D I N O
□コイビト(ヒバディノ)
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ある初秋の昼下がり。
珍しく雲雀からだと渡されたのは、とんでもない内容の国際電話だった。
「体育祭…?俺に出ろって言うのか?」
『僕の両親、今年も仕事が入ってるんだ。でも今年で中学の体育祭は最後だから誰かに来てもらえって担任がうるさいんだよね。』
学校のみならず、地域にも幅をきかせている風紀委員長に対して、そんなに厳しく注意する教師など並盛中学にはいないということを知らないディーノは、部下…もとい生徒想いのためか『最後の体育祭』という単語に同情をしてしまう。
(俺が行かなきゃ、こいつは一人で寂しく弁当食べたりしなきゃなんねーのか…)
「わかった。仕事は何とかするから行ってやるよ。日にちは?」
『明後日。』
「う…」
『遅刻してもいいから、昼には来てよ。愉しみに待ってるから…。』
一方的に切られた受話器からは、ただ虚しい響きしかしなかった。