木佐さんは正常位が好きなんですね。」
「な・・・なんだよ!雪名だっていっつも正常位でヤりたがるじゃねぇか!」
ニヤニヤと人の悪い笑みで迫って来る雪名に木佐はオドオドしながらも虚勢を張る。
「ええ、そうですね。正常位で木佐さんと見つめ合ってスルのはとても気持ちいいですから・・・でも、その後、舌を絡ませ合いながら起き上がって来る木佐さんが色っぽくて好きなんです・・・正常位で始めても、結局最後は『対面座位』でフィニッシュを迎えますよね?俺達って・・・」
「ぎゃあああっ!!雪名!何べらべらしゃべってんだよ!」
さっきまでの強気な姿勢も何処へやらで・・・木佐はこれ以上雪名にしゃべらせてはなるものかと口を押さえ込みにいった。
そんなふうにじゃれあう雪名と木佐を横目で見つつ、美咲が忍に耳打ちした。
「正常位からキスをしながら対面座位だって・・・」
「すげ、テクニックだな・・・上も下も繋がったままで体位を変えるのか・・・」
お互い年上の恋人を持つ二人はいつも主導権を相手に握られていて自分の思うようには出来ない。
もっとああして欲しいとか、こうして欲しいとかはセックスの最中に甘える事で気持ち良くはして貰えるが、それらは与えられるばかりなので気が引けるのも事実。
雪名と木佐みたいに、快感を与え合い、奪い合うような対等なエッチがしてみたいと思うのだが、経験の浅さからいってそんなのは夢のまた夢だった。
「やっぱさぁ・・・夫婦生活において『夜のオツトメ』は大切だよな・・・俺、宮城を満足させてあげれてるのかなぁ・・・」
「・・・夫婦生活って、忍の発想がすごい・・・でも、まぁ、体を求められるって事は愛されてるって事に変わりないもんな。」
口論の始まっている雪名と木佐を放っておいて、忍は枕を抱きしめると深い溜息をついた。
時間はもう深夜1時。
怒りに任せて家を飛び出した自分に恋人からの電話が鳴らなくて、待ちぼうけの寂しさに胸が苦しい。
怒っているのかな?
勝手に家を飛び出した事。
呆れられているのかな?
些細な事で拗ねる自分に。
・・・もう、探しには来てくれないのかな?
なんて、自分勝手に期待なんてしたりして・・・
「・・・忍、寝ちゃった?」
抱え込んだ枕に顔を埋め、微動だにしなくなった忍を見て、美咲が声をかけたけど返事はない。
「おやすみ・・・」
泣いているかも知れないような雰囲気の忍にそれ以上何も言えなくて、美咲もまた、震える肩を誤魔化すために枕を抱きしめた。
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