07/30の日記

21:45
二人は楽しいだろう?(創作:蝉と蝶)
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今日もまた日は昇る。哀しくも運命だか宿命いや、本能に従って僕は鳴く。僕は蝉だから。

「でさー、俺は旅にでたわけよ!…って聞いてる?」
昨日までと違う事がひとつ。僕の隣に蝶がいて、僕に話かけてくる。
「……なんで君は僕に話かけてくのさ」
「なんでって昨日ダチになったろう?」
思えば幼虫の頃から他者と話す機会なんて無かったからなんだか不思議な気分だ。
「本能に従うのが悪いとか言わんけどさ、たまには息抜きも必要だろ?」
あんまり鳴きどうしじゃあ羽根痛めるぞ、と彼は言う。確かに付け根がかなり痛い。
「うん。少し、休む」
「よーし!どっか行こうぜ!川とかよ」
それって結局羽根休められないじゃないか。そう思いながらも僕は何故か頷いていた。

気がついたら川に来ていて、赤トンボ達がたのしそうに飛んでいた。

赤トンボ?やっぱり僕はそうとう遅刻してしまったようだ。もしかしたら本当にもう僕以外の蝉は居ないのかもしれない。
「なあにシケタつらしてるんだよ!」
パタリと蝶が羽根で僕をつついてきた。
「え、あ…うん」
「まあビル街よりは空気がマシだなー」
蝶はおもむろに岩に止まると水を飲みだした。僕は彼の隣に止まって彼を見ていた。


それから、とりとめもなく僕らは話をして羽根を休めた。
またもやいつの間にか日は暮れていて夜が来る。
「二人は楽しいだろう?」
「かも、ね」
そう言ってまた笑う彼に僕は軽く微笑み返した。

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