Main

□goodbye
1ページ/1ページ


恋人が死んで三年になる


俺は今でもあいつを忘れられない


俺が殺したも同然だからだ


たまに夢にみる


あいつのことを



両想いだった。

ただただ嬉しかった。

玉砕覚悟で告白した。

返事はこちらこそよろしくお願いします、だった。

嬉しくて嬉しくて叫び回りたかった。

啓は俺のものだって世界に言いたかった。

啓を見ると恥ずかしそうにはにかんでいた。


それから俺達はずっと二人でいた。

家庭的で優しくて明るい啓。

柔らかな笑顔が好きだった。

初めて身体を繋げる時も恥ずかしがって俺の顔を見ようとしなかった。

行為が終わった後もずっと処女のように顔を赤くしていた。

愛しくてずっと抱きしめていた。

こんなふうにずっと幸せが続くと思っていた。


付き合って一年半くらいたったころから啓が元気がなくなってきた。

心配し聞いてみると、ストーカーにあっている俺に告げた。

警察に届けようかと啓に聞いたら、男がストーカーにあってるなんて言えないと言われた。

この時、恥ずかしくても警察に届けておけばよかったと今でも後悔してる。

ストーカーは、無言電話や毎日手紙をよこしたりすると啓は言っていた。

手紙の内容は毎日啓がどれほど自分を求めてくる妄想小説や使用済コンドームなどだった。

啓は気持ちが悪くて仕方がないと俺に泣きついてきた。

どうにかしたかったけれど、相手が誰だか分からず特定もできなかった。

相手が分からないまま数週間が経った。

啓が突然いなくなった。

連絡がないまま突然俺の前から消えてしまい酷く困惑した。

急ぎの用かなとも思ったけれども、少しは連絡するよなと思いさらに困惑した。

まさか、と思った。

啓に纏わり付くストーカーが啓をさらったのではと疑った。

友人達にも啓の行方を聞いたりあちこち探し回ったりした。

それから啓がいなくなり一週間が過ぎた。

俺の元に一本のビデオテープが届いた。

不信に思いながらも再生することにした。

知らない場所がテレビに映し出された。薄暗い部屋だった。

画面が変わり、ベッドが映された。ベッドの上に誰かがいた。

よく見ると啓だった。

両手両足縛られており眠っているようだった。

ガチャリとドアが開き複数の足音と男達の話し声が聞こえてきた。

「まだ寝てんのか?」

「お姫様はまだ眠たいみたいだな」

知らない男達だった。
全部で5人いた。

「これビデオ撮れてんだろ?」

「バッチリ撮れてるよ」

そうして近くにあったソファに1人が座った。

「今このビデオを見てる彼氏さん、どうも啓ちゃんのストーカーの1人です。びっくりしたでしょ、ストーカーって1人じゃないんだよ。」

画面には上手く顔が隠れるように映っていた。

「単刀直入に言うけど今から啓ちゃん犯すね。俺達さ、いつも電車で会う啓ちゃんが好きになった共通5人組」

ただそれだけ、と言って男はケラケラ笑った。

何を言っているんだ、この男は。

背筋に冷たいものが走った。

「それじゃ準備して」

男はそう言ってベッドにいる啓の元へと歩き、その他の男達も続いた。

「おはようお姫様、よく眠れた?」

ベッドへ座り啓を揺り起こす。

「誰…?」

眠たげに啓は答える。

「早速だけど犯すね。時間ないから」

そう言って啓を抱き抱え仰向けにさせ服をビリビリ破いていく。

「何っ?やめて!!」

両手両足を縛られて身をよじるくらいしか出来ないけれど啓は必死に抵抗していた。

「あんまり暴れないで、こっちがやりづらいから」

「あなた誰?何でこんなことするの?」

「啓ちゃんは気づいてないの?…君のストーカーだよ」

そう言われて画面でも分かるくらい啓は真っ青になった。

「おとなしくなったね。嬉しいよ、夢の中で何度も抱いていた君を現実で抱けることができて」

男は嬉しそうに言い、啓の両足を思い切り開く。

「やめて!!」

頬を真っ赤にさせて啓が叫ぶ。

「思った通りだ…啓ちゃんのここは薄くて綺麗なんだね」

男は啓の中心を撫でている。

「やめて…触らないで、見ないで!」

真っ青になり怯えながら啓が叫ぶ。

恐怖で縮こまった啓の性器を男がゆるゆると扱く。

「勃たないね、怯えてる?」
真っ青な啓がいやいやするように首を振る。

「本当はもっと触りたいんだけど時間がないから…舐めてくれる?」

男は自分の完全に勃ち上がったものを啓の口に押し付けた。

啓の顔がくしゃりと泣きそうに歪みただ震えていた。

「啓ちゃんには可哀相だけどお願いじゃなくて命令」
男はそう言い啓の頭を優しく撫でる。

啓は涙目で睨みながら恐る恐る口を開け男の性器を口に含む。

「ん…」

涙目になりながら啓は男の性器を舐めていた。

ほんの少しフェラをしただけで男はもういいと啓に告げた。
「もういいよ、啓ちゃん。フェラも好きだけど早く君に挿れたいんだ」

男は啓の両足を思い切り開き自分の性器を啓の蕾へと当てた。

「ひっ…やめて…!」

「慣らさなくてもいいよね?毎晩彼氏とヤッてるんでしょ?」

そう言って男は啓の腰を掴み一気に突き入れた。

「あああああ!!っ痛い!いやっ抜いてぇ!」

「うわ、すごきつい」

男は嬉しそうに啓の腰を掴み思う存分揺さ振っていた。

「痛いっ!いや!あっ、動かないでっ」

啓が泣きながら訴える。男との結合部を見ると血が流れていた。俺は啓とセックスするとき十分に慣らしてしていた。

「あったかいなぁ、いいな…彼氏さんは君を一人じめしてるんだね」

「あ、いやっ、司には手ださな、でっ」

男はクッと喉で笑い、

「出すわけないじゃない、俺達は君に興味があるんだから」

そう言うと一層激しく腰を打ち付けた。それと一緒に啓の性器も激しく扱いた。啓は悲鳴のような声を上げてイッた。

「あ、イッちゃった?まあ、俺もそろそろだからっ」

啓はもうただ揺さ振られてひーひー泣いていた。

男がぶるりと震え腰を打ち付ける。

「っふ、うぇ…つかさぁ、助けて…」

「泣いてるの?ごめんね、でも君が可愛すぎるのがいけないんだよ」

「おい、終わったか?次は俺達の番だぜ」

今まで画面に姿を現さなかった男達が出てきた。

「うん、俺はもう済んだからもういいよ。後は好きにやっちゃって」

そう言うと男達は啓に群がった。

「いや!来ないでっ!助けて、助けて司!」

嫌がる啓を無理矢理抑え込み、男達は啓に群がった。


それからは見ていられなかった。

洗面台に駆け込み、吐いて吐いて吐きまくった。

画面では男達が啓に様々な体位やプレイを強要させていた。

吐きながら泣いた。胃から何も出なくなるまで吐いて泣いた。

それからフラフラと画面の前まで行き、ビデオを取りだし壊した。ぐちゃぐちゃになるまで殴って壊した。

そして家を飛び出し、啓のアパートまで駆け込んだ。

啓はいた。ベッドで眠っていた。

でも息をしていなかった。

ベッドの脇に睡眠薬が置いてあった。啓は軽い不眠症の持ち主だった。

それからはよく覚えていない。

救急車を呼んで病院へ行った。

死因は過労と睡眠薬によるものだった。

検死した医者は、
「死因は主に過労だなぁ…でも多分彼は、忘れたくて睡眠薬を飲んだんだと思う、死ぬつもりはなかったと思うよ」

口ぶりからしてレイプされたのは気づいていた。

その言葉を聞き俺は黙ってただ泣いた。



あれから3年が経つ。

俺はよく二人で行った海に来ていた。

俺も年を取った。でも啓はあの姿のまま写真の中で笑っている。

ストーカー達を憎んでいるというより自分自身を憎んでいた。

俺がもっとちゃんと守ってあげたらこんなことにはならなかった。後悔ばかりつのる。

でも、それでは前に進めない。俺もそろそろ寂しくなってきた。新しい人を見つけないと、と思うようになってきた。

「…ずっと好きだよ、多分これからも啓は俺の中で一番だと思う。でもそれじゃ駄目なんだ、俺は前に進むよ」



だから、さよなら



声にならない声で呟き、啓の好きだった花を海に流した。




`
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ