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□Yes、I'm happy
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今、幸せ、ですか?

はい、幸せです。

あなたは望んでいたものを手に入れましたか?

はい、手に入れました。

ずっと欲しかったものですか?

はい、ずっと、ずっと欲しかったものです。

最後にもう一度、幸せですか?

はい、とても。









自分の性癖に気づいたのは中学生だった。

男しか好きになれない。

周りの友達はどんどん女の子を好きになって付き合っていく。

そんな中、俺は一人気持ちを伝えられないままぽつんとしていた。

けれど、だからといってイジメられて悲観的な人生を歩んできたわけではない。

良い親、家族、友達に囲まれなかなか楽しい人生を送ってきた。


そんなある日。
俺は親戚の結婚式に呼ばれた。
凄く、凄く幸せそうだった。
人々に祝福され、新郎新婦ともに美しく、幸せそうだった。

いつか俺もあんなふうになりたい、運命の人と幸せになりたい。

でも、この性癖ではこの国で結婚式を挙げることはできない。

わかっていた。
自分にはどんなに望んでも無理だということは。

恋人が出来ても誰も結婚しようとは言わなかった。
言うわけがない。

これからも言うわけがないし、言われるわけがない、そう思ってた。

琉弥と出会うまで。









「結婚しよう」

「え?」

何を言っているんだ、この男は。

それからりゅうは夢の話、結婚式の話をしてくれた。


もしかしたら、夢だった結婚式を挙げることが叶うかもしれない。

けれど、日々の忙しさが拍車して結婚式の話は少し忘れつつあった。







それからりゅうが幼なじみの小木さんと話しをつけてくれたことを知り驚いた。そして、内心めちゃくちゃ喜んだ。

りゅうのプロポーズに正直俺は泣いてしまった。


「優衣、泣いてるの?」

「…泣いてない」

「泣かないで、俺達は今凄く幸せなのに」

りゅうは俺の前髪をかきあげ額にキスをした。

「…俺、ずっと憧れだったんだ。好きな人と結婚式挙げることが。ずっと叶わないと思ってた、でもそれをりゅうは叶えてくれた」

ぎゅっとりゅうの服を掴む。
そっと俺の手を包み指輪にキスをしてくれた。

「俺は、これから一生、未来永劫、健やかなる時も、病める時も、優衣を愛し共に二人で生きて行くことを誓います」

いつもの二人の部屋で、いつものだるだるの部屋着なのに、このりゅうは凄く綺麗だった。

「優衣は、誓わないの?」

俺の手を握ったままりゅうは上目遣いで見てきた。

「…俺も、何があってもどんな時でも琉弥と共に生きることを誓います」

今度は俺がりゅうの手を取り、キスをする。
いきなり、りゅうは手を掴み抱きしめてきた。

「ね、優衣。俺、本当に幸せだよ。優衣がいてくれたから、今まで生きてきて本当によかった。ありがとう」

「俺も、俺もりゅうがいなかったらこんな幸せになれなかった。りゅうだけだよ、結婚しようって言ってくれた人」

「…ね、今日はもうこのまま寝ちゃおう。お楽しみはまた今度。今日は俺の腕枕で寝よう」

「…え?」

「あ、今お楽しみに期待してたでしょ。大丈夫、次にはすごいことしてあげる」

「なっ、違うよ、別に期待なんか、」

全てを言い終える前に唇を塞がれた。

「今は次のお楽しみまで体力温存。今は、寝よう。俺、緊張して疲れちゃった」

そのままなだれ込むように俺達は寝た。







ああ、明日は結婚式なのだ。

たった二人だけの結婚式。

両親や家族には、子供の顔は見せてあげられないだろう。
このことは、正直凄く切なかった。大好きか両親、家族に悲しんでほしくなかった。

けれどそれ以上に、俺は琉弥が好きだった。
女の子と結婚して、子供が出来て極普通の家庭を持つことだけが幸せではない、と俺にプロポーズして教えてくれた人だ。

性別なんか肩書きにすぎない、好きな人と結婚し、暮らし、幸せになることはどんなものよりも変えられない素晴らしいことなのだ。

俺はそれを、その誠意を見せてくれた好きな人と明日結婚する。


ああ、どうか明日は晴れますように。




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