Novel
□君を、想う
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《 1.過ぎた日々を、(想う) 》
「リリー・・・。待って、僕は・・・」
そこでふと目が覚める。
―――忌々しいあの時の記憶。
夢の中でどんなに待って、と言っても彼女は止まってくれない。
―――現実でもそうだったように、
彼女はどこかへ行ってしまった。そして、逝ってしまった。
すまなかった。何度謝っても許されない枷。嗚呼・・・。
君が居なくなった世界にはもう用はない。なのに、僕はまだ生きている。
君の残したただ一人を守るために、
我輩、とどんなに取り繕っても、どんなに尊大な態度で居ようとも、
嗚呼・・・僕はこんなにも脆い。
あの一言さえなかったら・・・。
僕は今も、君と笑いあえているだろうか。
ねぇ?教えてくれないか。
・・・お願いだから。
《 2.痛いほどに、 》
拝啓、君へ。
今日、君の残した、あの子に会いました。
外見も性格も憎いあいつにそっくりだった。
けれども、その緑の目と心の奥は君に似ていた。
でも・・・どうしても、どうしてもあの子に会ってしまうとあの時が思い浮かんでしまうんだ。
でも、そうしてしまうと君を悲しませてしまうことだって、分かっているんだ。
でも、僕は―――
―――――どんなに憎まれても良い。君の残したあの子を守れれば、それで良いんだ。
(痛いほどに、君を思う。)
《 3.変わらぬ愛を、 》
「永久に。」
――――牝鹿の守護霊。
君を想っている僕の気持ちのすべて。
他の奴なんてどうでもいいんだ。
ただ・・・――――
――――唯、君に、 ―――
――――すべては、君のため、
《 4.夜空を見上げ、 》
何年経っても愛している君へ。
僕はまた罪を犯します。
今夜、あの子が大好きで、信用している彼を殺します。
僕が殺したところをあの子が見たら、聞いたら、きっと殺しにかかるでしょう。
彼から命令されたのです。だから殺します。
たとえこの両手が血に染まっても良いんです。
君に会えるなら。
でも、僕はもう君には会えないんだ。
―――だって、また罪を犯すのだから、
あの時、―――最後まで聞いていれば、
・・・こんなことにはならなかったかもしれないのに、
「リリー、」
こんな僕でもまた、
―――抱きしめてくれないか。
「セブルス、頼む。」
『アバダ・ケタブラ』
―――震えた声。
――――僕はまた、
(闇の世界に)(行ってきます。)
《 5.絶えず君を、 》
嗚呼・・・僕はもう終わりなのか、
体中が痛くて、動けない。
リリー。
あの子は、もう大丈夫だ。
きっと、帝王をやっつけられる。
けれど・・・
せめて彼からの伝言を伝えなくては
首からの出血が酷い。抑えたところで意味がないのに、
・・・・やはり、あの子は、君の子だ。
「これを・・・取れ・・・・」
それを憂いの篩へ、と付け加え、僕の仕事は終わった。
――――終わったんだ。
すう、と意識が無くなっていく、あの子の緑の目がやけにはっきり見える。
けれども、それもだんだん薄くなる。
待って・・・行かないで・・・。
リリー・・・待って。
「僕を・・・・・・見て・・・・・・くれ・・・・。」
あの、緑の目と目が合う。
リリー、やっと君の目が見れた。
嗚呼・・・
やっと終われる。
最期に君が見れたから、
僕にもう光なんて、――――
―――いらない。
(絶えず君を、)
(愛してる。)