月に出逢えば_
□第15夜
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何度も訪れた柳家。すっかり道を覚え、出迎えは無しで行けるようになった。
夏目漱石を返しがてら行く約束をした先週。
当日、約束の時間より早い電車に乗った俺は、カメラを片手に周辺散策をしていた。
あまり道を外れて迷うと困るから、少し足を伸ばすだけだけど…。
そうして見付けた古びた洋館。
家のようだが、表札は外され、門にはトラロープと共に立ち入り禁止の看板が掛けられている。
どうやら空き家のようだ。
「大きいな…」
手入れがされていない建物は不気味な雰囲気になっているが、造りは見事だ。
「…」
くすぐられた好奇心。心の中で謝罪しながら俺はロープを潜り抜けた。
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