雪名×木佐

□three love storyT
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「ほら!食べなさい!忍!」

「ん〜〜〜!!」

箸で摘んだカボチャの煮物を宮城は忍の固く閉じた口に押し当てている。

同棲を始めてここ数日、忍の好き嫌いの多さを知り、宮城がこれでは駄目だと野菜嫌い克服に躍起になっていた。

しかし敵(忍)も去ることながら宮城から与えられる野菜を決して口にしようとしない。

業を煮やした宮城は箸をテーブルに置き、上目使いで自分を見上げている忍の頭をよしよしと撫でてから優しく問いかける。

「・・・忍、俺さぁ・・・子供は男の子が欲しい。だからさ、お前が野菜食えば男の子が産まれやすいんだ。」

「え?マジ!?」

最後の手段の説得に、宮城は男女の産み分け方を持ち出す。

「そうそう。お前が草食で俺が肉食だと男の子が産まれる確率が高くなる・・・男の子を授かるためにもだな、忍。野菜食え。」

「・・・・宮城と俺の・・子供・・?」

勉強は出来て頭は良いが、忍は一般常識に欠けていて騙されやすい。

まんまと宮城の策略に堕ちた忍は口を開きかけるが・・・・


「うわあああん!!宮城の馬鹿あああ!!男の赤ちゃんが欲しいんなら俺を感じさせればいいんじゃねぇか!ついでに言うなら深く挿入して射精すれば男の子が出来やすいんだよ!もっと言わせて貰えば禁欲後にエッチして濃度の濃い精子だと男の子が産まれやすいんだよおおおぉ!!」

「ああ!?お前、やけに詳しいじゃねぇか!?」

どこぞの熱血野球漫画の親父の如く、ちゃぶ台をひっくり返すと『禁欲してろ馬鹿!!』と捨て台詞を残して忍は部屋を出て行った。

しかし、最後まで『男同士で子供が出来るか!』とは言わないのは天然の成せる技だろう。





「ほら、美咲・・・ちゃんと足を開きなさい。」

「ん〜〜〜〜〜!!」

ぬいぐるみや玩具の散乱するベットの上で、美咲は固く閉じた足を広げられまいと力を込めていた。

そして、秋彦はその美咲の足を開かせようと躍起になっている。

「先っぽをちょっと挿れるだけだって言ってるだろ?いい子だから足を開いて・・」

「さ・・・先っぽって何だよ!?全部挿れようが先っぽだけだろうがエッチはエッチじゃねぇか!」

精一杯の虚勢を張る美咲はもうすでに裸にされていて、残る砦は力を込めて閉じた素足だけ。

「いや、それがな・・・先っぽだけの挿入で射精すると女の子が産まれる確率が高いらしい・・・俺に似た女の子って見てみたいと思わないか?」

どうやら今回の秋彦の趣向は『自分似の女の子が見たいから美咲に産ませてみよう』らしい・・・

勿論こんな馬鹿げた妄想が出来るのは秋彦が締め切りに追われてまともな思考回路をしていないからなのだが、それに付き合わされる美咲は堪ったものではない。

「さぁ、美咲。先っぽだけ挿れさせろ・・・」

「いい加減にしろ!!俺はウサギさんの性欲処理の道具じゃねーんだ!!」

体格の違いがあるので普段なら押し退ける事は出来ないが、疲労困憊している秋彦なら華奢な美咲でも蹴り飛ばす事に成功し、美咲は秋彦の魔の手から抜け出せた。

「ウサギさんなんてもう知らない!実家に帰らせていただきます!!」

昼間にテレビで見ていた『嫁、姑バトル』の延長で、美咲は家を出る嫁さんよろしく状態のまま部屋を飛び出してしまう。


・・・実家って何処だ?
兄ちゃん家か?などと悩みながら・・・





「雪名クン、さっきから何見てるの?」

取り巻きの女の子に声をかけられ、雪名は視線を女の子に戻す。

バイト先の本屋『まりも』にて接客中の雪名は先程から売り場の一角が気になって仕方がないのだ。

それは、『子育て、出産コーナー』に若い男の子が二人・・・

どちらも結婚してる風には見えないし、出産には縁遠い存在なのだが、長時間に渡り居座っている。

立ち読みしている訳でもないし、万引きなどする感じでもないので雪名はそっとしておいたがその二人の存在は何処となく残った。



遅番だった雪名が店じまいを終えて外に出た頃は夜の11時を回っていた。

溜息混じりに裏道から大通りに出ると・・

さっきまで本屋にいた男の子二人が並んでガードレールに腰掛けている。

知り合い同志ではないようなのでお互い距離を開き一人は夜空を、一人は走る車の光を目で追っている・・・という状態だ。

それならそれで何をしていようが構わないのだが、場所が悪い。

ここは有名なナンパ・スポット。

男だろうが女だろうが気紛れに一夜の相手を求めて良からぬ奴らが徘徊している物騒な場所に、こんないかにも世間知らずな幼い風貌の二人が居ればいいカモにされるのがおちだ。

実際にふたりを遠巻きに見ている男がちらほらと回りに現れている。


「・・・なんだかなぁ・・木佐さんといい、この子達といい・・・無自覚無意識に男を誘っちゃう子ってもっと罪の意識を持って欲しいよ・・」

呆れながらも魔の手にかかりかけてる男の子二人を放って置けなくて、雪名は足早にガードレールの方に歩み寄るのだった。
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