文
□掌中の温もり
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「キャーーッ!!」
窓の外から女の人の叫び声が聞こえた
すかさず窓に駆け寄り、下を覗く。
どうやら、木登りをしていた子どもが足を滑らせて落ちたらしい。
それほど高い木ではなかったので、軽傷ですんだようだ。
胸をなでおろし、アルの方を振り返る
「アル?!」
アルの様子がおかしいので、そばに行き手を握る。
すると、アルの手は冷たく 震えていた。
瞳は行き先を失い、空をさまよっている。
「いやだ……いっ…いやだァッ!!」
握られた手を拒絶し、エドワードを突き飛ばす
「くっ……アル!」
バランスを崩して ベッドから落ちたアルフォンスに駆け寄ろうとすると、部屋の隅に行き、必死に逃げようとする
「アル!落ち着くんだ!!」
「いやだ!!こっち来るな!!うっ…ウワァ!!くるな!!くるな!!くるな!!くるなァァアーッッ!!!」
もう、完全に正気を失っている。
目に涙をうかべ、両手を必死に振り回しながら叫び続けるアルフォンス。
俺はただ、その光景を見ながら立ち尽くすしかできなかった…
── つづく。