限りある時の中で

□アルベルト&アルバート「父の遺言」
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アルベルト&アルバート

「父の遺言」 




ある日、母から手紙が届いた。

「手紙?母さんからだ」

手紙だなんて…一体どうしたんだろう?初めてもらったそれに何故か胸騒ぎがし、アルバートを呼ぶ。

「何だよ、兄貴……手紙?」

僕の手に握られているそれをヒョイッと取ると

「おっ、母ちゃんからじゃん。珍しい」

と言ってアルバートは封筒を裏返したり表にしたりしてみている。

「でしょ?開けてみて…」

何故か自分で開けるのが怖かった。弟がベリッと封を切り、中の手紙を広げて見る。

「……これは…」

「なんて書いてある?」

「…父さんの…遺言じゃねぇか」

「え…?」

思わずパッと弟の手からその手紙を取り、まじまじと見る。


「……」

父の書いた文字は見慣れていた。理論書、製造書、文献…本当に見慣れていたから、その手紙の文字が父の書いたものだとすぐに分かった。
だからアルバートと二人で何分も一緒に読み、じっくりと結論を出した…。

「…セフィロトの樹を…壊さなきゃ」

世界一の頭脳を持っていた父の願いであり、父が作った世界で最悪の発明品と言われるそれを破壊することが絶対的に正しいのだろう。

「でもよ、どんな物かも分からねーじゃん」

「そうだよね。此処にある父の残した物はみんな読んだはずだし。
母さんやゼノンさんなら何か知ってるかも?
ねぇ、アルバート。僕2人の所に行って聞いてくるよ。少しの間、留守番を頼めるかな?」

「おう、まかせとけ」

こうして僕は発明棟を弟に任せ、父が作った世界で最悪の発明品の正体を探るべく王都に向かった。


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