Dear

□5月5日
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こどもの成長って
微笑ましいですね







「やねよーりたーかーいこいのーぼーりー」


庭でくるくる回りながら歌っているのは、双子の片方である春乃だ。青空の中では、鯉のぼりがゆらゆらと舞っているのに興奮ぎみらしい。


「なんじゃこんなにはしゃぎおって。残念ながら、お前さんのお祭りじゃあなかよ」
「わかってるよ、そんくらい。さんがつにしてもらったもん」
「おうおう分かっとったかマセガキよ」
「うっさいぎんぱつめ」


到底親子の会話とは思えない。父親はにやりと娘を見下しているし、娘は娘で軽く睨み付けている。


「そんな目ぇしとったら、あれ教えてやらんぞ」
「ぐっ…」
「ほれどうした。「お願いします」は?」
「…おねがいします」


よしよくできた、と彼女の頭を撫でる仁王は、一応父親の顔をしており、春乃は悔しそうに頬を染めながら、それを享受していたのだった。そして仁王は傍らにあった新聞紙に手を伸ばし、ぴらぴらと一枚一枚に分け始めた。
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