僕等の出会い

□僕等の出会い*イタズラ*
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コン  コン


あぁ、この白い部屋に居て何度この
音を耳にしただろうか。
俺が動けない事は皆、分って要る筈なのに
何度も何度も同じ時間に必ずこの音を聞く。
正直、入る合図をしなくても
俺は一度たりとも病室を抜け出した
経験が無いのだから看護婦も毎日同じ事を
繰り返さなくても良いと思う。


『・・・どうぞぉ〜。』
 

そして何度この言葉を吐いただろう。
・・・いや、数えるの面倒くさいからやめよう;;



この県では一番大きいとされている大型病院。
その病院の一室、6階の一番端の病室に
毎日同じ事の繰り返しに悪態を付いている
アスカが居る。
ここ数ヶ月、体の調子が悪く担当医に『少し入院して様子を見てみましょう。』と言われ入院している。
しかし、その理由はアスカを宥める理由でホントは
もう、いつ止まっても可笑しくは無い心臓のドナーを
探している。



『じゃ、アスカ君、点滴変えるわね。』
『へぇ〜い。』


いや、ホント毎日毎日毎日・・・・・・。
はぁ〜、同じ事の繰り返しで嫌になる。
体調が悪い原因が分る前に脳みその方が
可笑しくなりそうだよ;


『看護婦さぁ〜ん、なんか面白い事ないの〜?』
『ん?面白い事?・・・・夜に地下に行って見れば?』
『いや;;それって患者におススメしていいわけ?』
『フフッ、アスカ君は特別よ♪♪』


いや特別も何も・・・患者に教えちゃ駄目じゃね?
まぁ、夜は眠いから明日の朝にでも行くかな。




『・・・・ホント、つまんね。』


ボソッ、と呟いた言葉。
入院してから絶対安静と云われ2,3回程しか
外に出た事が無い。
もし、何不自由がなく過していたら今頃
仲間達と共に海にでも行っているだろう。
そんな自由が出来ず何気なしに出た言葉。
その言葉を耳にして少し悲しそうな目をした
看護婦が言葉をかけた。



『・・・・アスカ君は良い子だから、もしかしたら
神様が何か起してくれるかもよ。』
『いや;この年で良い子って言われても;;』



その場凌ぎの言葉かも知れないが明日死んでも
可笑しくない子の姿を見れば必ずしも何か希望を
持たせてやりたいと思ってしまう。



『・・・・・俺は、こんな人生を遣した神なんて信用しないけど。』
『・・・・・。』


少し流れる沈黙。
顔を外に向け元気に走り回る子供達を
目で追いかける。
まだ、人生の半分にも達していない子供が神を信じず
現実を見つめている。
もう、これ以上下手な言葉を言えば本当の病気が
バレてしまいそうで言葉がつまる。



『さぁ、点滴交換終わり!!』
『あざぁ〜す。』
『今日は誰かお見舞いに来るの?』
『・・・・今日も誰も来ません。』



も。と云う台詞を強調してワザト呆れ顔になる。


『じゃ、今日は美人な看護婦さんがTVテレカを
奢ってあげるわ♪♪』
『まじっスかっ!!看護婦さん大好きっ!!!』



そう言ってナース服のポケットから出された
テレカを貰い、テレビに挿入する。

ここの病院は結構次世代系の病院なので
1枚のテレカを入れればテープやDVDを半日程
観ていられる。




『じゃ、またね。』
『おう♪』


テレビに夢中になり言葉だけ看護婦に向ける。
神様。もし居るのならこの子に・・・・・。そう、
漫画みたいな事を祈りつつ扉を閉める。








さぁ、始まるよ。




神様が2人に送った、最初で最後の恋が。。。。

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