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□pray to god
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恋人が神様になった。

彼はずっと前から神様になりたいと言っていた。

俺を守りたいと言っていた。

誰よりも優しかった彼。

俺をいつも一番に愛してくれた彼。

ちょっとへたれなところあって、でも正義感が強かった彼。

そんな彼が神様になった。






彼と出会ったのは雨の日。

俺が喫茶店でぼんやりと雨の空をスケッチに描いていたとき。

「上手だね、美大生さん?」

顔を上げるとなかなかイケメンな男がいた。

「相席していいかな?」

静かに頷く。

それから何をするわけでもなく、一緒にいた。

俺は絵を描き、彼は俺の絵を見たり窓の外を見ていた。

「俺、君の絵、好きになった」

これ、と言って俺に紙切れを渡す。そこには電話番号とメアドがあった。

「気が向いたら連絡くれないかな」

少し恥ずかしげに笑いながら彼が言った。

はにかんだ笑顔に少し惹かれた。

「…絵好きって言ってくれてありがとう」

俺も不器用だけど笑顔を作ってお礼を言った。

空を見上げるといつの間にか晴れて虹が架かっていた。







最初はちょっと怪しい人かな、と思ったけれどその疑いはすぐ晴れた。

けれど、電話やメールは最初は怖かったからしなかった。

でもいつもの喫茶店で何回か会ううちに仲良しになった。

「美大生だよね、やっぱりすごく上手だ」

そう言って俺の絵を触る。

「美大生だけどそんなに上手いわけじゃ…」

「ううん、すごく上手だ、専攻は?」

「…油絵。絵好きなの?」

尋ねると彼はふわりと笑った。

「絵は好きだよ、でも…ね、名前教えて、呼びたいな」

そういえば名前すらお互い教えていなかった。

何がおかしいのかわからないけれど思わず笑ってしまった。

「俺なにかおかしいこと聞いたかな?」

「ううん、本当にそうだなって思って。名前、裕也」

「ひろや?綺麗な名前だね。ぴったりだ」

彼は一人で満足そうに微笑んでいた。

「…名前教えてくれないの?」

「教えるよ、秀司だよ」

「しゅうじ、さん?」

「うん。改めて言うけど、絵は好きだよ、でも裕也の絵が好きだ」

いつもよりずっと真剣な顔、瞳で俺のことを見る。そして手を握る。

「…こんなこと言うの気持ち悪いかもしれないけど、好きです。裕也さんが好きです、付き合って下さい」

驚いて彼を見る。
「あの雨の日から俺は裕也さんのことばかり想っていました」

気持ち悪いかもしれないけど、と彼は呟く。

男に告白されるのは初めてじゃない。でも、今までの男達は俺のことよりも欲望って感じだった。でも、彼は少し違う気がする。

俺は返事をする代わりに彼の手をぎゅっと握った。

彼は少し目を見開き、それから頬を赤くして嬉しそうに笑い、俺よりも強く手をぎゅっと握った。




この日から俺達は恋人になった。




彼は、秀司さんは、なかなか優秀な人で、国立大学を卒業したあと有名な企業に就職していた。

忙しいのにいつも俺のために時間を割いてくれた。

デートはいつもの喫茶店やちょっと遠出するくらい。

ある日、秀司さんに家に来てほしいと言われた。

大学が終わってから行きます、と告げた。

大学まで迎えに来てくれて秀司さんの自宅まで行った。

部屋に入った瞬間に後ろから抱きしめられた。

「…ずっと我慢してた、ひろが欲しい。」

秀司さんの手が、右手が胸元を滑り、左手が下半身をまさぐる。

いいかい?と耳元で囁かれる。

「…俺も、秀司さんが欲しい」

言った瞬間に激しいキス。

「寝室に行こう…」


どんどん自分の服が脱がされていくのをぼんやりと見ていく。

「俺だけ脱ぐのは恥ずかしいよ、秀司さんも脱いで」

そう言うと俺の頭を撫で、あっさりと脱ぎ始めた。シャツ、ズボン、下着、全裸になった秀司さんは、これでいいかい?と笑った。

少し気まずくて目を逸らす。自分は恥ずかしくてあまり勃ってはいなかったけれど、秀司さんは完全に勃ち上がっていたからだ。

「ひろ…君のことが本当に好きなんだ、どうしようもないくらい」

そう言われて強く抱きしめられる。首筋を舐められ、胸の突起を弄られる。

「ん…、そこばっかりそんなに弄らないで、」

舌はどんどん下に行き、反応しかけていた俺の性器に絡みついた。

「あっ、そんな、いきなり駄目だって、やぁ、秀司さんっ」

根本を扱かれ、裏筋を舐められ時々カリの部分に歯をたてられる。秀司さんは無言で俺を攻め立てる。

「秀司さんっ、もう離して駄目っ、イッちゃう」

「俺の口でイッていいよ」

「違っ、…秀司さんとイキたい」

秀司さんは目を見開き俺を見て、笑って俺にキスをした。自分の精液の味のキス。

「いいよ、一瞬にイこう」

言われて俺は両足を思い切り開かれる。後孔に濡れた指があてられた。
指いれるよ、と囁かれ頷く。最初は優しく、徐々に激しく。

「あっ、そこやだ、駄目触らないでっ」

「ここ好き?」

「あっあっ、駄目っ、もういいから、挿れて」

指は三本に増えていた。秀司さんは執拗に前立腺を攻め立てた。

「ひろを傷つけたくないんだ…」

「いいの…早く挿れて」

秀司さんはちょっと困ったような顔をして、俺の中から指を抜いた。

「挿れるよ…」

「いい、ゴムも付けなくていいから、」

早く挿れて、秀司さんの首に抱き着き囁く。

熱くて大きな秀司さんの性器が蕾に押し当てられる。

一息にずん、と突かれる。俺の感じるところを的確に突いてくる。

「ああああ!、ひ、激しっ」

俺を穿つ秀司さんは余裕がなさそうに見えた。俺の完全に勃ち上がった性器も激しく扱く。

「駄目っ、触っちゃや、あっ、やぁっ」

「ひろ…」

「んっ、やぁ、イクっ、イッちゃうっ!」

秀司さんが上手いのと、緊張といろんなものが混ざり合って俺は限界が近かった。

「いいよ、一緒にイこう」

「手、手繋いで、秀司…」

必死に訴え、手を伸ばす。力強く握られ、抱きしめられる。

「や、あ、あっ、イク、ああああ!」

体をびくびくさせながら俺はイッた。それと同じくらいに秀司さんが低く小さく呻き、体の奥に暖かいものが注がれた。

「ひろ、裕也…」

イッてぐったりしている俺の体をぎゅっと抱きしめる。

秀司さん、と小さく呟いて俺の意識はここで途切れた。







「…こんな俺のどこが好きなの?」

シーツにくるまりながら秀司さんに問う。秀司さんはシャワーを浴びたのか髪から雫を垂らしながら、俺の頭を撫でている。腰にタオル一枚という姿で。そんな姿も格好いい。

「どうしてそんなこと聞くの?」

「だって…秀司さんみたいな頭も良いし格好いい人がこんなしがない学生を好きだなんて、信じられない」

俺の言葉を聞き秀司さんは笑った。

「ひどいなぁ、俺はひろのことこんなに好きなのに」

シーツごと俺を抱きしめる。

「だって…出会いがおかしかったもん、ナンパでもないし…」

「…あの時ね、ひろを見た時、俺の中の何かが反応したんだ。あぁ、この子は俺の運命の人だ、って話しかけないと次はないって思ったんだ」

そう言って俺に触れるだけのキスをたくさんする。

「でも俺男だよ…結婚もできないし、子供も産めないよ…」
「そんなことはいいんだよ、俺は好きになったなら男も女も関係ない主義だし。男を抱いたのは初めてじゃない、ひろも抱かれるのは初めてじゃないだろ?」

その言葉を聞き、びくっとする。確かに俺は初めてじゃない。高校時代に処女を捨てた。

「そうだけど…」

高校時代、先輩に告白されて抱かれた。優しい人だった。

「ひろの過去まで束縛しようなんて思ってないよ。ただ、これだけは約束する。俺が生きてる限り俺が裕也を捨てることはないよ」

俺の運命の人だから、そう言って抱きしめキスをして胸に頭を押し付ける。

「信じてくれるかな?ひろと、ひろの絵を見た瞬間この子と俺は絶対一緒になるって思った」

「…一応信じる。とか言ってあっさり捨てないでよね」

「ひろに話し掛ける時、俺心臓爆発するんじゃないかってくらい緊張したんだよ。無視されたらどうしよう、なんだこの親父って言われたらどうしようって思ってた。でもひろはそんな俺にちゃんと振り向いてくれた」

そりゃそうだ。見ず知らずの男に話し掛けるんだもん。

「ね、今日は泊まっていく?」

帰す気は最初からないけどね、そう囁いて俺を押し倒しまたセックスして二人で疲れて眠りについた。







俺は学生。秀司さんは社会人。この壁は結構高いものと秀司さんと付き合ってわかった。

秀司さんは製薬会社に勤めていて研究員をしていると聞いた。俺の友達から聞いた話だと企業の研究員をしているのは優秀な人しかできない、と聞いた。

秀司さんはいつも忙しそうで、ちらりと手元の資料を見たら全文英語の書類だった。

俺は学生、けれども課題や講義があってなかなか忙しい毎日を送っている。

大学の課題で人物画を描いたとき教授に、雰囲気変わったねと言われた。

確かに最近そう言われることは多くなった。

「君はもしかして恋をしているんじゃないか?」

教授に言われどきっとする。

「前の君の絵は淡々としていて寒色系だった。けれど今は柔らかくなり暖色系になった。でも、何より描いている君自身が嬉しそうだ」

教授に言われて自分の絵を見る。柔らかい暖かみのある静物画。最近の絵はこんなものばかりだったのかもしれない。前は雨や曇り空を描いていたけれど、今は晴れの空を描いている。
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