先生の日常観察_
□12
1ページ/4ページ
「何かさぁ。やたら美形多くない?顔審査でも出来たの?」
「お前もそう思うか?」
「うん」
合宿に参加しているメンバーは各校のレギュラーと兼マネージャーとして青学の乾と氷帝の滝。
立海は先生がやってくれますよね?って幸村に笑顔で脅された。
いや、やるけどさ…。何か釈然としないのは何でだろう…。
ちなみに練習は各校混ぜて行われている。
「あんたは何してんの?黒峰コーチ?」
「マネージャー」
「監督じゃなくて?」
「監督は各グループにいるから」
「あんたいらないじゃない?」
「それは俺が一番良く分かってるっつうの」
ちなみにグループ分けはくじ引きで3つに分かれ、ただし各校の部長はグループをまとめる役目として別々になる。普段の内容、メンバーが違うというこの練習が俺は新鮮で好きだった。
ちなみにくじ引きの結果
Aグループが跡部、切原、桑原、大石、桃城、越前、芥川、日吉 マネが俺
Bグループが手塚、真田、柳生、丸井、河村、海堂、宍戸、向日 マネが滝
Cグループが幸村、柳、仁王、不二、菊丸、忍足、鳳、樺地 マネが乾
こうなった。
練習メニューはそれぞれのグループで決めているから俺はマネージャー業務に専念…なんだけど、スミレちゃんや太郎ちゃんはラウンジでのんびりしてるのに何で俺だけ…。ウチもマネ役連れてくれば良かった…。
「で?お前は何してんの?茗子」
「見回りもかねての見学」
「見学が大半を占めてんじゃねぇのか?」
「だって可愛い後輩達のプレイを見てみたいじゃない」
「あっそ」
「あんたはやらないの?」
「球出しぐらいならやってる」
「あんたホントに高3で引退してからラケット握らなくなったよね」
「まぁな」
「あんなにテニス馬鹿だったのにねぇ」
「うっせ」
別にテニスが嫌になったとかそんなんじゃない。
大学に入り、高校生までとは明らかに違う生活で自然と離れてしまったってだけ。
「ねえ、テニス楽しい?」
「は?」
唐突な質問に、思わず聞き返すと俺を見ていたのは予想外に真剣な目。
「楽しい?」
「…まぁな」
「なら良かった」
ったく…。まだ覚えてやがんのか…。
「あ〜、でも、まさか母校のテニス部のコーチになるとは思わなかったけどな」
この空気を吹き飛ばすように声を大きめに言うと、茗子の顔に笑顔が戻った。
「縁ってやつじゃない?」
「かもな」
「楽しそうで良いじゃない」
「大変な目に多々遭ってるけどな」
「それも楽しいんでしょ?」
「…」
何かハッキリそう言われると、照れ臭さが勝って肯定したくねぇな…。
「照れてるでしょ?」
「照れてねぇよ…」
分かってて言ってんな…こんにゃろ…。
「黒峰先生」
「おう。何だ、大石」
まさか、無駄口を叩いてないで働けって怒られるとか…?何て思って少し構えてみる。
「球出しをお願いしたいのですがよろしいですか?」
「お、おう…」
何だ…。
「ぶはっ!」
明らかに安心した様子の俺を敏感に察知したらしい茗子が噴出したのを睨むと、更に爆笑しだした。
「オイ、コラ…」
「あっはっは!ゴメ…、おっかしくって…。ほら、早く行きなよ、黒峰コーチ」
「茗子!てめぇ、さっさと自分の仕事しろ!お前がいると俺の教師としての威厳がどんどん失われていく!」
「威厳なんて爪の先程もないじゃん」
そう言ってまた爆笑。
こんにゃろ…。何回俺を笑えば気が済むんだ己は…。
いや、笑われるような事をする俺も俺なんだろうけどさ…。
_