novelB

□I
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船長に私達を知らせる声を聞くと、サンジ君はイスをくるりと回転させて酒場を占領している海賊達へと向きを変えた。




「ち、ちょっと!サンジ君!」



「お楽しみのとこ邪魔して悪いが、あんた達の船長ってのはどいつだ。」




いきなりのサンジ君の動きに驚いて、相手の出方が気になり彼らへと視線を向ける。




「………?」




いない。




ペンギンと…、もう一人のキャスケット帽の男がこの場にはいない様に見える。




キョロキョロと見回す私の横で、サンジ君は煙草に火をつけた。




「キャプテン、ご指名だよ!」



「らしいな。…どけ。」




奧の方から声が聞こえると数人の男が席を外す。すると白熊を横に携えた、手配書通りの男が見えた。




「サ、サンジ君。あいつよ、船長のトラファルガー・ロー…!」



「…あんたがハートの海賊団の船長か。おれは麦わら海賊団でコックやってるサンジってんだ。覚えときな。」




サンジ君の袖を引く。男っていうのはどうしてこんな時でも、自己顕示欲を出したがるのだろう。




「へえ…。いい女連れてるじゃねえか。泥棒猫…だろ?」



「そうよ。」




ニヤニヤと不気味に笑うトラファルガー・ローは、然したる危機も感じずに深々とソファーに腰かけている。




「邪魔して悪かった。あんたの事を一目見ておきたかったんだ。うちの船長は戦闘の意思はない。」



「そうか。ならもういいだろ。ベポ、酒。」




すでに興味を失ったのか、トラファルガー・ローは隣の白熊に酒を注がせると、持っていたオリーブを口へ運んだ。




「ナミさん、出よう。」




サンジ君に促されて席を立つ。
もう一度見渡すも、やっぱりペンギンの姿は無かった。













「…ああ、そうだ。」




扉を出る直前に、トラファルガー・ローの声が背後から聞こえた。




「お前らのとこの長っ鼻、うちの船にいるぞ。」









「……は?」



「邪魔だから早く引き取ってくれ。」




サンジ君と顔を見合わせる。
背中に嫌な汗が流れる。




「無事なんだろうな。」




「さあな…。行けばわかる。」



「…ウソップに何かあったら覚えておけ。絶対許さねえ。」




したたかな笑みを浮かべると顎を浮かせて出ていけ、と合図を出すトラファルガー・ローをサンジ君の後ろから睨み付ける。




「クソ野郎が。」




サンジ君に肩を掴まれてその場から離れる。
嫌な予感が体を包み込んだ。





 

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