ペルソナ3

□桜の花が咲く頃に
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屋上で私は、何をするでもなく佇んでいた。

棺薙さんと私は夏、秋、冬と3つの季節を越えた。

「…もう春ですね。棺薙さん。分かりますか?」

私は空を見上げながら言う。

返事は返ってこない。分かっているけれど、受け止めれない。

棺薙さんの笑顔が見たい。

怒っている顔でもいい。

顔が見たい。

あなたに会いたい。

――ぽとっ…

「…ぁ」

ぽとっ

「…だめ。泣いちゃ…」

涙は簡単には止まらない。

泣かないって決めたのに

そんなの私には無理だ。

棺薙さんがいなくなって私は壊れた。

大切な人を失って私はおかしくなった。

一緒の時間はたくさんあったのに。

大切だと思わなかった。

ずっと続くと思っていた。

棺薙さん。

会いたいです。

ワガママでしょうか?

あなたに会って、

桜が見たいです。

桜だけはまだ、一緒に見てないから。

出来ないと分かっているけれど。

無理なのは、知っているけれど。

私は屋上で呟いた。

「桜の花が咲く頃に、また会いましょう。」

と。
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