短編&中編

□孤高の武人と歴女(中編)
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※長編がベースになってますので先に長編を見る事をお勧めします※

※あと関西弁は良くわからないので関西弁では書きません※




2010年…ここは兵庫県某所…古きに渡り伝統を受け継ぐ武家屋敷の道場には2人の武人が居た




1人は尼崎藩主直属 七番隊 隠密「唐欄衆」七代目当主 麻儀 常明 秀元(25歳)である




宗司の親友であり日本各地にいる七代目当主の1人…そしてもう1人は宗司である




2人は道場の壁際で御茶を啜っている様だ




秀元「…客間じゃなくて道場の方が落ち着くって…ほんとお前は根っからの武人だな…」


宗司「…そんな大したもんじゃねぇさ…ただ俺が堅苦しいの嫌いなの知ってんだろ?…」


秀元「…はぁ…親友の家で堅苦しいもないもないだろうが…」




秀元は溜息をついた後にゆっくりと話し出した…




秀元「…にしても…まだ…"断ち切る"事は出来んか…」


宗司「…あぁ…駄目なのは判っている…だが…」


秀元「…いや…言わんでいい…俺も志乃を失えば…同じになるだろうよ…」




※麻儀 志乃(23歳)は秀元の番(つがい)である※




すると2人の気配が声と共に道場に近付いてきた




上女中「志乃様!?秀元様には私から伝えますから!?」


志乃「いつも言ってるでしょ?たまには動かないと運動不足になってしまいますよ。
   それに…私も道影様とお話したいのですよ〜♪」


上女中「そっちが本音ですか!?」




こんなドタバタと足音がどんどん近付いてくる




宗司「…志乃の奴…相変らずだな…」


秀元「…まぁな…だが普段から御転婆なあいつにじっとしてろって言うのが無理だろうて…」


志乃「到着っと♪道影様御機嫌麗しゅう♪」


宗司「あぁ。志乃は相変らず元気だな」


志乃「それが私の取柄ですので♪」


秀元「それで?道影に会いに来ただけじゃないんだろ?まずは用件を聞こう」


志乃「そうでした。御客様がいらしてますよ」


秀元「…客?…今日の予定にそんな予定はないぞ?道影が来るってんで空けたはずだろ?」


上女中「…志乃様…それでは伝わりませんよ…秀元様、彩様がいらしてます。」


秀元「何?彩が?」


上女中「はい。何でも報告があるとかで…」


秀元「ならここに通してくれ。話したい事もあるしな」


上女中「御意」




そして上女中は去って行った




宗司「…秀元…俺は席を外させて貰う…」


秀元「その必要は無いだろう」


宗司「…何?なら分家かなんかか?」


秀元「いやただの歴史好きの高校生だからだ」


宗司「高校生?にしては随分と仲が良い様だが…」


上女中「秀元様…御連れしました…さあ彩様どうぞ…」


山本「…あの呼び捨てで良いんですが…」


上女中「そう言う訳にはいきませぬ…秀元様が認められた御友人ですので…では失礼します…」


秀元「おい!すまないが志乃と彩の茶碗を持って来てくれ!」


上女中「御意」




上女中は秀元に一礼し去って行った




秀元「彩!お前もこっち来て御茶会しようぜ!」




秀元の言葉に彩は志乃の近くに腰を下ろす




山本「秀元さんに志乃さんもお久しぶりです!」




彩の口から出た幼名に宗司が驚く




宗司「…秀元…お前…幼名を許してんのか?…」


秀元「まぁな」




そして逆に宗司の言葉に彩の表情が変わる…




秀元の幼名を呼び捨てにする人は非常に少ないからである




山本「…秀元さんの幼名を呼び捨てで…秀元さん…この人は?…」


秀元「…彩…驚くなよ?」


山本「…え?…」


秀元「…水戸藩主直属 四「ちょっと待て!?」…どうした?…」




宗司の怒鳴り声が道場内を支配する…




宗司「どうしたじゃねぇ!?俺らの存「知ってんだよ」何をだ!?」


秀元「だから知ってんだよ…彩は…俺ら隠密の存在をな…」


宗司「なっ!?」




宗司は瞬時に立ち上がり…そして…彩と対峙し構えをとる…




秀元「…ちったぁ落ち着け!…勘違いすんな…彩はな…初めて会った時からすでに知ってたんだよ…
   大体良く考えろ…危険人物に幼名を…それ以前に敷地内に入れる訳がないだろうが…」




秀元の言葉に宗司は腰を下ろす…




宗司「…すまん…俺とした事が冷静さを失っていたな…だが一体どこで…俺らの事を…」


秀元「…さっき言ったろ?…歴史好き…しかも歴史学者並みで好きなのさ…一応言って置くが前に彩の事を調べたが
   俺ら隠密とはまったく無縁な家系な者…つまりただの一般人だ…よって危険性はない…」


山本「…あの…文献で調べたんです…曾爺様が歴史学者をやっていたんです…
   それで曾爺様の遺品の中にあった文献を歴史に興味があった私が形見と
   して受け継ぎ解読したんです…」


宗司「…文献…だが俺らの活動記録等が記された文献は戦火で消失したはずだ…」


秀元「…全てではないが残っていたのさ…歴史学者だった彩の曾爺さんが調べる為に
   文献を他に持ち出した事が幸いして1部消失せずに残ったそうだ…」


宗司「…だが…何で今まで世間に内容が露出する事がなかったんだ?…」


秀元「…曾爺さんが世間に広めてはいけない内容だと判断したんだ…
   曾爺さんが亡くなる時も彩に決して世に出すなと告げたそうだ…」


宗司「…それで世に出てないのか…今、その文献はどうなってる?…」


秀元「…彩がな…解読が終わった際、自分が所持してると危険だと判断したんだ…
   だから…たまたま近所だった当家に文献を収めに来てくれたのが最初の出会いだ…」


宗司「…そうか…すまん…俺とした事が恩人に向かって構えをとるとは…」




宗司は両拳を床に付け、彩に向かって頭を下げる…




山本「ちょ!?頭上げて下さいよ!?」


志乃「…道影様…彩ちゃんが困ってますよ…」


宗司「…一族の宗主として恩人に頭を下げてるだけだ…」


秀元「…まぁ…気持ちは判るがな…俺もこの件で彩に頭下げた事があるしな…でこいつの名は…」


宗司「自分で言う…俺は…水戸藩主直属 四番隊 隠密「狼牙衆」七代目当主 聖 宗司 道影だ…」




宗司の言葉に彩は大口を開けたまま固まる…




それはそうであろう…現存する隠密の当主の中でもっとも会いたかった武人だからだ…




確かに前に秀元から見せて貰った写真の青年に似ている…




でも今の宗司の額には着物には似つかわしくないバンダナが…




それはまるで額を隠す様に巻かれている事に違和感を覚えつつ彩は秀元に話し掛けた…




山本「…秀元さん…じゃあこの人が…秀元さんの言っていた…」


秀元「そうだ。俺の親友であり、現存する七代目の隠密衆の中で…いや違うな…歴代最強と言われる男さ…」


宗司「…あんまり…大袈裟に言うなよ…俺はまだまだ弱い…」


秀元「…ふざけんなよ…俺に忠孝それに風姫は七代目の中でも上位の当主だ…
   それを壱対参で対峙して勝ったお前が最強じゃなくて何だと言うんだ?…」


宗司「…それはお前らの癖を知ってるだけだからと何度も言ってるだろうが…」


志乃「…仮にそうだとしても三人の攻防を凌ぎつつ、事を起こせる段階で最強なんですけどね…」


秀元「…まったくだ…あの後…俺らがどんだけ凹んだ事か…っと彩も自己紹介を…」


山本「あっ!?はい!?…山本 彩です!?聖さん!?」


宗司「あ〜俺の事は道影で良い…」


山本「えっ!?でもそれは幼名じゃ!?」


宗司「…親友の秀元も認めている御人だ…問題は無い…受け取って欲しい…」




宗司の真っ直ぐな視線が彩の瞳を捉える…




と同時に徐々に彩の顔が赤く染まっていく…




ずっと会いたかった憧れの武人…




秀元に写真を見せて貰ったあの日から気になって仕方が無かった人物…




そう…彩は一目惚れしたのだ…聖 宗司と言う人物に…




その人物が認めた者にしか呼ぶ事が許されない幼名で呼べと言っているのだ…




そんな彩を見た秀元が笑い出す…




秀元「…ククク…まぁ…憧れの宗司様にじっと見つめられれば赤くもなるわなw」


山本「ちょっ!?秀元さん!?」


宗司「…憧れ?…誰が?…」


志乃「道影様の事ですよw」


山本「ちょっ!?志乃さんまで!?」


宗司「…俺に憧れ?…物好きな奴だな…一体どこに憧れる要素があるってんだ…」


秀元「顔に決まってんだろw」


志乃「人柄も申し分ないしw」


上女中「歴代最強の称号も付いてますからねw秀元様、御茶碗と御茶菓子も御持ちしました。」


秀元「ご苦労さん。昼は彩の分も用意してくれ。食べていくだろ?」


山本「あっはい!頂きます!」


上女中「承りました。ではお昼が出来次第、お声を掛けさせて頂きます。」




そう話すと上女中は去って行った




宗司「…にしても顔ねぇ…俺からすれば秀元とか忠孝とかの方が良い面だと思うがな…」


志乃「その意見に対しては同感ですけど、道影様のお顔が彩ちゃんのタイプって事でしょうw」


山本「志乃さん!?」


宗司「…まぁ…言われて悪い気はせんのでありがとさんとだけ言って置こう…」


山本「…うぅ…秀元さんも志乃さんも酷いです…名前の件は了解しました…
   では道影さんと…あと私の事は彩と呼び捨てで良いです…」


宗司「あいよ。宜しくな彩」


秀元「さて自己紹介も終わった訳だが彩お前さんは何しに来たんだ?」


志乃「そう言えばさっき、話したい事があったと言ってましたね?」


山本「そうでした。アイドルグループのオーディション合格したんでご報告に来ました!」




そんな彩の言葉に宗司の眉間に皺がよる…




秀元「…そうか…MAD CATZが解散した事は聞いたが、まだ夢を諦めてはいなかったんだな…」




※MAD CATZとはさや姉がNMBに加入する前に入っていたグループ※




山本「…将来…シンガーソングライターになりたいんです…」


秀元「そこで色々と勉強し糧にして今後に繋げたいって事か」


志乃「ところでアイドルグループって言ってましたが、どこに合格したのですか?」


山本「AKB48の姉妹グループのNMB48です!」


宗司「ごふっ!?ごほごほごほっ!?」




彩の口から放たれた予想通りの言葉に…宗司は咽る…




どうやら器官に御茶が入ったらしい…




秀元「…あちゃ〜…寄りによってAKB関連かよ…」


志乃「…きっと運命なんだと思いますよ…」




咽ている宗司…そして顔をしかめている麻儀夫婦…




そんな3人を見て首を傾げる彩であった…


 
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