07/26の日記

01:09
独りって寂しいから(創作:蝉と蝶)
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蝉は悲しい生き物だ。

誰か、僕を愛して!僕を見て!ほら、僕は此処に居るよって哀しく虚しく鳴くじゃないか。

そんな僕は蝉。
やっと外に出られたというのに哀しく鳴き続けている。
返事は無いし誰も来てくれない。

今日も羽根が痛くなるほど鳴くけれど。誰も来てくれない。
このまま明日もあさっても過ぎていって数日後には死ぬのかと思うとやるせない。
夕日を眺めながらそう思っていると一匹の蝶が僕に話かけてきた。
「なあ、この辺りで花畑とかってない?」
よくわからないけど多分アゲハ蝶だ。
「おい?」
僕はぼうっとアゲハ蝶の羽根を見ていた。
「なあなあ生きてるんだろう?返事しろよー」
「……知らない」
「え?」
「だから知らないっつの!」
ぽかーんとしている蝶を無視して僕は飛びさったけど、

「まてまて!じゃあ森、林でも良いんだ。知らないか?」
パタパタとよく見るとボロボロの羽根を羽ばたかせて蝶は追ってきた。
「…無いよ。見ての通り木が所々あるだけで後はビルだ」
「なるほど。通りで虫が少ないわけで」
もういいだろう、と僕は適当な木に止まってまたひと鳴きする。蝶はまだパタパタと飛んでいた。
僕は構わず鳴く。誰も返してくれないし誰も見向きもしてくれないし誰も来てくれない。もしかしたらこの辺りに蝉はもう居ないのかもしれない。なんだか僕ばかり鳴いている気がする。
「…なあ、俺達ダチにならねーか?」
「は?」
一心不乱に鳴いていたらいつの間にか隣に蝶が居た。
「独りは寂しいから」
そう言って蝶は笑った。



ーつづくー

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