短編&中編

□全てを愛し全てと共にある者(短編)
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忘却の記憶(SKE長編)の連動短編小説第2弾[高柳明音の章]




この話は宗司が栄えに来て2日目の出来事である…




宗司は残りのメンバーに事の詳細を伝えた後スタッフルームで寛いでいた




宗司「…ふぅ…話さねばならぬ事とは言え…何度も話すのは精神的にくる物があるな…」


湯浅「…すまんな…だが伝えない訳にはいかないからな…」


宗司「…そうなんですがね…ただせめてもの救いは…」


玲阿「…今回当事者が居なかった…という事ででしょうか…」


宗司「…あぁ…正直あいつらがいると、宥めるのが大変だからな…ったく…もう気にすんなって言ってんのに…」


湯浅「…いや無理だろ…てか何で玲阿さんがここに?」


宗司「明日の着物を持って来たんです」


湯浅「…明日?…あぁ…結局女装するのか?」


宗司「…えぇ…じゃなきゃくれんと言うので…だからそこらで揃え様かと思ったんだけど…」




そう言い掛けると宗司が玲阿の方を向く




玲阿「…何度も申しますが総帥として自覚を持って下さい。女装とはいえそれなりの物を着て頂かないと駄目です。」


宗司「…って事でしてね…」


湯浅「…まぁ言いたい事は判るな…普段の宗司君見てっと本当に聖グループの総帥なのか判らんからな…」




とその時である…宗司の携帯電話が鳴り出した…




宗司「ん?この着信音はSKEメンバーのKUの誰かか」


湯浅「グループで着信音分けてるのか?」


宗司「えぇ。まだ誰がどこのグループってのを覚えてないもんで、さて誰かなっと」




宗司が携帯を手に取ると表示には…




宗司「ぬ?明音か…宗司だ…どう"…助けて…"何があった!?」




宗司の大声にスタッフルームに緊張が走る!?




宗司の耳に最初に飛び込んで来たのは今にも消えそうなちゅりの声だった…




高柳「…御願い…助けて下さい…"救急車"を呼んでも来てくれない…このままじゃ…"この子"が死んじゃうよぉぉぉぉぉぉ!?」




その言葉に状況を瞬時に理解した宗司は大きく息をちゅりの脳裏に突き刺す様な声をあげる…




宗司「…明音!」


高柳「…っ!?…」




宗司の声がちゅりの脳を通り抜けると同時にちゅりの思考が正常な物に戻る…




高柳「…あ…私…」


宗司「…戻ったな…今から言う事を良く聞け…詳しく話す必要はない…今どこにいる?目印はあるか?」


高柳「…あ…はい…えっと…栄中央ホテルの正面です…」


宗司「…近いな…10分以内にそっちに向うからその"子"の意識が途切れない様に注意しろ!大丈夫!きっと助ける!」


高柳「はい!」


宗司「良い返事だ!」




そう言うと宗司は携帯電話を切る!




湯浅「高柳に何があった!?」




湯浅さんが大声を無理もない…さっきの遣り取りでスタッフルーム内には緊張感が漂っているからだ…




宗司「後で話す…玲阿!」


全員「…っ!?…」




普段の宗司の声とは別の声がスタッフルームを支配する…




そしてその声に逸早く反応した玲阿が宗司の前で臣下の礼を取った




玲阿「御命令を!」


宗司「大至急栄中央ホテル前に聖警備団及び鳥専門の聖獣医師団を派遣後、栄中央ホテルの前に医療テントをはる許可
   の取得及び道路の占用許可を取れ!金は幾ら掛かっても構わん!渋る様なら圧力を掛けろ!急げ!」


玲阿「御意!」




貫禄のある宗司の言葉に玲阿は瞬時に出口へと向った




湯浅さんを含む全スタッフが息を呑む…




さっきまで一緒に宗司は目の前にいないから…そう…目の前にいるのは…




現代の闇に生きる武士…そして聖グループの総帥なのだと…




湯浅「…っ…宗司君…獣医団ってどう言う事だ?高柳が怪我したんじゃないのか?」




湯浅さんが強張る身体を動かしそう尋ねる…




宗司「…引っ掛かった単語は"救急車呼んでも来てくれない"と"この子"の2種類…対象が"人"であるなら
   救急車は必ず来る…しかし…来ないとなると動物である事が推測される…そして…肝心な事を伝えられないほど
   明音は錯乱していた…そうなった場合…対象は"鳥"である可能性がある…明音は極度の鳥好きですから…」


湯浅「…だから獣医師団か…」


宗司「…そう言う事なんで湯浅さん…」


湯浅「…劇場の仕事は気にするな…高柳を…頼む!」


宗司「了解!」




そう声を上げると迅雷を使ったらしく宗司はその場から姿を消した




そしてスタッフルームの空気は通常の物に戻ると同時に他のスタッフは膝から崩れ落ちた…




スA「…はぁはぁはぁ…」


湯浅「…大丈夫か?…」


スC「…なんと言う圧迫感…支配人はよく平気ですね…」


湯浅「…全然大丈夫な訳じゃないさ…」


スB「…にしても宗司君…一瞬で"変わった"…」


スA「…あれが本来の姿って事ですか…」


湯浅「…そうだな…しかもどんな状況でも冷静で短時間で必要な情報を聞き出し行動に移す…さすがってとこだな…」




湯浅さん言葉に全スタッフが頷いた…




※数十分前のちゅりside※




本日非番のちゅりは路肩のベンチに腰掛てソフトクリームを食べながら考え事をしていた




その内容とは勿論宗司の事である…




…宗司さんかぁ…今日確信に変わったけど…多分あいりんも参加してる気がする…




ううん…あいりんだけじゃない…あかりんに久美さん…否定してるけどゆりあも正直怪しい…




改めて思うとAKBさんを入れると参加メンバーが凄過ぎる…




…私は…どうしよ…




今まで恋愛禁止令があったので気にしてなかったが私は現在二十歳…




世間一般的には彼氏が居てもおかしくない年齢…う〜ん…昨日までは意識してなかったけど…




秋元さんから直接許可が出てるせいか精神の箍(たが)が外れたらしく妙に意識してしまう…




参加してみて駄目そうなら諦めるのも手だけど…




問題は…やっぱり…鳥が好きかどうかが最大の問題になってくる…




よし!決めた!参加するにしても宗司さんに鳥が好きかまず聞いてからにしよう!




自問自答を繰り返したちゅりだったが結論に至った様である




すると小さな女の子の大きな声が聞こえて来た




女の子「あっ!鳩の親子だ!可愛い!」




そんな声に振り返ると道路を横断する鳩の親子がいた




危ないかなと思ったけど車も青信号だけど止まり鳩が通過するのを待っている




流石栄!暖かい心を持った人の多い街だ!




そう思った矢先の事である…ちゅりの視界に止まってる車を無理に追い抜こうとした原チャの姿が映った…




ちょっ!?待っ!?




そう声を上げようとした瞬間…ドンッ!?…と鈍い音が辺りに響く!?




そう…原チャは…小鳩を撥ねたのだ…




私は慌てて小鳩に近寄る…と同時に原チャも路肩に停止した




小鳩の状態を見てちゅりは絶句する…だって小鳩は…




即死は免れたものの腹が割け内臓が出掛かっていたからだ…でもまだ生きてる…




すると原チャの男が近寄ってきた




男「…一体なんだと思えば鳩かよ…ふざけんなよ…新車に傷つけやがって…」




…この人…今何て言った?…




高柳「ちょっと君!?撥ねといてその言い草はないでしょ!?」


男「はぁ?」


高柳「鳩に誤ろうって気は無いの!?」


男「…馬鹿かお前?そもそも俺は悪くねぇし。大体赤信号の横断歩道を横切ってる鳩の方が悪いだろ?」


高柳「確かにそうだけど…君だって無理やり追い抜きしたでしょうが!?ここ追い越し禁止道路でしょ!?」




そう言うとちゅりは追い越し禁止の標識を指差す




すると男はしかめっ面になり背を向けバイクの方に歩き出す…




この場に居てはまずいと悟ったのだろう…だがちゅりは咄嗟に男の袖を掴んだ…




高柳「ちょっと待ちなさい!?」


男「何なんだよお前は!?血の付いた手で触んじゃねぇ!?」


高柳「救急車呼びなさい!?」




そんなちゅりの言葉に男は笑い出す…




男「お前頭足らねぇだろwどこの世界に鳩に駈け付ける救急車が居んだよw
  付き合いきれねぇw呼びたいなら周りに呼んで貰うか自分で掛けなw」




そう言う男は原チャに乗り去って行った…すると先ほどの女の子の声が聞こえた




女の子「お母さん!鳩死んじゃうよ!救急車呼んであげて!」




良かった!呼んで貰えると思ったちゅりだったが予想外の結末が待っていた…




そう…母親は呼ばなかったのだ…あの鳩はもう助からないから呼んでも意味が無いと…




何故…助からないと誰が決めたの?あの子はまだ生きてるんだよ?




そう思いながらも足を止めている他の人を見るが視線をそらされる…




…良い街だと思ったのに…みんな酷い…ちゅりは瞳に涙を貯めながら血濡れの手で救急車を呼ぶ…だが…




…あの男が言った通り…来れないと言われたのだ…




ちゅりは小鳩のそばにより…優しく両手で救い上げる…




周りからは"グロッ"とか酷い声が聞こえるが気にしない…




良かった…まだ生きてる…でも…さっきより心臓の鼓動が弱い…このままじゃ…




と…そんな時…ちゅりの脳裏に1人の男性の顔が浮かんだ…そう…宗司である…




数時間前…全メンバーに向って宗司さんが言った言葉を思い出す…




どんな些細な事でも良い。悲しい事や辛い事があれば言って欲しい…さすれば必ず力になろう…




確かにそう言った…最後の望みを託しちゅりは宗司へと電話をかけた…




ぷるるるるるっ…ぷるるるるるっ…




お願い繋がって…




ぷるるるるるっ…ぷるるるるるっ…ぷっ!




宗司「ぬ?明音か…宗司だ…どう…」


高柳「…助けて…」


宗司「何があった!?」




この時自分は錯乱していたんだと思う…




何故?それは肝心な事を何一つ伝える事が出来なかったから…




高柳「…御願い…助けて下さい…"救急車"を呼んでも来てくれない…このままじゃ…"この子"が死んじゃうよぉぉぉぉぉぉ!?」




何を言ってるの?こんな言葉じゃ何を言ってるのか判らない!?




でも頭では判っていても言葉が出てこない…




すると宗司さんから暖かくそれでいて力強い声が私の脳裏を突き抜けた…




宗司「…明音!」


高柳「…っ!?…あ…私…」




…声が…出る…うそ…さっきまで出せなかったのに…




宗司「…"戻ったな"…今から言う事を良く聞け…詳しく話す必要はない…今どこにいる?目印はあるか?」




…戻った?…そうか…これは…昨日錯乱していたたかみなさんに使った宗司さんの業…




錯乱し他人の言葉など一切入ってこない状態のたかみなさんが宗司さんの呼び掛けで一瞬で正常に戻っていた…




良かったこれで伝えられる…




宗司さんの言葉に辺りを見回すと自分が栄中央ホテルの正面に居る事が判った




高柳「…あ…はい…えっと…栄中央ホテルの正面です…」


宗司「…近いな…10分以内にそっちに向うからその"子"の意識が途切れない様に注意しろ!大丈夫!きっと助ける!」




再び暖かく力強い声が私の脳内を突き抜ける…と同時に私の中にある確信が満ちる




宗司さんが来てくれれば…この子はきっと助かる!




だから私は多いな声で…




高柳「はい!」




そう返事をする…そんな私に宗司さんは…




宗司「良い返事だ!」




そう言うと宗司は携帯を切ったのだ




私は携帯をしまい再度小鳩を両手に取る…




…もう少し頑張ってね…そうすればきっと助かるから…




私は宗司さんが来るまでずっと小鳩にそう話し掛けていた…


 
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