novelB

□O
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「お祭り?」



「ええ。さっきのお店の人が教えてくれたの。明日はこの島のお祭りがあるみたい。」




次の日、買い物を済ませた私とロビンはカフェで一息ついていた。
多めに砂糖の溶けた甘いカフェオレが、歩き疲れた体に優しい。




「わぁ!行きたいっ!ルフィなんか大喜びするわよ。」



「ふふっ、想像できるわね。」




言われてみれば、この島に辿り着いた時よりも、町の中には華やかな装飾が増えた気がする。
祭りと聞いただけで心がワクワクするのは、皆同じだろうか。




「荷物も多いし、一度船に戻りましょうか。」



「あー…、もう一ヶ所だけ行きたい店があるの。ロビンは先に戻ってていいわよ。」



「そう。じゃあ気を付けてね。」




カフェの前でロビンと別れると、私はその足で本屋へと向かった。
もしかしたら、あの本がもう一冊あるかもなんて期待して。













「……あった。」




あの時と同じ場所に、同じ本が置かれていた。今まで散々、色んな島で探して来たのがバカらしく思える。




「…なによ、別に取り合いする必要なかったじゃない。」




手に取るとレジで会計を済ます。パラパラと簡単にめくると、早く船に戻って中身を読みたくなった。







指輪…、返さなくちゃ。ついでに代金も請求しなければ。
明日になればどうせ会う。わざわざ私から出向く事もない。




なんて考えているうちに、それでも進んだ足はハートの海賊団の船の近くまで来ていた。




「………。」




来てみたはいいものの、この後の事なんて考えていない。




こないだみたいに、出てくるのをここで待つ?
呼びに行く?
まさか、そんな事は出来ない。





「やっぱり…、帰ろう。」




船に背中を向けて歩き出す。数歩進んで、一度だけ振り返る。
なんだかとても無駄な事をしている気になって、ため息混じりに息を吐き出した。















「明日お祭りがあるらしいわよ。」



「ええーーっ!!祭りっ!?行くっ!おいっ野郎共!明日は祭りだ!」



想像通りの大盛り上がりにロビンと視線を合わせて笑う。




ルフィとウソップとチョッパーは、何やら即興のお祭りソングを肩を組んで歌っている。




「あんた、もうおこづかい無いんじゃないの?」



「ハッ!!」




途端に青くなるルフィと…チョッパー。
あんたもかっ!とツッコみたい気持ちを抑えて、ぐるりと見渡してから発表する。




「明日は特別にお祭り用のおこづかいをあげるわ。無駄遣いしないで計画的に使う事。とくにルフィ!わかった?」



「お前って…、いいやつだな!よし、前夜祭やろう。サンジ、肉と酒っ!」




ルフィの気まぐれで始まった宴会だけど、酒が入れば盛り上がるのは簡単で、夜が更けてもそれは続いた。




お酒で火照った頬を冷やしたくて甲板へ出る。
雲一つない夜空を見上げて、明日の晴れを確認する。




運良くと言うべきか、この島にいる間は晴天続きだ。
出航する明後日も、今日の様に晴れて欲しい。










コンッ コンッ と、何かがぶつかる音がする。




「何…?」




音の出る場所を耳で探す。
音はまだ続いている。




「外からだわ。」




音を頼りに船体から顔を出すと、音の正体がペンギンだと気付いた。




私に向けてヒラヒラと手を振ると手招きをする。




「来いって事よね…。」




誘われるがままに船を下りてペンギンの前に立つと、ペンギンはとても嬉しそうな顔になった。




 

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