Dear

□幸せの香り
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たまにはこんなのも
悪くないかのう







「めはこれでいいのかな?」
「のりよりましでしょ。ほら、ぎんぱつできた!」
「わあ、はるちゃんじょうず!くちこんなかんじ?」
「えーもっとピヨっぽくしよう。プリピヨせいじんじゃき!」


キッチンで何やらこそこそやっている双子を、仁王が盗み見ようとするのを、比呂がやんわりと嗜める。


「何じゃこそこそしおって…」
「駄目ですよ、雅治くん。二人とも君を驚かせたいのですよ?」
「…おまんのときは、そうやなかった」
「十分驚きましたし、とても嬉しかったですよ。しかし寝てしまうとは、最後の詰めが甘かったのですね」
「プリ…」
「今日の私は見張り役ですから。おとなしくしていてくださいね」


むすっとした仁王を苦笑いで見つめながら、比呂は新しい紅茶を入れる。紅茶を注いだ瞬間、ふわりと甘い香りが広がった。


「林檎…」
「いい香りでしょう?アップルティーです。この前の学会で、父の知り合いから頂きまして…」


何気ない様子で比呂は手を動かしながら話したが、仁王はそうは思わなかった。眉と耳が器用にぴくりと動く。


「比呂」
「何ですか?」
「その知り合いって…男?」
「ええ。父の古くからの友人で…雅治くん!?」


彼女がティーポットを硝子のテーブルに置いたのを見計らって、仁王は彼女の身体をソファーへ持ち上げ、自分の足の間に置いて後ろから抱き締める。
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