D I N O

□ディノ誕
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キョーヤ×





『6件目…午後11時32分…─────』



「うわ…またかよ…」



留守電の機械的な人の声の後にはいつもきまってメッセージは入っていない。


ここ数日そんなんばっかりだ…。



一応、一介のマフィアのボスなんて生業だからこんな嫌がらせもあるんじゃないかと初めは思った。


でもよくよく考えてみると、いつも無言電話が入っているのはプライベート用の電話だし、電話以外の嫌がらせらしきことは何一つない。

電話に出るとすぐ切れちまうし…一体何なんだ…この非通知ヤローは…





「これで22回目か…」






電話には何か意味があるのか…。


無言だからその深意もわかりゃしねぇ…。





そんな堂々巡りな考えが先月の終わりから続いていた。


つまりこの無言電話は一週間も続いているわけか…。



そのせいで俺は……。






「いい加減、何か一言くらい話さねーかな…」




そんなことを思いながら今日も徹夜で残務処理をしていると、ケータイが光った。


また非通知だ…。



今度こそ詳しく問い詰めてやる…!!






「Pronto? Tu…」


『センセイ?』


「き…恭弥…?」




非通知の声の主が恭弥だったってことはもしかして今までの迷惑電話も恭弥の仕業だったのか…?

でも恭弥はそんなこと…





『黙りこんじゃってどうしたの?あなたらしくないね…』


「お前…何で非通知なんか…」

『こっちのがサプライズみたいでいいでしょう?』


「バカ…これまでたくさんたくさん非通知でかけてきたくせに…俺…それで一体どんな想いを…」





もしかしたら恭弥が犯人じゃないかもしれないのに、俺は気づいたら溢れる感情を抑えきれずに恭弥にぶつけていた。



気にかけないようにしても何故か拭えない気持ち悪さにずっと目を背いてきた。


犯人はこの前の取引先の企業とかファミリーとかの人間じゃないかと気付くと考えている自分も嫌になった。



だから、よく知る可愛い教え子が自分を苦しめていたと思うと悲しくなったんだ。






『泣いて、いるの…?』


「泣いてなんか…」


『あなた、嘘が下手なんだから…僕にはすぐわかるよ…』


「だったら何で…」


『悪かった、ね…』


「え…?」





今、あの恭弥が謝ったのか…?

プライドの高い恭弥が…?


嘘だろ……





『国際電話に慣れていなくてね…本当にかかるのか試していたんだ。』


「国際…電話?」


『時差は知っていたんだけど、ちゃんと正確な時間を知りたくてね…あとあなたの起きている時間も。』


「俺の…?」




『Buon compleanno, Dino!』



「誕生…日…?そっか…12時過ぎて…」






誕生日をイタリア語で祝ってくれることや、ちゃんと時間きっかりに電話してくれていることの驚きに、涙はすっかり乾いていた。






『泣かせた代償はこれからそっちへ行って払うつもりだから。部屋、開けておいてね。』


「これからって…お前…」


『僕をナメないでね…飛行機なんて使わなくてもあなたのところへ行ってあげるよ…』


「バカ…そんなこと…」


『これくらいしないとあなたを怖がらせたり悲しませたことに釣り合わないでしょう?』





一週間分の無言電話への恐怖や悲しみね…。


それはもう吹き飛んでいるのにな…。



お前のあの一言で…。







「Grazie! Kyoya!!」







fin!
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