novel

□始まり
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今夜は新しい島上陸記念と称して、一味は宴会を開いた。


乾杯から大盛り上がりなのはいつもの事。笑い話をツマミに酒をあおる。
お酒のすすみも早く、クルー達はあっという間に酔い潰れその場で眠ってしまった。


そんな中で平然とお酒を飲み続ける二人―――


「あ〜あ、結局みんな潰れちゃった。本当だらしないんだから。」


ナミはグラスにワインを注ぎ、まるでジュースを飲んでいるかの様に飲み干した。


「まーいつもの事だろ。」


ゾロは辺り一面に転がる潰れた船員達を見回して呟いた。


「まぁいいわ。仕方ないからあんたに付き合ってあげる。」


「ふん。勝手に言ってろ。」


大抵最後は二人になる。ナミとゾロが二人で他愛もない会話を楽しむのは、正直こんな時くらいだ。
普段は話さない様な故郷の話や、今までの島の話。あまり饒舌でないゾロも、こんな時はよく話した。


ナミは新しいワインを探しに立ち上がる。
歩き出そうという時に、足元のボトルに躓いて体勢を崩してしまった。その瞬間―――


「大丈夫か。」


とっさに出したゾロの右腕にナミは支えられていた。


「あ…ありがとう。」


「…おれも一緒にいく。」


ゾロは立ち上がるとナミの横をすり抜けて酒の棚に向かった。


「ゾロもお酒無くなったの?」


ナミが聞いたが、ゾロは何も言わずに棚からワインを取り出すと、ナミに手渡した。
ワインは棚の上部にあったんだとナミはその時に気づく。その高さではナミには届かない。


ゾロはそのまま何も取らずに自分の席へ戻る。


「…ありがとう!気が利くじゃない!」


ポンッとゾロの背中を叩いて自らも席につく。


「別に。当たり前の事しただけだ。」


ゾロは自分のお酒を注いであおる。
ナミはそんなゾロをまじまじと見つめて言った。


「あんたって何気に優しいわよね。」


ゾロはブッと飲んでいたお酒を吹き出してしまう。


「なんだよ、いきなり。」


「だって、いつもは魔獣みたいな恐面なのにチョッパーの面倒とかもよくみるし。思えばさっきみたいな、さりげない優しさが多いのよね。」


「…恐面関係ないだろ。だから、当たり前の事をしてるだけだ。誰だって同じだろ。」


「なかなか気づかないとこをフォローしてくれるって言うか…。私そんなあんた好きよ。」


《好き》と言う言葉に、ゾロは再びお酒を吹き出してしまった。そして一瞬で耳まで赤くなってしまう。


「あははははっ!何照れてんの?」


ナミはそんなゾロが可笑しくてつい大笑いをする。


「うるせー。」


ゾロはナミに見られない様にクルッと背を向けてしまう。


「ちょっと!その顔もう一回見せなさいよ!」


ナミはゾロの肩を掴み、振り向かせ様と力いっぱいに引っ張るがびくともしない。


真っ赤になって照れるゾロなんてそうそう見れるものじゃない。明日の笑い話にしてやろう―――と思っていた。




いきなり力が緩んだと思ったら、ゾロはナミの方へ向きそのままナミに口づけた。


「…んっ。」


ゾロはナミの口の中へ舌を滑り込ませる。力強い獣の様なキス―――


「っはぁ。あぁ。」


ナミは抵抗する間もなく、ゾロのキスに溺れた。


「っん、はぁ。」


ゾロの舌はナミのものと絡まり、二人の体を熱くさせる。




体が離れると、ゾロはナミを見た。潤んだ瞳と上気する頬、自分のものか相手のものか、わからないもので唇が湿っている。


「てめー、すごいエロい顔してんぞ。」


そう言うとナミの顔に一瞬で火がつく。


「…なによ。何してんのよ。」


ゾロは鼻でフンッと笑ってナミの瞳を見据える。


「お返しだ。お前の顔も真っ赤だぞ。」


ナミは自分の顔がすごく熱を帯びている事がわかった。


「…誰か起きたらどうすんのよ!バカ!」


ナミはゾロの胸ぐらを掴み上げ顔を近づける。


「あんたが火つけたんだからね。最後まで責任取りなさいよ。」


そのまま唇をゾロに押し付けて首に手をまわした。ゾロはそれを受け止めて抱えあげ歩きだす。


「望むところだ。」


二人は熱くなった体を求めてその場から姿を消した。



END
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