novel2

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「あ。」
「あ。」




立ち寄った本屋で見つけた、やっと見つけたお目当ての本。



航海士の私には必要な情報が詰まっていて、前から喉から手が出る程欲しかった本。




ここに来るまで、いくつの島の本屋をまわったかわからないくらい。




そしてやっと見つけた本に手を伸ばすと、横から大きな手が伸びて来て、同時に同じ本を手に取った。




「悪いけど、これは私が先に見つけ…。」




「あ。あんた。」




見覚えがある顔。




うーんと、こいつはあれだ。あいつだ。




「どこかで会ったわね。誰だっけ?」




「ひでえ。」




本当は覚えてる。
私の脳裏に強烈な印象を残した男。




「…この本、あんたには必要ないと思うわよ?離したら?」




「そっちこそ、早く離した方がいいな。このままだと本が破けちまう。」




「わかったわ。じゃあ、せーの、で離しましょう?どっちが買うかはその後決めればいいわ。」




「…わかった。」




「「せーのっ!」」




「あーっ!」




呆れちゃう。こいつ本当に海賊?単純にもほどがある。




「悪いわね。譲ってくれてありがとう。」




「海賊女め…。」





「なに?海賊男さん。」





「それはなぁ、その本は、おれが今までどんだけ探して来たと思ってるんだ!」




私と同じだわ。
こいつ…もしかして。




「知らないわよ、そんなの。それよりあんた航海士?」




「悪いか。」




「ハートの海賊団も、よくここまで無事に来れたものね。」




「どういう意味だ。」




「そういう意味よ。」




こいつを相手にしてる場合ではない。
さっさと会計済ませて、早いとこ立ち去ってしまおう。これ以上の関わり合いは無用だ。





レジに向かう足が徐々に早まっていって、最後には小走りになっていた。




「おじさん!この本ちょうだい!いくら?」




店主だろうレジにいる中年の男の前に本を差し出す。
えーと、なんて言いながらもたつく男に内心イライラとする。




「おじさん、私急いでるの。早くしてくれない?」




「あー、すまんね。ええと…。」




ふいに背中に何かがドン、とぶつかったと思うと、後ろから伸びてきた腕に抱きしめられた。




大きな体にすっぽりと収まって、私の体は一瞬で身動きが取れなくなってしまった。




「ち、ちょっと!何なの!?」




「ん?」




しらじらしい返答と同時に、動きを封じられた私の頭に顎を乗っけて、男は何食わぬ素振りで本を手にした。




「じゃっ、代金よろしく〜。」




「えっ?ちょっと!」




私を掴んでいた腕が緩むと、あっという間に身を翻して、気付いた時には男は店から出て行ってしまった。




「は?えっ?ち、ちょっと!ちょっと待ちなさいよ!!」




「お嬢さんお金!!」




「ああ、もうっ…!!」




財布からいくらかのお金を掴んで店主に渡すと、私は男を追いかけて店を後にした。



 

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