novel

□君を想う
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大空を舞う一羽の鳥



翼を羽ばたかせ、上昇と下降を繰り返す。なんて自由なんだろうか。



「…うまそうだなー。」



そこによだれを垂らしながら眺める白熊一匹。



「…………。」



うまそう、とは思わないがなんとなくその鳥を目で追った。
そして同時にあいつの事を想う。






2年前だった。最後に会ったのは。それから麦わら屋一味の行方は知れなくなった。
世間では身を潜めているだの、一味全員死亡だのと様々な噂話が出たが、今はもう噂をする者も少ない。



一度麦わら屋には会ったが、精神的、肉体的にかなりの深手を追っていて話どころではなかった。








ナミ。お前は今どこにいる。









死んだなんて、はなから信じていない。
それは確信に近かった。
大空を舞う鳥になって、今すぐにでも探しに行きたい。
なんて、おれらしくない。自分で自分がおかしくて笑った。





「あ、キャプテン、ニュース・クーだ。新聞持って来たみたいだよ。」



ベポは新聞を受け取ると、それをそのままおれに手渡す。



面白い記事なんかあるもんか、パラリと新聞を開くと見出しに目が釘付けになる。





《麦わらの一味完全復活》





そこには、あまりハッキリとは表情が見えなかったが、以前より髪の伸びた、愛しい彼女が載っていた。





「…心配かけやがって。」



口許が緩むのを隠せない。何度も新聞に写るナミを見た。



その髪に触れたい。抱きしめて、窒息寸前まで溺れさせたい。 その柔らかい体に思いっきり歯を立てたい。





「…ナミ。」



名前を呼んだ。ここからでは遠くてとても届かないけれど。



「キャプテン、なんか書いてあった?すごい嬉しそう!」



そう近づいて来たベポに新聞を渡すと、再び大空を仰いだ。



生きているのがわかった。今はそれだけで十分だ。



あの鳥の様に自由ではないけれど、どんなに遠くてもいつでも君を想う。




END
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