短編&中編

□鬼人死す(短編)
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忘却の記憶(SKE長編)の連動短編小説第3弾[古川愛李の章]




愛李side




…あの時の恐怖は今でも忘れもしない…




…今でも目を閉じれば時々思い出す時がある…




今から6年前…私は名古屋で開催していたコミケに参加していた。




最初は普段通り凄く楽しかった…でも…楽しかった時間が覆り…辺りに悲鳴が飛び交う…




…何故?…それは…会場で…爆発が起こったから…




私は必至で逃げ他の人が集まっている駐車場に辿り着く…




そして帰りに像の前で会おうと約束していた友達に会いに行った…




すると像の前で呆然としていた友人の1人である優奈が居た…




古川「…優奈!…」


優奈「愛李!?愛李は無事だったんだね!?」


古川「…何とかね…でもびっくりだよ…まさかこんな事になるとは…って…」




その時私は辺りを見回して友達が1人足りない事に気が付く…それに…




古川「…綾は?…それに…私はってどういう意味?…」




その言葉に優奈の体が強張る…ちょっと…まさか…




優奈「…避難勧告が出てすぐ私達は出口付近に居たせいか誰よりも早くここに来た…」


古川「…じゃあ…何で居ないの?…」


優奈「…でも…綾は…すぐ更衣室へと走って行ったの…」


古川「…はぁ!?…」




冗談じゃない!?何考えてるのよ!?更衣室は火元が近いとされてる場所なのに!?




古川「何で止めなかったの!?」


優奈「勿論止めたよ!?」


古川「じゃあなんで!?」


優奈「"鞄"取りに行ったんだよ!?愛李なら判るでしょ!?」


古川「っ!?」




…鞄の中にいつもある物…それは…お婆ちゃんの形見…




古川「…居なくなってどれ位経った?」


優奈「…えっと…20分くらい…」




私は辺りを見回す…見た感じ会場に居たほとんどの人は外に出ていると判る…




なのに一向に綾は来ない…なら考えられる可能性が一番高いのは…彼女はまだ中に居る可能性…




…建物に目をやるとそこには黒煙と高く立ち上る炎…




その瞬間私の体が強張る…でも…行くっきゃないよね…




古川「…優奈は消防隊の人のとこに行って中に人が居る事を伝えて…」


優奈「…っ!?…まさか!?…」


古川「…そのまさかだよ…迎えに行く…」


優奈「無茶だよ!?死ぬ気!?」


古川「…そんな気はさらさら無いよ…」


優奈「なら!?」


古川「…でも私は綾を助けたい…やらない後悔より…やって後悔する方を選ぶ!」




そして私は建物に向って走り出した!




後から優奈の叫ぶ声が聞こえる…大丈夫…私には夢があるから死なないよ…




…綾!今行くから待ってなよ!




愛李side終了




宗司side




俺は建物の方を見つめ考え事をしていた




この建物は聖グループが所有するイベント会場




その為どんな事態になろうとも混乱する事無く収束する訓練もいつもやっている




なのに今はどうだ?人は混乱し火も全然鎮火しない…そもそも何故消化システムが作動しない?




そんな事を考えてると簡易テントで作られた消防本部に若い女性の叫び声が木霊する…




すると現場の指揮を取っている当家の消防指令が声を掛けて来た




消防指令「総帥!こちらに居られましたか!」


宗司「何があった!」


消防指令「…実は…」




消防指令の言葉に絶句する…全ての生存者の確認したはずなのに
この建物に2人の生存者がいる可能性が出てきたからだ…




しかも2人は1度外に出た後、更衣室に行ったと言う…




何と言う無茶な事を…この炎を見て臆さ無かったのか?




…俺は…目を閉じ…周囲に氣を展開する…すると…2人分の氣を捕らえた…




宗司「内部図を!」


消防指令「はっ!こちらに!」




地図を広げ氣の位置を確認する…




宗司「…更衣室に1人…もう1人は…この速度ならもう1人も直に更衣室に辿り着くな…」


消防指令「ここに来た女性の言った通りですね…おい!当家の部隊が更衣室に行く事は可能か!」




消防指令が隊員にそう聞くと隊員の顔が曇る…




隊員「…それが…避難路及び出口と火元付近である更衣室付近は瓦礫で遮断されていると内部の隊員から通達が…」


消防指令「…そんな…総帥…如何なさいますか?」




…ふん…聞くまでもないだろうが…




宗司「…我が直接出向く…瓦礫も炎も我なら何とか出来るしな…ただ…」


消防指令「…判ってます…要救助者の治療及び総帥の支援する部隊を1小隊向わせます。」


宗司「判った。宜しく頼む!」


消防指令「御意!…おい!…更衣室に1番近い部隊を更衣室に向かわせろ!」


隊員「了解!」




辺りが慌しく動き出す中、俺は情報を持ってきた女性の下に足を運んだ




宗司「…貴女の友人は必ず我が連れてくるから待ってて欲しい…」




そう話しかけると女性は驚いた表情をする




優奈「…貴方は一体…」


宗司「このイベントのスポンサーでありこの会場の持ち主さ…」


優奈「…えっと…貴方が愛李達を?」


宗司「あぁ。」




女性は唖然としている…何故?…すると消防指令が声を掛けてきた




消防指令「…総帥…その格好で言っても説得力ないですよ…」


宗司「…格好?…あぁ…そりゃそうか…」




そういや普段着だったな俺は…着物着てる人に言われればこうなるのは当たり前か…




消防指令「御嬢さん心配は要りませんよ。何故ならこの方は救出のスペシャリストですから…」


優奈「…スペシャリスト…」


消防指令「…正確には現在この方以外の人では救出は困難なんです…
     ですが安心して下さい…御友人は必ず帰って来ます…そうですよね?」


宗司「あぁ。任せておけ。ただ迎えに行った"馬鹿"は説教するがね…」




そう言って俺は女性に背を向ける…すると…




優奈「宜しく御願いします!ただ助けに行った愛李は良い奴"判ってるさ"…え?…」




きょとんとしている彼女に俺は話し出す…そんな顔すんな…俺はさ…好きなんだよ…




宗司「…このご時勢…ズル"賢い"良い女は山の様に居るが…"馬鹿"で良い女ってのは貴重なのさ…
   良いね…友人の為に命を懸ける…薄情な人間が増える中…こんな"馬鹿"は久し振りだ…個人的には
   大好なんだよ…安心しろ…我が命を捨てても助けて見せる!」




そう叫ぶと俺は迅雷を使い、その場を後にした…そして宗司が姿を消した場所では…




優奈「っ!?消えた!?」


消防指令「正確には消えたのではなく超高速で走って行ったのです…縮地…そう言えば判りますか?」


優奈「…縮地…漫画とかで良く書かれているアレですか?…そんな…そんな事出来る訳が…」


消防指令「…御自分の目が信じられないと?…まぁ気持ちは判りますけどね…さて申し訳ないですが今見た事は忘れて頂きたい…」


優奈「…え?…どういう事ですか?」


消防指令「…正確には総帥が縮地で移動した事を公言しないで欲しい…この縮地は当家に伝わる古の業でしてね…
     世間に知られる訳にはいかないんですよ…理由は判りますか?」


優奈「…現実的に不可能な事が出来る人物…つまり…世間の見世物に…なる?」


消防指令「その通りです。それに総帥は今や世界的にも有名な方…そうなる事は好ましくないのです…」


優奈「判りました。周りには言わないです。」


消防指令「助かります。」




すると隊員が指令に声を掛けた




隊員「指令ちょっと良いですか!」


消防指令「どうした!トラブルか!」


隊員「トラブルと言うほどではないんですが、現在更衣室に向かえる隊は西島隊しか居ないそうです…」


消防指令「…西島消防士指令補の隊か…」


優奈「何か問題があるんですか?」


隊員「西島隊は当隊…聖グループとは無縁の一般の消防隊なんです…っと一般ではないですね…
   少し特殊でして爆発物処理経験者や医療関連の経験者などが揃ってる部隊です。」


消防指令「そして能力があろうとも管轄外の人間は引っ込んでろと現場から追い出す部隊でしてね…」


優奈「…何でそんな人達が首にならないんですか?…」


隊員「性格と素行以外は超優秀な隊ですからね…大会でも常に優勝ですしね…」


消防指令「そういう事です。ただ居ないなら仕方が無い…不本意だが現場に向かわせろ!」


隊員「…宜しいので?」


消防指令「…総帥なら何とかするでしょう…それに…国内…いや…
     地球上で総帥の行動を止められる"人間"はいやしない…」


隊員「…確かに無理ですね…"人"では総帥は止まらない…判りました!至急西島隊を向かわせます!」




隊員は消防指令の言葉に苦笑いをすると走り去って行った




そんな2人の遣り取りを見て優奈は困惑していた…




優奈「…(どういう事?…あれではまるで…あの人は人間ではない様な言い方だけど…)…」




だが幾ら考えても結論が出る事はなかった…




それもそのはず…宗司は一般人から見れば異質な人物なのだから…




宗司side終了




西島side




俺の名は西島。隊長ってガラじゃねぇが消防隊を1つ任せて貰っている。




そして俺等は今、聖グループが所有するイベントホールで消火活動をしている。




消火活動をするのは構わん。それが仕事だしな…ただ…引っ掛かる事がある…




その引っ掛かりを調べる為に俺等は管理室に出向いているのさ…




何故スプリンクラーを含む消化システムが作動していないかが引っ掛かるからだ…




聖グループの所有する建物は常に最先端の技術が使われている…




その為本来火災が起きても消化システムが作動し、ここまで大事にはならねぇ…




…考えられる可能性は…消化システムの故障…或いは…




すると彼の部下である隊員が声を上げた!




隊員A「西さん!コイツを見て下さい!」




隊員が指を刺す場所にしゃがみ込むと、そこにあったのは基盤の破片…




西島「…おいおい…コイツは…」


隊員A「…この回路基盤だと…西さんの読み通り…爆破されたと考えるのが妥当かと…」


西島「…って事は残り2箇所も…」




聖グループが関与している建物は最低でも3箇所の管理室が存在する。




消化システムが作動しなかった時に備えての設置だ。




だが今回消化システムが全部死んでるとなると、その筋が1番妥当か…




すると別の隊員が大声を上げた!




隊員B「…はぁ!?…ふざけないで頂きたい!?」




どうやら本部からの通信で揉めてるらしい…




西島「おい!何があった!」


隊員B「今西さんに繋ぐんで西さんからも言って下さいよ!?」




そう言うと本部の通信が俺の無線に入って来た…




聖家隊員「こちら本部。西島隊は至急更衣室へと繋がる廊下方面に向かって下さい。」


西島「…はぁ?…言ってる意味がわからねぇぞ…俺等がさっき通達した事を忘れたのか?…
   あの道はすでに瓦礫で遮断されちまってる…大体何しに行けってんだ?…崩れたって
   事は他の部分も脆くなってるって事だ…本部は俺等に死ねと言ってんのか?」


聖家隊員「その事は重々承知してます。ですが状況が深刻なんです。」




※生存者が2名更衣室にいる事を伝えました※




…正気沙汰じゃねぇ…形見を取りに戻ったガキも助けに向かったガキもな…だが…




…見捨てる訳にもいかねぇな…個人的に無鉄砲な奴は嫌いじゃねぇ…ただ…




西島「…状況は判った…だが向かっても瓦礫があるだけだ…それをどうにかしない限り何も出来ねえぜ?」


聖家隊員「それに関しては大丈夫です…当家が誇る"スペシャリスト"現地に向かいました。」




スペシャリストだと?重機の入れるスペースはねぇが…




西島「どんな奴だ?」


聖家隊員「ここで言っても理解はして貰えぬかと…一刻を争います…至急現地へ!」


西島「…判った…但し…使えないと判れば引かせて貰うぞ?」


聖家隊員「それで構いません…御武運を!…以上通信終り!」




色々と判らねぇ事だらけだが一刻を争うのは同意だ…


 
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