STAY_
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「侑士。ゆ〜し〜。侑士く〜ん?」
「立ち直れへん…」
生徒会の仕事が終わり教室に戻ってきた侑士に先ほどの事を伝えたら、それから頭を抱えているのだ。
「で?宮坂は?どうしたん?」
「とりあえず保健室で休ませようとしたんだけど授業に出るって言って教室に戻った」
「そうか…」
大丈夫だと明らかに強がりを言っていたんだけど、俺にはどうする事も出来なかった。
何て慰められる?“大丈夫か?”って?明らかに大丈夫じゃなかったじゃん。
何て励ませられる?“そのうち昔の跡部に戻るよ?”気休めにもなりゃしない。
「跡部と宮坂って結構仲良かったんやで」
「そうなのか?」
「今の跡部になる前は出来るモン同士でな、お互いにテニス部部長やし結構話してたりすんの見たわ」
「へぇ…」
「あ〜、まさか跡部が手を出そうとまでするなんて思わへんかった…」
そう言って再び頭を抱えてしまった侑士。
そうだよな。仕事はフォロー出来てもそこまではフォロー出来ない。
しかも、その行為自体も問題だが、部長が暴力沙汰という事が周囲に知られたら男子テニス部は試合に出場停止にもなりかねない。
今までの努力を水の泡にする愚行だ。
「しっかし、まさか朋恵ちゃんがラケットを壊すなんて考えてへんかった…」
「そう言えば今週末練習試合があるって言ってたな…」
「そうなんか?」
「おう」
「あ〜…もう、ホンマにアカンわ」
今度は机に顔を突っ伏してしまった。
「侑士?」
「自分のラケットがどんだけ大切か…」
「ラケットって他人のとはそんなに違うもんなのか?」
「ストリングのテンションもグリップの太さもそれぞれやからなぁ。何より使い慣れたモンってのが大事や。自分の癖がついとるからな。
新品のラケットは宮坂の実力やったら最初は大丈夫やろうけど勝ちし進んで強い相手とあたるとしんどいで」
申し訳ないけどストリングのテンションもグリップもボンヤリしか分かんなかったけど、とりあえず宮坂が大変になるってのは分かった。
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