Dear

□5月5日
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「お二人とも、できましたよ」


仁王自慢のテラスに両手で飯台を持った比呂がやってきた。既に春乃といた仁王は、久しぶりに見たエプロン姿に見惚れていた。


(女医さんな比呂もええけど、家庭的な比呂もええのう。俺があげたパステルピンクのエプロンも、花柄のピンも可愛ぇ…。今日久々に駄目かな、せっかくどっちも明日休みとったんやし…)


「どうしたんですか雅治くん。頬が桜でんぶみたいですよ」
「ママほおっておいてよかよ。じぶんのせかいにいるだけやけん」
「はぁ」


白いテラステーブルに頬杖をつきながら、呆れたように話す春乃。比呂は何故だか分からないようで、気にせずに手際よく手巻き寿司の具材を運んでくる。


「春乃さん、それ…」
「あぁ…そいつからおしえてもらったんよ。てさきはきようだもんね」
「このような細かいことは、私よりも得意ですからねぇ。お上手ですよ、春乃さん」
「…ありがと」


仁王の手よりも柔らかい彼女の手に撫でられるのが、春乃は大好きだった。どうやら父親よりも母親らしい。口許を緩ませ、頬をほんのりと染めていた。
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