エンジェルシリカ_
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「珍しいね。仁王が野菜ジュースなんて」
昼休み。屋上で昼食を摂っていた時、俺が野菜ジュースを飲む姿を初めて見た那貴がふと呟いた。
「柳生がのう」
「柳生?」
「俺のダブルスパートナーじゃき。小姑みたいに口を出して来よる。コレももっと栄養取りなさい言うて押し付けられたんじゃ」
「押し付けられたって言う割には飲むんだ」
「まぁのう…」
「信頼してるんだ。柳生って人の事」
「…」
押し黙ってジュースを啜る俺に那貴は笑う。
「笑うんじゃなか…」
「照れてるのが可愛くて」
「嬉しくないぜよ…」
顔を逸らした俺に那貴は笑みを濃くする。
「仲間かぁ」
「羨ましいんか?」
「多少」
「作ってみたらどうぜよ」
「今更どうしたら良いか分かんないし」
他人と深く付き合う事を那貴は拒む。
それは生きて来た環境からなんじゃろうけど、他人を寄せ付けない。
今だクラスメイトと雑談をしているのなんて見た事がないしのう。
でも…
「俺には自分から話し掛けて来たじゃろ?」
「それは仁王だったから」
「どういう意味ぜよ」
「分かんない。ただ、あの時は仁王に話し掛けてみたくなったの」
「本当に恐ろしい奴じゃな」
「?」
訳が分からんと首を傾げる那貴にごまかすように笑って見せる。
これ以上溺れさせてどうする気なんだか…。
、