素敵な頂き物&捧げ物

□One wing bard
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そう言うと涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を上げながら
「にいちゃもトゥミが大好きだぁぁぁっ!!」
と更に号泣した。
「もー、泣かないで。明日にはお父さんもお母さんも帰って来るんだよ?」
両親は聖域を守る戦士。私達、鍵の一族は成人すると皆戦士か巫(かんなぎ)と呼ばれる巫女・男巫(おとこみこ)になる。
成人は15歳。だから村の仕事や家事は子供かお年寄りか…私の兄のように体が悪くて成人しても戦士や巫になれない者がする。
「だって、だってぇ〜…トゥミが可愛すぎるんだもん〜」
涙でベタベタのほっぺで頬ずりされながら、私は明日の事を考える。
(明日は聖域の鍵を受け取る日…)
14歳の誕生日、聖域の鍵を埋め込んだ杖を1年間…巫となる者は肌身離さず守らなければならない。そして、15歳の誕生日……扉の一族から選ばれた戦士と共に聖域の扉を開き、其処で永遠の愛を誓う…。
私の前に巫になった人は13歳年上の、2軒隣に住んでいたお兄さん。今は聖域へ行った際に身に着けた予言の力で此処、鍵の一族の村を守っている。
「ありがと。にいちゃ。
じゃあ、せっかく作ってくれたご飯、冷めないうちに食べよ?」
「そうだねっ」

私の大好物いっぱいのご馳走を二人で食べ、今日は早めにベッドに行く。
「あ〜ぁ…トゥミも来年の明日、結婚かぁ…」
藁を積んでシーツを掛けただけの質素なベッド。兄は隣のベッドでそう残念そうに呟く。
「結婚って言われても…全然実感ないよ」

巫になれるかは生まれた時に聖域の石を握らせると分かるそうだ。
だから鍵の一族の赤子は生まれてすぐにその聖域の石を握らされ、聖域の石が黄金に光輝くとその子は巫と決まる。
そして、巫に決まった者は恋愛は許されない。家族以外の異性と接するのも禁じられている。
「んー…そうだよな。今までトゥミは父さんか俺しか、男の子と接してないもんな」
「うん」
それに同年代の友達もいない…皆10歳以上年上か、5歳程下の子供達ばかり。
羊の世話もその女の子達としている。
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